中東を歴訪したオバマ米大統領は4日、エジプトのカイロ大学で演説し、米国と中東諸国との「新たな始まり」を訴えた。
このオバマ演説について5大紙社説は5~7日付で、「これから、自らの言葉を裏付ける行動が求められる(朝日)」など、「言葉を形に変えるよう」論評した。
就任からすでに半年が経過したオバマ大統領。国際は、あまりにも問題山積みであり、残りの任期は決して長いとは言えない。
オバマは、アメリカを、中東を、北朝鮮問題を、そして国際金融大激震をいつチェンジするのだろうか?
以下、社説から抽出
■朝日新聞(6日付社説)オバマ演説―イスラムの不信をとかせ
イスラム側には、植民地支配からグローバル経済の格差まで、常に欧米列強に支配され、虐げられてきたという思いがわだかまっている。
そうした積年の恨みが、国際テロ組織アルカイダですら一定の共感を集める土壌となっているのだ。アルカイダのオサマ・ビンラディン容疑者は、演説前に音声声明で「オバマは米国への憎しみの新たな種をまいている」と非難したという。
大統領は、まず1月の就任演説で「握ったこぶしを開くなら、手を差し伸べる」と呼びかけた。4月にもトルコで「米国はイスラム世界と戦争することはない」と宣言した。
だが、幾重にも絡まり合った相互不信は、すぐに解けるものではない。イスラム世界にさらに歩み寄り、人びとの心を引き寄せなくては、中東和平もアフガンやイラクの安定も、その道は開けないだろう。
オバマ氏にはこれから、自らの言葉を裏付ける行動が求められる。
■産経新聞【7日付主張】オバマ中東演説 穏健派の取り込みを急げ
テロとの戦いや中東に関する基本路線では、ブッシュ前政権とオバマ政権に大きな違いはない。中東和平でも、パレスチナ国家家とイスラエルの「2国家共存」方式の実現をめざしている。
重要な違いは「ソフトパワー」を活用し、イラク戦争などを機にイスラム世界に広がった反感情や対米不信を取り除き、テロや過激派を地域社会から孤立化させる手法にあるといっていい。
ただ、演説や対話だけで中東の複雑な利害対立を解きほぐせるほど現実は甘くない。
演説の精神を踏まえつつ、実際の行動と政策で裏打ちをすることができなければ、米外交への信頼は回復できないことも肝に銘じておくことが必要だろう。
技術や教育などの得意分野を活用して、日本もオバマ政権の取り組みを側面支援していきたい。
■日本経済新聞(6日付社説):中東の「変化」には演説に続く行動が要る
米国にもイスラム教徒側にも相手へのステレオタイプな偏見がある。ユダヤ人迫害の歴史は否定できないし、パレスチナ人が苦痛を受けてきた事実も否定できない――。演説は対立や不信について双方の問題点や立場を並列して指摘した。そのうえで、対立点に固執して憎悪をあおる勢力を利するのではなく、共存の道を探ろうと呼びかけた。
とはいえ、大統領が自ら認めているように、一回の演説だけで根深い不信を解消できるわけではない。中東の反応で多かったのは、「言葉だけでなく、実際の米国の行動の変化を望む」だった。
理想を掲げた演説はオバマ大統領による新しい外交イニシアチブの一歩。中東を取り巻く政治状況を変えていくには、演説に続く行動、精力的な外交努力の継続が不可欠だ。
■毎日新聞(5日付社説)米国とイスラム 喜ばしい「新たな始まり」
ブッシュ政権の施策にはイスラム急進派ばかりか穏健イスラム教徒も反発し、米国とイスラム世界の関係はかつてないほど冷え込んだ。
こうした経緯を思えば、オバマ大統領が米国とイスラム世界の「新たな始まり」をうたう演説をしたのは画期的である。
不透明な核開発を続けるイランに対してオバマ大統領は、無条件の対話に応じる用意を表明した。また他国に特定の政治形態を押しつけるべきでないと述べたのは、ブッシュ政権の「中東民主化」構想や「レジームチェンジ(体制転換)」論と決別して融和に踏み出したことを示していよう。
だが、米国への信頼を回復できなければ、どんな中東政策も絵にかいたモチに終わるだろう。「核なき世界」に言及したプラハでの演説同様、大統領の実行力が問われている。
■読売新聞(6日付社説)オバマ演説 次は言葉を行動に移す番だ
聴衆が総立ちで拍手した演説終了時点では、オバマ大統領の訴えは、イスラム世界の人々に届いたと言えるだろう。ただ、イスラム世界にわだかまってきた不信感が一度の演説で払拭されたと見るのは、現実的ではあるまい。
言葉をどこまで行動に移すことができるか。肝要なのは、これからだ。目に見える形で結果が表れてこないと、イスラム世界の期待は、失望に変わるはずだ。その反動は軽視できまい。
例えばオバマ大統領は、イスラエルのネタニヤフ政権を説得し、入植地建設を凍結させることができるかどうか。内外の厳しい視線が注がれることになる。
核疑惑のイランに対してオバマ大統領は、核武装は容認しないとしつつも関係改善に前向きの姿勢を示した。果たして、両国がテーブルに着くことはあるのか。
中東で大きな影響力を有する米国の姿勢転換である。中東が新局面を迎えたのは間違いない。
このオバマ演説について5大紙社説は5~7日付で、「これから、自らの言葉を裏付ける行動が求められる(朝日)」など、「言葉を形に変えるよう」論評した。
就任からすでに半年が経過したオバマ大統領。国際は、あまりにも問題山積みであり、残りの任期は決して長いとは言えない。
オバマは、アメリカを、中東を、北朝鮮問題を、そして国際金融大激震をいつチェンジするのだろうか?
以下、社説から抽出
■朝日新聞(6日付社説)オバマ演説―イスラムの不信をとかせ
イスラム側には、植民地支配からグローバル経済の格差まで、常に欧米列強に支配され、虐げられてきたという思いがわだかまっている。
そうした積年の恨みが、国際テロ組織アルカイダですら一定の共感を集める土壌となっているのだ。アルカイダのオサマ・ビンラディン容疑者は、演説前に音声声明で「オバマは米国への憎しみの新たな種をまいている」と非難したという。
大統領は、まず1月の就任演説で「握ったこぶしを開くなら、手を差し伸べる」と呼びかけた。4月にもトルコで「米国はイスラム世界と戦争することはない」と宣言した。
だが、幾重にも絡まり合った相互不信は、すぐに解けるものではない。イスラム世界にさらに歩み寄り、人びとの心を引き寄せなくては、中東和平もアフガンやイラクの安定も、その道は開けないだろう。
オバマ氏にはこれから、自らの言葉を裏付ける行動が求められる。
■産経新聞【7日付主張】オバマ中東演説 穏健派の取り込みを急げ
テロとの戦いや中東に関する基本路線では、ブッシュ前政権とオバマ政権に大きな違いはない。中東和平でも、パレスチナ国家家とイスラエルの「2国家共存」方式の実現をめざしている。
重要な違いは「ソフトパワー」を活用し、イラク戦争などを機にイスラム世界に広がった反感情や対米不信を取り除き、テロや過激派を地域社会から孤立化させる手法にあるといっていい。
ただ、演説や対話だけで中東の複雑な利害対立を解きほぐせるほど現実は甘くない。
演説の精神を踏まえつつ、実際の行動と政策で裏打ちをすることができなければ、米外交への信頼は回復できないことも肝に銘じておくことが必要だろう。
技術や教育などの得意分野を活用して、日本もオバマ政権の取り組みを側面支援していきたい。
■日本経済新聞(6日付社説):中東の「変化」には演説に続く行動が要る
米国にもイスラム教徒側にも相手へのステレオタイプな偏見がある。ユダヤ人迫害の歴史は否定できないし、パレスチナ人が苦痛を受けてきた事実も否定できない――。演説は対立や不信について双方の問題点や立場を並列して指摘した。そのうえで、対立点に固執して憎悪をあおる勢力を利するのではなく、共存の道を探ろうと呼びかけた。
とはいえ、大統領が自ら認めているように、一回の演説だけで根深い不信を解消できるわけではない。中東の反応で多かったのは、「言葉だけでなく、実際の米国の行動の変化を望む」だった。
理想を掲げた演説はオバマ大統領による新しい外交イニシアチブの一歩。中東を取り巻く政治状況を変えていくには、演説に続く行動、精力的な外交努力の継続が不可欠だ。
■毎日新聞(5日付社説)米国とイスラム 喜ばしい「新たな始まり」
ブッシュ政権の施策にはイスラム急進派ばかりか穏健イスラム教徒も反発し、米国とイスラム世界の関係はかつてないほど冷え込んだ。
こうした経緯を思えば、オバマ大統領が米国とイスラム世界の「新たな始まり」をうたう演説をしたのは画期的である。
不透明な核開発を続けるイランに対してオバマ大統領は、無条件の対話に応じる用意を表明した。また他国に特定の政治形態を押しつけるべきでないと述べたのは、ブッシュ政権の「中東民主化」構想や「レジームチェンジ(体制転換)」論と決別して融和に踏み出したことを示していよう。
だが、米国への信頼を回復できなければ、どんな中東政策も絵にかいたモチに終わるだろう。「核なき世界」に言及したプラハでの演説同様、大統領の実行力が問われている。
■読売新聞(6日付社説)オバマ演説 次は言葉を行動に移す番だ
聴衆が総立ちで拍手した演説終了時点では、オバマ大統領の訴えは、イスラム世界の人々に届いたと言えるだろう。ただ、イスラム世界にわだかまってきた不信感が一度の演説で払拭されたと見るのは、現実的ではあるまい。
言葉をどこまで行動に移すことができるか。肝要なのは、これからだ。目に見える形で結果が表れてこないと、イスラム世界の期待は、失望に変わるはずだ。その反動は軽視できまい。
例えばオバマ大統領は、イスラエルのネタニヤフ政権を説得し、入植地建設を凍結させることができるかどうか。内外の厳しい視線が注がれることになる。
核疑惑のイランに対してオバマ大統領は、核武装は容認しないとしつつも関係改善に前向きの姿勢を示した。果たして、両国がテーブルに着くことはあるのか。
中東で大きな影響力を有する米国の姿勢転換である。中東が新局面を迎えたのは間違いない。
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