べつに仕事をサボる理由を探すために、坂口安吾の「堕落論」を読み始めたわけではなかった。
この本には堕落論をはじめ、日本文化私観など12編が収められている。いずれも昭和17年から21年頃まで、太平洋戦争のさなか、もしくはその直後に書かれたものだが、あの時代にこういうことを言う人がいたというのは新しい発見だった。「堕落論」もさることながら、おもしろいと感じたのは「続堕落論」の方。これほど激烈な文章を読んだのは久しぶりのこと。内容よりも文章に惹かれてしまった。
PHOTO : 難波 BY EOS KISS-DN