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黛信彦の時事ブログ

5大紙社説:70年談話、国際啓蒙を

2015年08月15日 | 5大紙社説

安倍晋三首相が14日の記者会見で、閣議決定された戦後70年談話(安倍談話)を発表した。

中韓など近隣諸国だけでなく、西欧諸国に対しても思いを至らせた申し分ない内容で、台湾という言葉も聞かれた。

ところで、昨年5月11日にNHKが放映した、「マイケル・サンデルの白熱教室・日中韓の未来の話をしよう」に参加した日中韓の名門大学生で、村山談話を知らない中国人学生が多いことに驚いた。 今後は、最新談話の啓蒙に努力しなければいけない。

以下は、安倍談話に対する15日付5大紙社説の各社方針たる論評の抄録である。

■朝日新聞:戦後70年の安倍談話何のために出したのか

侵略や植民地支配。反省とおわび。安倍談話には確かに、国際的にも注目されたいくつかのキーワードは盛り込まれた。 しかし、日本が侵略し、植民地支配をしたという主語はぼかされた。反省やおわびは歴代内閣が表明したとして間接的に触れられた。

この談話は出す必要がなかった。いや、出すべきではなかった。改めて強くそう思う。

慰安婦問題は解決に向けた政治的合意が得られず、国交がない北朝鮮による拉致問題も進展しない。 ロシアとの北方領土問題も暗礁に乗り上げている。

出す必要のない談話に労力を費やしたあげく、戦争の惨禍を体験した日本国民や近隣諸国民が高齢化するなかで解決が急がれる問題は足踏みが続く。

いったい何のための、誰のための政治なのか。 本末転倒も極まれりである。 その責めは、首相自身が負わねばならない。

■産経新聞:戦後70年談話 世界貢献こそ日本の道だ 謝罪外交の連鎖を断ち切れ

戦後生まれの国民は人口の8割を超える。過去の歴史を忘れてはならないとしても、謝罪を強いられ続けるべきではないとの考えを示したのは妥当である。 重要なのは、この談話を機会に謝罪外交を断ち切ることだ。

「国際政治と謝罪のリスク」の論文もある米ダートマスカレッジのジェニファー・リンド准教授は「謝罪は和解の前提ではない」との指摘を重ねてきた。

歴史で政府が謝罪すれば国内に反発が生じ、改めて相手国の不信を高める。結果として、より大きなマイナスをもたらす。まさに日本の謝罪外交の構図である。

中国、韓国は今後、歴史問題をカードにすることをやめるべきだ。 談話の表現を材料として、日本をおとしめ、いっそうの謝罪など不当な要求は許されないし、応じられない。

中韓は70年の節目に日本の戦争責任などを追及する歴史戦を展開してきた。 曲解に基づく攻撃もためらわない。 政府は、反論と史実の発信を止めてはならない。

■日本経済新聞:70年談話を踏まえ何をするかだ

「戦争の苦痛をなめ尽くした中国人」など、中国の国民にじかに語りかけたかのような記述もあった。

韓国を念頭に置いた部分は少ないが、「植民地支配から永遠に決別」すると誓い、戦地での女性の被害にも言及した。

村山談話の「遠くない過去の一時期、国策を誤り……」という表現と比べて、何を反省すべきかをはっきりさせたのはよいことだ。 憲法9条を引用したような言い回しは憲法改正論議にも影響を与えよう。

安倍首相の談話に対し、中国内からは批判的な見方も出ている。 とはいえ、キーワードがすべて盛り込まれたことで、中国政府は「主張が一定の範囲で取り入れられた」と自国民に説明できるのではないか。

■毎日新聞:戦後70年談話 歴史の修正から決別を

安倍首相は「深い悔悟の念」や「断腸の念」を談話に盛り込んだ。だが、その歴史認識や和解への意欲は、必ずしも十分だとは言えない。

全体に村山談話の骨格をオブラートに包んだような表現になっているのは、首相が自らの支持基盤である右派勢力に配慮しつつ、米国や中国などの批判を招かないよう修辞に工夫を凝らしたためであろう。

しかし、その結果として、安倍談話は、誰に向けて、何を目指して出されたのか、その性格が不明確になった。歴代内閣の取り組みを引用しての「半身の言葉」では、メッセージ力も乏しい。

ただし、消極的ながらも安倍首相は村山談話の核心的なキーワードを自らの談話にちりばめた。 「何の罪もない人々に、計り知れない損害と苦痛を与えた」と加害性も認めた。 その事実を戦後70年の日本はプラスに転化させる必要がある。

すなわち、すでに定着した歴史の解釈に異を唱え、ストーリーを組み替えようとする歴史修正主義からきっぱりと決別することだ。

■読売新聞:戦後70年談話 歴史の教訓胸に未来を拓こう

首相が「侵略」を明確に認めたのは重要である。戦後50年の村山談話、戦後60年の小泉談話の見解を引き継いだものだ。

1931年の満州事変以後の旧日本軍の行動は侵略そのものである。 自衛以外の戦争を禁じた28年の不戦条約にも違反する。

首相は記者会見で、談話について「できるだけ多くの国民と共有できることを心掛けた」と語った。 歴史認識を巡る様々な考えは、今回の談話で国内的にはかなり整理、集約できたと言えよう。

談話は、日本が今後進む方向性に関して、「国際秩序への挑戦者となってしまった過去」を胸に刻みつつ、自由、民主主義、人権といった価値を揺るぎないものとして堅持する、と誓った。

「積極的平和主義」を掲げ、世界の平和と繁栄に貢献することが欠かせない。 こうした日本の姿勢は、欧米や東南アジアの諸国から幅広く支持されている。

「歴史の声」に耳を傾けつつ、日本の将来を切り拓ひらきたい。


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