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黛信彦の時事ブログ

浜矩子語録(176) 逆を向いて歩こう!

2012年12月10日 | 浜矩子語録

9日、同志社大学大学院教授・浜矩子(浜)が、久しぶりにTBS・時事放談に呼ばれた。 共演ゲスト:元総務大臣・増田寛也(増)、司会:御厨貴(御)、アシスタントアナ:岡村仁美(岡)で、以下は、その浜矩子中心語録の後編である。

●経済大国のはずが、景気後退色

(御)浜さん、リーマン・ショック後、先進国では日本だけGDPを回復できていません。

(浜)二つの問題があると思います。 一つは日本が当面している経済問題について、政治・政策・行政の認識がずれています。 昔ながらのやり方で「ばら撒いておけばポコッと上がってくるだろう」と、今や効力の低下したやり方を繰り返していることです。 もう一つは、これだけの規模とレベルに達している経済ですし、リーマン・ショックの前が、ある意味では規模が膨張し過ぎでしたから、今は余り危険でなく高すぎない、程よい山のところにランディングできている、というところではないでしょうか。 元に戻れないことから「上手くいかない感」が高まっているという事です。

(御)デフレの問題点。 お店も困って、給料も下がってという問題があります。

(浜)モノを買う方の感覚としては1円でも安ければ良いと思うわけですが、1円づつ安くなっていくということは、1円づつ自分の給料が安くなっていくことにも繋がって行くという問題があります。 個別的にみればそれで良い訳ですが、経済全体としてみれば結局、お互いに足を引っ張り合いながら、どんどん(販売価格の)最下位争いをして行くことになるわけで、デフレというのは「自分で自分の首を絞めていく病。 そして、そのうち、窒息して死に至る病」と言えるわけで、大変怖い状況です。

(御)経済対策で今いちばん必要なことは何でしょう?

(浜)基本的に言えば分配政策だと思います。 成長戦略とやたらに言われるわけですけれども、「経済大国としてのイメージが薄れてきている」と(御厨さんは)おっしゃいましたけれども、経済大国ということの捉え方が昔風の捉え方だからそういうイメージになるのだと思います。 「成長していることが経済大国である」と思えば、確かに今の日本はそういうイメージを拭えませんけれども、実はすでに比類なき経済大国になってしまったからそれ以上は伸びないのであって、そうなれば必要なのは、むしろこれ以上大きくなることではなくて非常に豊かに豊富になっている蓄え、豊かさを如何にうまく効率的に分かち合うかということで、それを政策的に申し上げれば分配の問題ということになるのです。

●国の借金はGDP比236%、社会保障費は100兆円突破

(御)選挙で社会保障問題が争点になっていません。

(浜)今の現実を直視できない。 鏡の中の自分が見えない。 鏡の中に、かつての自分しか見えない。 経済大国もかつてのイメージですし、政策や政治の役割もかつてのイメージ、かつてうまくいった事をやればどうにかなるだろうと。

社会福祉の問題だって、高度成長時代の肩車どころか、寄ってタカって一人の人を支えていることに、すでに必ずや行き詰まることが分かっていたのに、その現実を直視することなく今日のようになってしまった。 肩車の姿を見たくない、直視されていない現実に対して的確な回答を出すことはできないわけですから、鏡の中の自分を見たくない症候群が諸悪の根源として根底にある。

(御)国の借金問題をどう思う

(浜)怖いものを見たくない。 「2050年~60年代までの将来予測が必要だ」と増田さんがおっしゃいましたが、そのとおりです。 けれども将来予測だって結局のところ、予測をする人が過去にどれくらい引きずられているかということによって、全く前提が変わってしまいます。 まともな予測をしようとすれば、前提を大きく変えなければいけないわけで、そこのところを大胆に変えていかなければ殆ど意味はないですね。

(御)年金問題、負荷方式と積み立て方式についてはどう思う?

(浜)これは結構シンプルな問題です。 人口がピラミッド型をしていれば負荷方式で何の問題もないわけで、形が逆転している訳ですからこれはもう「算数」として合わない訳です。 こんなことは、はるか昔から展望されてきた。 これだけのことでも、政治と政策と行政が、そこから目をそらしてきた。 そのツケが集約的に顕わになって来ている訳で、過去のおさぼりに対するリベンジしなければなりません。

●原発問題。 ドイツは2022年までに原発ゼロを目指すが、家庭の電気代は年一万円アップ

(御)原発問題

(浜)基本的に私は脱原発、原発廃絶で行くべきだと思っています。 そういうふうに言うと、「こんなに負担が大きくなりますよ。 こんなに経済成長率が頭打ちになりますよ!」と言われますけれども、それはあくまでも(前述したとおり)今までどおりの経済の水準、リーマン・ショック以前の経済水準を維持しようと考えるから「大変だ」という発想になるわけです。 そうではなくて、これだけの巨大な豊かな経済がそれなりに経常レベルでやっていけるということで考えれば、別に原発ゼロでも大して辛い思いをしないでもやっていける。 或いはそれを前提にそれを受け入れるということはそんなに大きな問題ではないと思います。 あまりにも「今までどおり」にこだわっているから、「維持するためには原発がなければダメ、それを無くすると大変なことになる」ということになるわけです。 ですから、原発ゼロとともに新しいステージに入ると考えれば、随分、見る焦点、角度、肌合いが変わってくるのだと思います。

(御)再生可能エネルギーについてどう思う?

(浜)ありとあらゆる方向に向かって開発し、見つけ出し、活用する方向に向かうという基本的方向が必要です。 これもまた「今まで的」なエネルギー政策であれば発想が飛躍しませんし、創造力も低下します。 むしろ、これからは必ず、大胆に逆の方向を向く「逆をむいて歩こう」をキーワードにすべきで、上ばかり向いて歩けば転んでしまいます。 今まで通りの方法は過去に引きずられてしまいますから、スパッと全て逆方向に考えれば、意外と新しい展望が開けて来るのではないかと思います。

(増)電力が足りないことやコストについて、どれが実態を表している数字かをファクトの部分で検討すべきところ、ファクトの部分にどうも、いまひとつ疑わしさが入っている。

(御)データがちゃんと出ないということですか? 浜さん、どう思われます?

(浜)受け入れたくない数字は見ないようにする。 そういう傾向は残念ながら強いですね。 全てのカードをテーブルの上に、見難いものも麗しいものも全部出して、「さあ、どうする」というふうに考えることをする前に、「こりゃヤバい、これは除いておこう」という隠し事をするわけですから、これはもうまともな議論はできないわけで、その発想を如何に乗り越えることができるかという問題だと思います。

●安全保障。 北、ミサイル発射予告

(御)北朝鮮、具体的に危ない国

(浜)増田さんがいみじくも「大人げない」という言葉を使われましたけれども、やはり、キーワードは「大人げない」であると思います。 北朝鮮がどういう国かという事は相当程度データ蓄積があるわけですし、中国がどういうふうな思いをしているかということはかなりの程度分かっている訳ですから、そういうことをベースに、ことあるごとに「今この瞬間、大人の対応とは如何なるものか」と考える癖をつけることが大事です。 大人げないものに、こちらも大人げなく対応したら無限地獄に陥ってしまうわけですから、大人の度量をみせることが外交・安全保障を考える上での基本線だと思います。


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1 コメント

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Unknown (大須事件)
2013-01-30 13:07:06
なんか大前さんみたいになってきましたね(笑)

去年は1ドル50円€消滅を予想していた紫さん・・・
http://www.nicovideo.jp/watch/sm19916844
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