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黛信彦の時事ブログ

浜矩子語録(168) 1ドル50円が怖くないワケ

2012年08月23日 | 浜矩子語録

妖艶なエコノミスト・浜矩子は22日、NPO法人 ザ・シチズン・カレッジの第107期講座の8月講演者として東京都千代田区・内幸町ホールに招かれた。 ホール舞台の黒幕にグレーの演台が本当にシブく収まり、脇机の花器には2本の白ユリを讃えるように真紅のバラたちが活けられていた。 聴講者は固唾を呑んで浜矩子を待ったが、その演台に一気に、手品のようにオレンジ色の花が咲いた。 浜矩子の登壇である。 花弁は丈長のJKで濃厚なオレンジ色だ。 葉はグリーンをベースにしたSKで、浜矩子の歩みに合わせて柔らかに揺れていた。

さて、演題として主催者が要求したのは “「通貨」を知れば世界が読める” であり、2011年6月にPHPビジネス新書で出版された自身の著書と同タイトルである。 また副題は -円高・円安に一喜一憂するのがバカらしくなる - とあった。 

オリンピックの期間中もスペインでは、住宅ローンの延滞住民に対する法的強制撤去が一日に40件のペースで進められていた。 また、国内では円の対ドル為替レートが注視されていた。 更に追い討ちを掛けるように浜矩子が「ユーロ消滅」「1ドル50円」と言う語気を激しくするに及んで、日本のグローバル企業の多くが、ユーロ危機と円高の行く末に対して神頼みするかのごとき昨今である。

しかし浜矩子の話を聞くうちに、「な~んだ、そんなことか」、という気持ちになれるから素晴らしい。 講演の中で浜矩子は聴講者に2つの質問を浴びせた。 200名の聴講者は答えに窮したが、浜矩子から回答が明かされると「なるほど!」と、納得したり安堵したりした。 講演の詳細は同法人の記録CDを購入してお聞きいただくしかないが、以下に要点を記録した。 ただし、大意は把握したつもりだが、メモ書きを語り口調にしているため浜矩子の柔らかさと巧みさには圧倒的に及ばない。

■基礎編

まず、第一の質問があった。 「貨幣に何が起こると通貨と呼ばれるようになるのでしょうか?」であった。 正解を簡潔に表せば、著書にあるように「貨幣に足が生えると通貨になる」、更に「通貨に翼が生えると金融になる」、である。 また、「長い足が生えるほど通貨の性格を強めるが、かつて最も長足の通貨は英ポンドだった」

■本論

~・~ 本日のテーマは2つございます。 それらのテーマはと申しますと、第一のテーマは『1ドル50円時代の到来!』、第二のテーマは『一国多通貨時代の到来?』ですけれども、1ドル50円時代は必ず参りますので語尾にエクスクラメーションマ-ク「!」を付けていただきます。 また、一国多通貨時代の到来は、それがあるかも知れないということで、クエッションマーク「?」を付けていただきます。

私は、1995年頃から執念深く「1ドル50円時代が来る」と言って参りました。 この頃、私はロンドンに滞在しておりました。 円相場は100円近くに落ち着いておりましたけれども、円が150円に戻るか50円に進むか議論する機会がありまして、私は50円に進むと予測したわけでございます。 50円になるということには理由がございます。

第一はバランス要因ということでございます。 ドルの足が長いことを良いことに、どんどん米国にカネが流れて行ってしまう。 そこで金融が暴走したことがリーマンショックの原因にもなったわけでございますけれども、そのドルに対する過大評価の修正をしなければならないというバランス要因でございます。

第二は歴史要因でございます。 実をいえば1971年8月15日に1ドル50円になっても不思議ではありませんでした。 この日がどんな日であったかご記憶の方もいらっしゃるかと思いますが、(第二の)ニクソン・ショックの日でございます。 どのようなことかと申しますと、リチャード・ニクソン米大統領(当時)が「固定比率でのドル紙幣と金の交換を停止する」と発表した日、ドルと金の交換が止まった日でございます。

この日すでに、ドルは通貨の王様ではなくなったわけでございまして、以後、段階的に少しずつ、しかもペースを速めて力を落としていったのでございます。

ちょうど、お風呂の水を抜こうとするとき、最初はゆっくりと水位が下がりますけれども、最後になると、シュルーン!と、一気に抜けてしまいますね。 今がそのときなのです。

けれども、「他の条件は何も変わらずに50円になる」「明日の朝50円になっている」と考えている人もいらっしゃいますけれども、そういう可能性は極めて低いわけでございまして、日本やアメリカの経済体質が変わらないでそういうことが一気に起こるわけではないのです。 前兆として日本の貿易決済がドル建てでなく円建てになっていく。 50円という段階では圧倒的に円建てになって参りますから、そのとき日本では円は使われていない状況になるわけです。

使っていないドルが50円だろうが、何の影響もありません。 ドルは、国際的な通用性が低くなって、通貨から貨幣化するわけです。

歴史にはそういう通貨の例がございます。 イギリスのポンドがそうでした。

(第二の質問) 皆様の中で今日のポンド円相場の終値を知っている方はいらっしゃいますか?   どなたも挙手されない、気まずい沈黙ですが、これは当然のことでございまして、皆様はポンドを使いませんから知らなくても不都合は全く無いわけです。

されば、ドルが50円になったときも、これと同じ状況なのです。 ~・~ (第二のテーマは省略、了)


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