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黛信彦の時事ブログ

5大紙社説にみる盧武鉉氏自殺、千の風より小さな石碑

2009年05月24日 | 5大紙社説
盧武鉉氏は死亡したが、大統領時代に氷結させた日韓関係は李明博大統領によって解凍されつつあり、盧武鉉氏が、来世で思い悩むことはあまり多くないはずだ。
小欄からも心安らかなご冥福をお祈り申し上げる。
また韓国野党が、盧武鉉氏の自殺を政局にしようとしていることについて、世論の冷静な判断を併せて祈る。

盧武鉉氏は、次のような遺書をパソコンに残し自宅の裏山から投身した。
千の風ではなく、「たとえ小さくても構わないから、石碑を建ててくれ!」とあったという。

~・~・~ あまりにも多くの人たちにお世話になった。
わたしのために多くの人が受けた苦痛はとても大きい。
これから受ける苦痛も推し量ることができない。
余生も他人の荷物になるしかない。
健康が良くないので何もすることができない。
本を読むことも、文章を書くこともできない。
あまり悲しむな。生と死はすべて自然の一部ではないか。
すまないと思うな。だれも恨むな。運命だ。
火葬にしてくれ。
そして、家の近くに、ごく小さな石碑を一つだけ残してくれ。
長く考えた末のことだ。 ~・~・~

24日付5大紙は、韓国前大統領・盧武鉉氏の自殺を社説で悼んだ。
■朝日新聞(社説)隣国の政治の悲劇を思う
地縁や血縁、学閥が幅を利かす。日本もそうだが、政治とカネが切り離せない。そんな社会を変えてほしい。盧政権は、国民のその熱い期待にこたえるべく登場したはずだった。

かつて政権と検察の癒着が激しかったが、盧氏は検察の独立を保証し、陪審制導入を含む司法改革を支えた。過去の権力犯罪の解明にも切り込んだ。
そういう盧氏も旧弊は断ち切れなかったということか。「歴史の清算」を目指したのにできず、司法の裁きに耐えかねたのだろうか。

韓国では早速、捜査が強引だったとの批判が噴き出している。政界対立の火種にもなりかねない。だが、今回の悲劇をそうさせるべきではない。
曲折はあっても、韓国には独裁から民主への一貫した流れがある。そしてこの20年あまり、民主主義を深めて市民社会を成熟させ、経済の発展という輝かしい成果をあげてきた。
こうした実績を踏まえ、政治の安定に歩みを進めてほしい。それが、盧氏の死を無にしない道ではないか。

■産経新聞(第一面記事から抽出)「誰も恨むな。運命」と遺書
「過去の大統領とは違う!」という本人の意気込みとは逆に、盧武鉉氏は意外に平凡な指導者だった。ただ過去の指導者と違って自殺で責任をとったところが、盧氏が最後に見せた「盧武鉉らしさ」かもしれない。

盧武鉉時代に金銭疑惑の規模が小さくなったことはいいことだ。露骨な“財閥政治資金”もかなり改善されたといわれる。しかし、金額の大小にかかわらず盧武鉉氏は自殺に追い込まれた。
李明博大統領は「盧武鉉研究」に取り組むことで、歴代大統領がやれなかった本当の改善と新しい時代を築くことができるのではないか。

■日本経済新聞(社説)韓国の変化と前大統領の死
成長より分配、低所得者層への配慮、北朝鮮との融和政策……。2002年大統領選で盧武鉉氏を当選に導いた公約だが、当時の韓国社会の要請はもう1つあった。経済界との癒着のないクリーンな政治だ。

韓国では1980年代までの軍事政権下、世界を舞台に活躍する財閥も生まれたが、不透明な癒着の構図は海外から不信の目で見られ、後に金融機関が不良債権に苦しむ伏線になった。97年のアジア通貨危機で、国際通貨基金(IMF)に支援を仰がざるを得なくなった一因でもある。

盧武鉉氏の身辺でも浮上した不正資金疑惑は、強大な権限を持つ大統領、青瓦台(大統領府)をめぐる経済利権の暗部の根深さを示唆する。前大統領の死は、掲げた理想と現実のジレンマの深さも象徴している。

■毎日新聞(社説)盧武鉉前大統領 衝撃的な最期だった
この衝撃が韓国内の政治的混乱や対立激化を招かないよう祈りたい。

「信念を貫く」一方で激越さが目立ち、和合の精神に乏しい政治家だったが、死去を受けて、金大中元大統領が「民主政権10年を共にした人間として、私の体の半分が崩れたような心情」だと述べただけではない。インターネットの各種サイトには追悼の書き込みが殺到している。歴史的評価はともかく、一時代を作った人であった。

気になるのは、特に前大統領の側近や支持者の間でこの自殺を「政治的他殺」などと評し、李明博政権への攻撃を強める気配があることだ。現政権が検察を使って前政権への狙い撃ち捜査をしているという見方が前提になっている。
韓国の政争は激しい。李大統領は大差で当選したが左右対立の構図は解消されていない。世界同時不況の中、盧前大統領の悲劇をさらなる混乱の引き金にしてはならないということを、共通認識にしてほしい。

■読売新聞(社説)疑惑の中での尋常ならざる死
検察当局は前大統領の死を受けて捜査の打ち切りを決め、盧武鉉氏にかけられた疑惑の全容は解明されずに終わることになった。
だが、どうにも説明のつかない不明朗な巨額のカネを家族が受け取った事実は残る。

盧武鉉氏の悲劇は、韓国の“政治文化”の所産とも言える。
大統領に強大な権力が集中するシステムのもと、私利私欲を求める勢力が地縁血縁を利用して大統領周辺に近づき、家族、側近たちもカネまみれになる醜態が、歴代政権で繰り返されてきた。
清廉潔白を標榜した左派政権も例外ではなかった。
こうした文化をどこまで是正できるかが、保守派の李明博政権には問われている。

盧武鉉前政権の時代、日韓関係は、歴史認識や竹島問題で冷え込み、首脳同士のシャトル外交もストップした。
政権交代で登場した李政権は、北朝鮮の核開発に厳しい態度で臨み、日米韓連携が再構築されてきている。
盧武鉉氏の死は、時代の変化を象徴するようにも映る。

盧前韓国大統領が自殺 権力と血縁、断ち切れず 悲劇・不祥事続く歴代大統領(産経新聞) - goo ニュース

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