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加地尚武の佐倉新町電気街

「福音の少年 Good News Boy」シリーズ(徳間書店 徳間デュアル文庫)著者による電脳生活と意見。

【本】ナチ娯楽映画の世界 瀬川裕司 著

2005年02月19日 11時35分32秒 | 本のこと。
 いや、Blogに投稿してる場合ではないのだが、先日購入したこの本について書いておきたい。
 それはナチ娯楽映画の世界という本である。著者は瀬川祐司氏。ドイツ文学専門の明治大学教授。

 珍しい戦前のドイツ映画の本である。それもナチス政権時代につくられたおびただしい娯楽映画についての本である。三冊目の長編小説のために資料を調べているときまったく偶然にみつけて、あわてて購入した。
 以前からナチ娯楽映画に興味があったのだ。それは、アルゼンチンの作家、マヌエル・ブイグの傑作蜘蛛女のキスをだいぶ前に読み、ひどく感動したからだ。まるで千夜一夜物語のように語られる絢爛たる娯楽映画のあらすじ。語っているのは同性愛の男。聞いているのはテロリストの男。場所は刑務所の中。猟奇的なシチュエーションに見えるが、とびきり上質な純愛の小説だった。わたしはラストに思わず涙した。
 その娯楽映画というのが、くだんのナチス政権時代に盛んにつくられた映画群なのだ。親ナチス政権時代があったアルゼンチンらしい趣向である。
 この本は、そんなナチ娯楽映画をじっさいに750本以上観たという著者の労作である。
 すこしでも興味のあるかたはぜひこの本を手にとっていただきたい。一般にナチス政権時代には、プロパガンダ映画ばかり作られていたと思われているが、その「常識」は覆されるだろう。
 筆者の「娯楽は政治的なのだ」という主張には共感をおぼえる。

 すぐれた映画の本を読むと、映画が観たくなる。

福音の少年 GoodNewsBoy 錬金術師の息子

2005年02月18日 11時58分24秒 | 本のこと。
 この、福音の少年 Good News Boyは、わたしのデビュー作である。あるアニメの二次創作として、1996年の夏に完結し、ネットで無償で公開していたのを2003年にぺんぎん書房というところから出版しないかという話がきて、出版に至った。
 元になった作品はまだ自分の別のサイトで公開しているので、興味のあるかたは左のブックマークから「House Of Stories」というリンクをたどってみてほしい。

 内容をひとことで言えば、「魔法と科学が共存したもうひとつの世界で、ひょんなことから魔法使いになった少年がさまざまな事件をとおして成長してゆく物語」である。

「和製ハリーポッター」と呼ばれることが多いが、この小説を書き始めたのが95年。つまり、ぜんぜん関係はない。だからといって「俺のほうが早い」と主張するつもりはないし、あっちのほうを「英国製福音の少年」と呼べと言いたいわけではない。
 初版の部数だけで二百数十倍(日本国内)あるんだもの、しょうがないではないか。

「見習い魔法使い」という題材自体、ありふれたものである。「魔法と科学が共存した世界」というのも、人によっては食傷気味かもしれない。
 おまけにこの小説は、少年の成長物語としてある意味王道的な筋立てと言ってもいい。

 それでもこの本にはこの本ならではの独特の雰囲気があると思う。そう思いたい。作者自身が言うのもなんだが。
 二段組み、500ページ越えの長大な小説だが、気が向いたら手に取ってみてほしい。