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黛信彦の時事ブログ

浜矩子語録(30)日本はドン・キになれ。G20はサファリパークを(BSディベート081109)

2008年11月10日 | 浜矩子語録
世界金融の安寧を祈る浜矩子↑↑。「日本は、世界のドン・キホーテになれ」と訴えた。

11月9日、NHK新BSディベートは、妖艶なエコノミスト・浜矩子など内外7人の論者を迎え、後半第二部では「新たな金融システムとは?」が討論された。
本編は、その浜矩子語録である。
尚、浜矩子はサファリパーク論、金融無宿論など持論を展開した。

前置きとして、来週に迫った金融サミットは、その参加国を20カ国に拡大してワシントンで開催予定だが、NHKは、EU諸国がG20に提示するであろう「金融市場改革案」を5項目のリストで示した。
第一に、リバティブ規制
第二に、ヘッジファンドなどの規制
第三に、経営者の報酬制限
第四に、国際的な市場監視
第五に、IMFの強化//新国際機関の創設  である。

~・Q・~ EUの考え方について?
~・A・~ このリストの中では、国際的市場監視は重要だと思います。それはどういうことかというと今、世界の金融は全面的な自由放任と全面的な規制の間のどこに持っていけば良いか、ということがポイントになっています。
そこで、全面自由はいわばジャングルです。とすれば全面規制は動物園です。動物園というのは皆な檻にいれてあります。武者さん(ドイツ証券副会長・武者陵司氏)は武者さんの檻に、コールさん(タンタロン・リサーチ・ジャパン代表、イェスパー・コール氏)はコールさんの檻にという感じで。これは行き過ぎでしょう?
みんな檻にはまた戻りたくない、けれどもジャングルは皆が傷んでしまう。それこそ通商の世界も傷む。だからジャングルと動物園の中間的な姿、これを私は『サファリパーク』だと思うのです。「お二人とも檻から出ても良いですよ。飛び掛って来るかもしれないから、檻から出た人はちゃんと自己責任で注意をしなければなりませんよ」というようなことで、やはり21世紀、グローバル時代に相応しいサファリパークの姿をつくる。そういう意味での国際的な市場監視体系を目指すことではないかと思います。

~・Q・~ リストの「経営者の報酬制限」について?
~・A・~ 「庶民的に腹が立つ」という議論は分かりますが、気になることがあります。
誰がどういう風に制限するのか?ということですね。非常に恣意的に、どこかに不気味な見えざる手があって、それによって人々がどれくらいの報酬を貰うのかが決まっちゃうという方向に一足飛びに行ってしまうと、これはある意味では動物園を通り越して、もっと怖い所に行ってしまいそうな感じがしますので注意を要するところです。ですから問題はシステムです。

~・Q・~ 海外の論者はレバレッジ規制、経営者の報酬制限が出来ると言いますが?
~・A・~ プリンスさん(米経済ジャーナリスト、ノーミ・プリンス女史)が、「アメリカ投資銀行がレバレッジを12倍から30倍に引き上げたいと言った事に対して、証券取引委員会がOKを出した。12倍を30倍に引き上げることが可能だったのだから、30倍を12倍に引き下げることは可能なはずだ」と仰いました。そのご指摘のとおりだと思います。そもそも証券取引委員会が「30倍にして下さいよ」と言われたときに「いいですよ」と言ってしまったところに問題があります。
本来グローバル時代に生きる人間の新たな知恵を引き出すために、例えば金融サミットなどをやる訳であって、細かしい規制をいっぱい作るために集まるわけではない訳ですし、「30倍というのはいくらなんでもおかしいだろう?」ということを考えて貫き通すことが出来るような、規制監督責任者たちの集団をどう作るか、そういうところがポイントになります。
そのあたりをきちんと見定めてこういう議論を進めて行かないと、どんどん重箱の隅に入ってしまうし、どんどん窮屈な世界に入ってしまい、サファリパークなのに面白さはどこにも無いという、結局サファリパークは廃業ということになってしまいます。そのへんのところを認識すべきです。

~・Q・~ ドルは基軸通貨でいられるのか?
武者さん、コールさんは「ドル本位制」、山内さん(立教大学教授・山口義行氏)は三極時代と言いますが、浜さんは「無極時代」。 その心は?
~・A・~ グローバル時代というのは突出した者の力によって全てが何とかなる、寄らば大樹の影という時代では明らかにないと思うのです。
グローバル時代はどんぐりの背比べの時代です。例えばアメリカが「自分に全部寄りかかって下さい」と言える時代ではないのがグローバル時代です。ということで、「地球経済に極が無いのであれば通貨の世界にも極が無いのが当然であろう」ということです。一つの通貨の強さに皆が寄りかかって、ひとつの通貨を太陽として、その太陽系に他の通貨は全部位置付いているというのは、世界がグローバル化する前の構造であって、今はそのような時代ではありません。
この恐慌的状態に歯止めが掛からなかったということは、とりもなおさず通貨の世界では基軸通貨の時代は終わった、当然ドルの時代も終わった。ということで、あとは無極状態で群雄割拠だ、というように考えたわけです。

皆さんの一連の議論を聞いていて気になるのが、本位制とか基軸通貨という言葉がどういう感覚で使われているか?です。武者さんが仰るドル本位制というのは伺っていると「ドル便利性」だと感じます。皆が便利に使っていると言う意味ではドルもユーロも国際通貨として、あるいはプリンスさんが言われるグローバル通貨としての役割を果たして行くことになるのでしょうけれども、本位とか基軸という言い方をするときには、そこにはもっと大きな、厳密な意味があると思うのです。
基軸通貨国の定義というのはある意味では簡単で、「自分にとって良いことが世界にとって良いことだ」というふうに自ずとなる。それだけの経済的強さを持っている国が基軸通貨国であり、その国の通貨が基軸通貨である。そういう状態はグローバル時代には成り立ち得ないだろうと私は思います。

~・Q・~ アメリカの消費が世界経済を支えてきたが?
~・A・~ 確かにアメリカが物を買う。けれどもアメリカが物を買うためのお金は日本が貸しているわけです。(皆さんは)アメリカが世界に成長通貨を供給していると言っているけれども、良く考えると今世界の最大の債権国は日本です。この間、世界最大の金余り国であったのが日本で、その日本がアメリカに、日本からアメリカに物を買ってもらうためのお金を貸してあげているという不思議な構図が出来上がっていたわけです。こういう状況になった時点で、ドルは世界の成長通貨ではない。アメリカは世界に成長通貨を供給できる国ではなくなっていた、と思います。更に言えば、今の金融恐慌状態になった事についても日本が作り出した金余りの責任も大きいのです。それらを含めて日本がアメリカにお金を貸している、世界がアメリカにお金を貸さないと回って行かないというのが現状だと思います。

~・A・~ 日本はどのような役割を果たすべきか?
~・Q・~ 私は、日本は「世界のドン・キホーテになって欲しい」と言いたいと思います。
どういうことかと言えば、ドン・キホーテは年をとっていますが「世のため人のため、余り腕力は無いですけれども世界のために尽くしましょう」ということで、金融危機的なところでも知恵を出すということです。ドン・キホーテ的な役割という意味では、せっかく日本はバブル崩壊後の失われた10年を経験したわけで、「それから世界は何を学べるのか?」と言われているのですが、何故もっと早い時点で「このままで行ったら日本の二の舞、もっとひどいことになるよ」ということを、声を大にして言わなかったのか? それを言う年老いたヒーロー。オバマさんのアメリカが若きヒーローであれば、ドン・キホーテ的な年老いたヒーローになって欲しいと思います。 (了)

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