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黛信彦の時事ブログ

5大紙社説 : 川内原発再稼動へ

2015年08月12日 | 5大紙社説

九州電力・川内原子力発電所1号機が11日、再稼働に着手。 5大紙は揃って12日付社説で賛否の論評を掲げた。

猛暑が続いているが、古い火力発電などをフル稼働させているために重大な電力不足はない。 しかし、熱中症が原因とされる死者が特に高齢者に多く、80代~90代の3姉妹が設置しているエアコンを使わないでお亡くなりになったことは大変痛ましい。

高齢者がエアコンを使わない理由の一つに「電気代が怖い」というのがあるが、それもその筈だ。 「電力各社は原発が停止した分を天然ガスなど化石燃料の輸入で補い、2014年度の燃料代は震災前より3兆4千億円増えた。(日経)」「電気料金は震災前より家庭向けが25%、企業向けは38%も値上がりし、廃業を迫られる中小企業も少なくない。(読売)」 

おぞましい福島原発事故とその後の廃炉処理や使用済み核燃料の処置問題などに対する不安は、「原発再稼動反対!」を唱える多くの国民の当然の動機である。

しかし、小欄はそれを乗り越え、電力の安価かつ安定供給をすることが国民生活や国際競争力のうえでも必須条件と考える。

余談だが、遠くで眺めれば風力発電機はのどかで夢があり、太陽光パネルも科学の未来を感じさせる。 しかし近寄れば、風力発電は不気味な音を発し、郊外では太陽光パネルの畑がいたる所に開設され、無味乾燥だ。

以下、12日付五大紙社説の抄録である。

■朝日新聞:原発再稼働川内をひな型にするな

今回の再稼働の決定過程には問題が多い。 火山の大規模噴火について規制委の審査には疑問が投げかけられたままだ。 避難計画も不備が指摘され、鹿児島県民の半数以上が再稼働に反対とする世論調査もある。誰の判断と責任で再稼働が決まったのか、あいまいだ。

こうした疑問や問題、さらには民意を置き去りにした見切り発車の再稼働は認められない。川内の決め方をひな型として今後も再稼働を決めていくこと、なし崩しで原発依存に戻すことには反対である。

政府がいま取り組むべきは、再稼働を重ねて原発を主軸に戻していくことではない。 一時的に原発に頼るとしても、老朽原発や安全面に疑問符がつく原発から優先的に廃炉にすると同時に、再エネを育てていくことである。

■産経新聞:川内原発復活 稼働増やし国力再生を 首相は規制委の改革を急げ

川内原発再稼働への反対意見は根強く、巨大噴火の可能性を問題にするものもある。 だが、現実味のない「ゼロリスク」前提の反対論では議論が成立しない。 情報不足で不安を抱く人々に対しては、国が前面に出て理解を促すよう注力することが望まれる。

高い目標値を掲げた二酸化炭素削減の国際約束を守る上でも、安全性を高めた原発の活用が欠かせないことは自明であろう。

資源のない日本にとってエネルギー安全保障の生命線である核燃料サイクルを円滑に回すためにも原発再稼働の加速が必要だ。

■日本経済新聞:安全最優先し原発再稼働を着実に  

東日本大震災から続く電力の供給不安を拭うには、原発の着実な再稼働は欠かせない。 一方で再稼働を懸念する国民はなお多く、この先、原発にどの程度依存していくかも曖昧なままだ。 政府が原発の位置づけを明確にし、原子力規制委員会も規制の意味を国民に丁寧に説明すべきだ。

今夏は記録的な猛暑になったが、いまのところ大停電は起きておらず、電気は足りているように見える。だが先の大震災による電力危機から脱したわけではない。

電力各社は原発が停止した分を天然ガスなど化石燃料の輸入で補い、2014年度の燃料代は震災前より3兆4千億円増えた。電気料金は家庭向けで2割、産業向けで3割上がり、景気回復の足かせになっている。

温暖化ガスの排出量も震災前より1割近く増えた。日本のエネルギー自給率は主要国では最低水準の6%まで下がり、10%程度あった石油危機前より低い。

こうした危うさを減らすには、安全性を確認できた原発を着実に再稼働させる必要がある。 

■毎日新聞:川内再稼働 原発依存社会に戻すな

できるだけ早く原発をやめようと私たちは主張してきた。 一方で、原発即ゼロがもたらす経済的、社会的リスクを考えれば、一定の条件を満たした上で最小限の稼働を認めざるをえない場合もあるだろう。そんな考えも示してきた。 しかし、この再稼働は条件を満たさず、認めることはできない。

まず、原発を減らしていく過程での再稼働との位置付けが欠けている。政府が昨年閣議決定したエネルギー基本計画には、「原発依存度を可能な限り低減させる」との方針が盛り込まれた。これに従えば、確実に原発を減らしていくための工程表を描くことが政府の責務だ。

■読売新聞:川内原発再稼働 電力安定供給へ重要な一歩だ

電力の安定供給は、国民生活と経済発展に欠かせない。安価で安定した重要電源である原発の活用が前進した意義は大きい。

民主党の枝野幹事長が、川内原発について「今、無理に急いで再稼働する必要性があるとは思えない」と述べたのは、認識が甘過ぎる。 民主党政権時代、野田首相は産業空洞化や雇用喪失から国民生活を守るため、関西電力大飯原発の再稼働を決断した。こうした大局的な視点が継承されていないのは、極めて残念だ。

今後の焦点は、他の原発の再稼働が円滑に進むかどうかである。 川内原発2号機が今秋、四国電力伊方原発3号機は今冬にも再稼働する見通しだが、残りは実現のメドが立っていない。


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