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黛信彦の時事ブログ

浜矩子語録(29)金融恐慌 厳しい分析、甘い見通し(新BSディベート、081109)

2008年11月09日 | 浜矩子語録
11月9日、NHK新BSディベートは、妖艶なエコノミスト・浜矩子など内外7人の論者を迎えて、金融恐慌の「危機に立つ世界経済 どうなる日本」が討論された。
本編は、その第一部の浜矩子語録である。
番組第二部の語録は、
浜矩子語録(30)日本はドン・キになれ。G20はサファリパークを
に記録している。

~・Q・~ 今、世界経済はどのような局面を迎えているのか、一言で?
~・A・~ 現状は、『グローバル恐慌第二幕、物の世界の縮小が始まった』、
こういう風に私は見ています。(参考、(28)恐慌物語、第二幕へ

~・Q・~ オバマ大統領誕生について
~・A・~ プリンスさん(米経済ジャーナリスト、ノーミ・プリンス女史)が「金融に関する規制の強化がポイントだ」とおっしゃいましたが、誰がやっても難しいわけですが、そういう意味ではオバマさんのような新鮮な、非常にカリスマ性のある人が登場したことは、天の援けかも知れないという感じがします。
しかしながら、それだけ期待が大きいわけですから難しいですね。勘所は、どれだけ中心力が出せるか?
規制をしてゆくのですから納得してもらわなければなりませんので、すべての人達を一緒に取り込んで「みんなで頑張っていこうよ!」というメッセージを、彼は勝利宣言の中では非常に上手に出していましてけれども、あのとおりの事がどこまで実践的なとことで出来てゆくか、それが問われると思います。

~・Q・~ 株式市場の下落は? 世界経済は今後どうなるのか?
~・A・~ 「株式市場の下落は単なるパニック的要素があったことだけではなく、市場に充足させる資本が無かったことも原因の一つで、(米国の)あの救済措置は全く充分ではなかった。恐怖感があったというだけでなく、アメリカ、ひいてはグローバルな株式市場に投資資金が不足し、貸し渋りが起き株価が下落を続けた(ノーミ・プリンス)」という話は面白かったです。
「恐怖だけの問題ではないよ、その裏に実態のある恐怖が」という指摘はそのとおりだと思います。
皆さんの冒頭の発言を聞いて思ったことは、「分析が厳しい割には見通しが甘いな」と、一様に思いました。展望としては明るいことを言いたくなるのは分かりますが今はそういう場面ではないと思いますね。
金融が暴走すると如何に実体経済を痛めつけるかということを目の当たりに我々は見ているわけで、株式市場はそれに素直に反応していると思います。まさに、そこを恐れているわけであり、「実体経済に相当なインパクトがきているな」と、それを受けての(株価)の下がりですからそう簡単に止まらない。09年で決着が付くというような話では到底ない、と私は思います。

~・Q・~ 日本政府の追加経済対策は
~・A・~ いろいろ気になることがありますが『証券優遇税制の延長』、証券市場・資本市場の世界で、皆これだけ痛んでいるわけです。
株が下がってひいひい言っているときに、また「この資本市場に戻ってきてくださいね。税金の上で優遇してあげますから、こっちにおいで下さい」というのは、ちょっと無責任だと思います。「危なくなっている資本市場にまた来てください」と政策が言うのか?ということと、日に本経済は格差経済化するという中でこの問題(金融恐慌)が来たわけですよね、なのにこの(追加経済対策)中にたとえばワーキング・プアという言葉、非正規雇用者に対してどうするのか。格差下の日本経済がこの問題にぶち当たったということに対して政策はどう対応しようとしているのか、がメッセージとして伝わってきません。(参考、(27)追加経済対策は30点

~・Q・~ 金融と産業の関係は?
~・A・~ つくづく思うことは、いかに金融が自分のことしか考えない金融になってしまったかということです。産業と金融が離婚してしまった、しかもそれは金融の方の一方的な自己都合での離婚状態に陥っている、という姿を目の当たりに見る気がします。
もちろん、背に腹は変えられない面が金融サイドにあるのだと思いますけれども、産業と金融がもう少し円満な夫婦関係にあれば、お互いに支えあっていく、お互いに難しい状況を一緒に乗り切っていくという発想を持てるはずだと思いまが、仲が悪くなってしまっているので特に金融の方が「我が道を行く」と、貯蓄から投資へと流れに乗った金融は、どんどん産業と仲良かった時代から遠ざかっていく、その姿を良く見た感じがします。

オバマさんも勝利宣言の演説で「メイン・ストリートの繁栄なくしてウォール・ストリートの繁栄はなし」と言っていましたね。メイン・ストリート、これを日本語で言えば産業であり、ウォール・ストリートは金融になるわけで、やはりこの二人三脚をどう上手く実現していくかということが最大の課題です。
山内さん(立教大学教授・山口義行氏)は「従来の日本の金融は産業を育ててきた」と言われましたが、これは一方的な関係ではなく金融と産業が共に、新しい、次世代の展開を育てていくことだと思います。
先ほど申し上げた産業と金融の離婚状態を、円満な、元の鞘に戻さなければなりません。
しかし、かつての日本の産業と金融の結婚は物凄いベッタリ結婚でした。なんでもかんでも一緒にやらなければ駄目みたいな状態だった。
けれども、金融の自由化・グローバル化時代にはそうはいきません。
程よい距離感のある夫婦関係を取り戻す、武者さん(ドイツ証券副会長・武者陵司氏)が仰るように、金融は金融としてやることをやりながら、産業と一緒にやることもある、という感じの「距離感を持った夫婦生活に両者を戻そうや!」という話ではないかと思います。

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