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黛信彦の時事ブログ

北京五輪はジェノサイド五輪 (3)

2008年03月11日 | 中国
●中国、五輪開催の国際的障害を克服したが・・・・
前2編でお伝えしたように、北京五輪開催を控えて、中国は2つの国際的障害を短期間で取り除いた。

第一に、『21世紀の藺相如』とも尊称すべき、劉貴今氏という外交官の絶妙さで、英国を通じて、ダルフール問題に一定レベルの国際的評価を得て、対外的な人権問題を理由とした北京五輪ボイコットの機運を鎮火させた。

第二に、アジア東端の国の総理大臣を通じて、世界的に、中国の「食」は危険ではないとの認識を持たせることに成功した。

すなわち、銃器と食料という2つの手段によるジェノサイドに見事に蓋をし、人権重視と食品安全を国際にPRすることに成功させた。

しかし、中国共産党にとって、国内的障害排除は、これからが正念場を迎える。そして、そこには思想家弾圧・一般市民締付・民族的弾圧の3つがある。

●「国家政権転覆扇動」で思想家逮捕
中国当局は、ここ一年活動家への締めつけを強めていて、「人権」や「民主」を求めただけで「国家政権転覆扇動」の罪に問われ、逮捕されるケースが増えている。目立つのは、『北京五輪開催で、中国に国際社会の注目が集まっているチャンスを、人権状況の改善につなげようとする取り組みへ』の弾圧である。
又、06年、中国国務院は「国家突発公共事件〈突発性公共事件〉総合緊急マニュアル」を公布した。これは、突発性の公共事件を、自然災害、事故災難、公共衛生事件、社会安全事件の4種に分類。また、各事件の性質、程度、制御可能性、影響の範囲などから、Ⅰ級(非常に重大)、Ⅱ級(重大)、Ⅲ級(比較的重大)、Ⅳ級(一般)の4段階に分けている。
そして、07年3月には、温家宝首相は自ら、政府活動報告で、「例えばオリンピック反対のビラ撒き程度でも「突発性公共事件」の社会安全事件として厳しく鎮圧する」と宣言している。 

<<ここ一年で逮捕、有罪判決を受けた著名な活動家>>
呂耿松氏(08年2月、懲役4年の判決。浙江省在住のインターネット作家)
胡佳氏(07念12月に拘束、1月に逮捕通知。北京市で妻子も軟禁)
陳樹慶氏(07年8月、懲役4年の判決。非公認・中国民主党準備委員会一員)
楊春林氏(07年8月逮捕。「五輪より人権を」と訴え、署名活動を行う)
厳正学氏(07年4月、懲役3年の判決。「労働改造制度」反対の活動家)
張建紅氏(07年3月、懲役6年の判決。Webサイトで、中国政府を中傷)

国際人権団体は、北京五輪の誘致にあたって、中国政府が掲げた「人権状況を改善する」との国際的な約束を守るよう求めるが、状況はむしろ悪化しているとの見方が強い。
米国NYに本部を置く人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチは、中国の公安当局が国家政権転覆扇動容疑・罪の拡大解釈と乱用が「活動家を黙らせる武器になっている」と批判した。
又、国際人権団体アムネスティ・インターナショナルやパリに本部を置く「国境なき記者団」なども、中国の人権状況の悪化に懸念を示している。

●一般市民への締めつけ
主要先進国の中国を見る眼鏡は、中国が巨大な市場と認識したときから曇ってきた。
中国に対して、人権問題で厳しい注文をつける場面が少なくなっている。しかし、一般市民への締付は目を覆うばかりだ。

07年12月、北京当局と北京五輪組織委員会は、COHREから、『07年の「居住権侵害賞」という不名誉な賞』を受けた。
理由は、北京オリンピックのために毎月15万人が立ち退きを強いられ、8月の開催までに150万人に達するが、これらはしばしば補償を伴わないことが理由であったという。

日本の日々の新聞紙上で、中国の一般市民への弾圧の記事は、日常茶飯事、枚挙に暇が無い。

●少数民族の弾圧
ウイグル問題を論ずる前に、日本との関係で記憶に新しく、恥ずかしい事を記さなければならない。

昨秋、小沢民主党と在京中国大使館との間で、『人権問題に目を瞑る』との取り引きがあった。

中国側の、『(民主党)訪中と中国要人との会談の条件』として、『07年8月には決まっていた、民主党議員とウイグル活動家との07年11月28日に予定していた、「ウイグル勉強会」を取りやめよ』との要求に、民主党が土壇場でキャンセルして応えたことである。
これによって、小沢代表ら民主党大議員団は、約束どおり『胡錦濤主席に、一人ひとり握手を押し頂いて』、大変ご満悦であった。

さて、3月10日付朝日新聞は、『全人代の、ウイグル自治区代表団の会合後、同自治区ナンバーワンである王楽泉共産党委書記と、ヌル・ベクリ副書記らが、記者団の質問に答えて、今年1月に、中国・新疆ウイグル自治区のウルムチで、北京五輪を狙ったテロを計画していたとして、地元警察当局が、独立派組織「東トルキスタン・イスラム運動」のメンバーとみられる2人を射殺、15人を逮捕していたことを、9日明らかにした。党幹部が具体的なテロ事件を公表するのは珍しく、五輪に向けて組織的な摘発を強めていくとみられる』と報じた。

ところで、1月のテロ事件を3月に公表する不自然さ。この理由は冒頭記述した、北京五輪の国際的障害を排除した後に公表することに意味があったのだ。
1月時点でこの事件を発表すれば、国際は単に『中国の少数民族弾圧問題』と捉えたのだが、ダルフール問題大使・劉貴今氏のイギリスとスーダン訪問成功の後の発表となったので、国際は半信半疑ながらも、少数民族問題ではないと解釈してしまうのである。

ある出来事は、後先を逆にするだけで、効果が逆に作用するのである。
又、政治家であれば、そうは言えまいが、この事件が本当にあったとすれば、北京五輪を狙ったテロ活動の可能性よりも、『北京五輪の安全開催を隠れ蓑とした、警察行動』であった可能性が高い、と見るのは、弊ブログだけだろうか。

●遠交近攻
このように、中国が北京五輪を迎えるにあたって、まず外堀(国際)を固めてから内堀(国内)を埋めてゆく方法は何故か、古代、秦の襄王に仕えた范雎が説いた、遠交近攻策に通じるものがある。

恐るべし、中国6千年の歴史
中国共産党は、マルクス・レーニンの思想に6千年の知恵を混合して、巧みに国際を欺き、少数民族と一般市民を弾圧している。

ヒューマン・ライツ・ウオッチのリチャードソン・アジア部長は声明で「国際社会が北京五輪に絡んだ弾圧に沈黙すれば、その弾圧に青信号を出したのと等しい」と警鐘を鳴らしている。

《北京五輪はジェノサイド五輪》⇒ (1) (2) (3) (4)

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