涼しい影

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「涼しい影」

河合奈保子さんの８枚目のアルバム「Summer Delicacy」の１０曲目（B面５曲目）に収録されている曲です。

作詞：来生えつこ
作曲：来生たかお
編曲：大村雅朗


（写真は「BOMB」1983.11号からの抜粋です。写真と楽曲は関係ありません。）

この曲は、以前紹介しましたように、来生たかおさんのアルバム「Ordinary」でリリースした後に奈保子さんのSummer Delicacyにカバー曲として収録されました。
残念ながら、私は来生さんのオリジナルをまだ聴いていません。（YouTubeではライブでの弾き語り映像を見ることができるようです）

詞、メロディ、そしてアレンジすべてが素晴らしく、来生たかおさん以外の人が歌うならば奈保子さん以外にあり得ない、奈保子さんのために作られた曲ではないかと思うくらいに、私は感じてしまいます。

スローテンポで流れるメロディ、１コーラスとサビのリフレインですが、曲全体の時間は約５分もあり、１コーラスのメロディ構成が長めになっています。
歌い出し、奈保子さんのボーカルと演奏はオルゴールの音色のようなに響く電子ピアノだけ。この電子ピアノが奏でるメロディーは、奈保子さんが歌う主旋律とは異なるメロディラインになっていて、まるでポリフォニーを思わせるようにハーモニーを奏でています。
イントロ、コーダで入るオーボエの優しくもはかなない音色も胸をふるわせるように響いてきます。

お互いに深く想い合っていたのに、離ればなれになっていたが、思いがけず夢の様に再会した。これまでずっと、感じていた愛しさ、切なさが一気に心の中からわき上がり、時間の流れがまるで緩やかになったよう。改めて大切な人であることに気づき、以前と同じようにふたり寄り添って過ごした時間が再び流れ出す。

この曲を奈保子さんは素晴らしく歌い上げ、そして、奈保子さんにしか表現できないと思えるくらい奈保子さん自身のイメージにあった曲だと思います。
澄んだメロディに乗せて、純粋さ、切なさを最も美しく表現している曲だと思います。
詞の内容が悲しい訳でもないのに、この曲に込められた純粋さ、切なさは心の中に響きわたり、聴くたびにいつも自然と涙が溢れてきてしまいます。

奈保子さんの数々の素晴らしい曲の中からただ１曲だけ選びなさいというならば、私はおそらくこの曲を選んでしまうと思います。
この曲は、私にとって心のなかで思う河合奈保子さんのイメージそのものの曲です。