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「どうする日本!」

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黛信彦の時事ブログ

2013年元旦、5大紙社説。「日本国民よ、自信を持て(日経)」

2013年01月01日 | 5大紙社説

年頭の5大紙社説の抄録を以下に記録する。 各紙が日頃の主張から、国家の進路・政府への期待や注文・国民の心の持ち方などを主張する中、朝日だけが『「日本を考える」を考える』というタイトルの神学論を展開し、小欄はまことに残念だ。

安倍政権の長期安定を望む二紙のうち、産経は「政権の国民の憲法改正機運を歓迎し、集団的自衛権の憲法解釈見直しを」求めた。 読売は、夏の参院選の結果次第で久しぶりの安定政権になることに触れ、特に原発政策では「原発ゼロ方針の下では、日米原子力協定によるプルトニウムの保有権利を失うとともに、原子力の平和利用や核不拡散をめぐる米国のパートナーとしての地位も、失うことになる。 安倍政権が原発・エネルギー政策を練り直すのは、当然だ」と同調した。 

毎日は「互恵精神でパイの配分と平和の継続を実現せよ」と書いた。 日経は「経済再生のための目標を定めよ」と主張し、その指標の一つとして「国民総所得(GNI)という指標を新たな物さしにしてみてはどうだろうか」と、「投資立国」の勧めを説いた。

■朝日:混迷の時代の年頭に―「日本を考える」を考える

「日本は」と国を主語にして考えて、答えが見つかるようなものなのか、と。

欧州に目を向けてみる。 (ユーロ危機が)一息つけたのは「欧州人が深く関わった」から、と欧州連合(EU)のファンロンパイ首脳会議常任議長はいう。 助ける国も助けられる国もエゴに引きずられはしたが、結局、国境のない危機の打開に国境はじゃま。 主語を「ギリシャ」ではなく「欧州」としたからなんとかなった、ということだろう。

(他方)一つになろうとしているはずの欧州には逆行と見える流れも根強い。 最近もスペインのカタルーニャや英国のスコットランドで独立や自治権拡大を求める機運が盛り上がっている。 いったい欧州の人たちは国境を減らしたいのか、増やしたいのか。 実は出発点は同じだ。 なんでもかんでも国に任せてもうまくはいかないという思いだ。

同じような考え方は、日本にも登場している。 たとえば大阪市の橋下徹市長は共著書「体制維新―大阪都」でこういう。 「世界経済がグローバル化するなかで、国全体で経済の成長戦略を策定するのはもはや難しいと僕は思っています」

「(国境を越える資本や情報の移動などによって)国家主権は上から浸食され、同時に(国より小さな共同体からの自治権要求によって)下からも挑戦を受ける」 米ハーバード大学のマイケル・サンデル教授は17年前の著書「民主政の不満」でそう指摘していた。 これから期待できそうなのは、国家が主権を独占しないで、大小の共同体と分け持つ仕組みではないかという。

時代はゆっくりと、しかし着実にその方向に向かっているように見える。 「日本」を主語にした問いが的はずれに感じられるときがあるとすれば、そのためではないか。

■産経(年のはじめに:論説委員長・中静敬一郎):長期安定政権で国難打破を

新年を日本再生の元年にしたい。 その槌音(つちおと)は聞こえている。 憲法改正を掲げる政治勢力が国政の担い手となり、国のありようを正す動きが顕在化してきた。

中国と北朝鮮が明らかに一線を越えた。 集団的自衛権の解釈見直しは待ったなしの課題である。 それだけではない。 日本は平時の自衛権を認めていない。 憲法第9条による「武力行使と一体化しない」とする解釈があるためだ。 戦後日本がこうした不備を放置してきたことが、逆につけこまれ、抑止できない事態に追い込まれている。 日本人が覚悟を決める時だ。 日米同盟を堅固にして抑止力を強める。そして心を一つに中国の圧力をはね返すことに、である。

中国の威圧と挑発は今に始まったわけではない。 127年前の明治19(1886)年、清国は当時最新鋭の大型戦艦「定遠(ていえん)」「鎮遠(ちんえん)」などを親善の名目で日本に派遣し、威嚇した。 5年後も同様な軍事的圧力を加えた。 脅せば屈服すると見たのだろうが、明治の日本人は逆に奮い立ち、海軍力整備に向かった。 問題は、帝国議会で政府と野党が激しい政争を繰り広げていたことだ。 その混乱ぶりは、清国に日本弱しとの印象を与えるほどだった。 しかし、明治天皇の詔書が発せられるや、内紛は一日にしてやみ、議会は2日間で臨時軍事費を満場一致で可決した。 日本人の団結心と愛国心を見誤った清国は日清戦争に敗れて瓦解(がかい)した。

先の総選挙で多くの有権者は、強い経済とともに対中抑止力を働かせるとした安倍氏に国の未来を託した。 危機意識の共有だ。 ただ、国家再生の道のりは険しい。1年前後での政権交代を繰り返して何ができようか。 安定した長期政権になってこそ、国難に立ち向かって国益を実現できる。 だが、国民も目が肥えている。 脇の甘さと緩みは命取りだ。 中国の思想家、荀子(じゅんし)は、民を水に、為政者を舟に例えて、こう警告していることを年頭の戒めにしたい。 「水はすなわち舟を載(の)せ、水はすなわち舟を覆(くつがえ)す」

■日経:国力を高める(1) 目標設定で「明るい明日」切り開こう

手をこまぬいていては、この国に明日はない。 閉塞状況を打ち破り、国力を高めていくための手がかりをつかまなければならない。 まず大事なのは目標を定めることだ。 どんな国家にしようとするのか、どのように経済を立て直していくのか、どんな社会をつくっていこうとするのか――という思いの共有が求められる。 戦後を考えると、だれもが等しく豊かで自由な社会をつくるという共通の目標があった。 吉田茂元首相が敷いた軽武装通商国家の路線のもと、経済大国をめざした。 一億総中流ということばにあらわれているように、その目的は達成された。

・経済再生のための目標をどこに置くのか。 国民総所得(GNI)という指標を新たな物さしにしてみてはどうだろうか。 「投資立国」の勧めである。 グローバル化の波に乗り、国境を超えて経済活動を営む個人や企業の動きを経済連携協定(EPA)などで支え、海外での稼ぎを国内に還流させる必要がある。

・これからの国家のめざすべき方向も示す必要がある。 ひとつの提案は「科学技術イノベーション立国」の勧めである。

・社会の目標としては、東日本大震災をきっかけに高まった共助の精神も忘れてはならない。 基本になるのは自助・自立だが、困ったときにはお互い助け合い、困難を乗りこえようとする「自律と連帯」の勧めである。

悲観ばかりしていてもはじまらない。 大きな国家戦略のもと、新たな価値を創造する力を磨いていけば、明るい明日は必ずやくると信じたい。 吉田茂元首相は、回顧録『回想十年』の中で「復興再建の跡を顧みて」と題する章を、次のようなことばで結んでいる。 「日本国民よ、自信を持て」

■毎日:2013年を展望する 骨太の互恵精神育てよ

2013年は、戦後日本の生き方が、二つの意味で試される年になるのではないだろうか。

一つは、日本経済の底力だ。経済政策には、全体のパイをどう増やしていくか、という側面と、それをどう分配するか、と2通りある。

バブル崩壊後の20年余り、歴代政権は何もしてこなかったのではなく、金融政策としてはゼロ金利や量的緩和、財政政策としては公共事業を中心とした数次に及ぶ緊急経済対策を打ってきた。 いわば類似政策を積み重ねてきた結果が、1000兆円にものぼる借金財政を生んだ。

若い人たちが自分たちの子どもを産み育てることのできる環境を整備するためには、限られたパイの中で、豊かな高齢者層から雇用も所得も不安定な若年者層へのより明確な所得移転が必要になるのではないだろうか。 その際に心がけたいのは、互譲と互恵の精神である。 若い人たちを生かすことが社会全体の活力につながり、めぐりめぐって高齢者層の利益になる。 全体のパイが増えなくてもそんなプラスの分配サイクルはできないか。 民主政権では踏み込めなかった政策をぜひ前に進めてほしい。

互恵の精神は、世代間対立だけでなく、国と国との関係にも応用できる。 二つ目に試される日本政治の平和力とも関わってくる。

パイの配分と平和の継続。 時代は互譲の裏付けのある骨太な互恵精神を求めている。 戦後の歩みを振り返ると、私たちにはその時代の要請に応える力は十分に備わっているように思える。

■読売:政治の安定で国力を取り戻せ

日本は、国力を維持し、先進国の地位を守れるかどうかの岐路に立たされている。

・安倍政権の今年最大の政治目標は、夏の参院選で自民、公明両党で過半数を占め、衆参ねじれ国会を解消することである。 安倍政権が参院で過半数を確保すれば、次の国政選挙まで最大3年、次期総裁選まで2年余あるため、政治は「安定期」に入る。 真っ先に取り組むべき課題は、経済再生と成長力回復だ。

・首相は、「金融緩和」「財政出動」「成長戦略」の3本の矢で、デフレ脱却を図るとしている。妥当な考え方だろう。 首相が経済財政諮問会議を復活させ、新設の日本経済再生本部と一体的に運営することは評価できる。 各種規制の緩和、環境や医療・介護など成長分野への投資によって、民間の生産力を高めたい。

・安価で安定的な電力の確保も、成長に欠かせない。 原子力規制委員会が新たに作る安全基準に従って安全性を確認した原発は、着実に再稼働していく必要がある。

世界は引き続き原発を活用し、増設する。 日本は、原子力分野で世界有数の技術力を、今後も保持する必要がある。 成長の観点からは、原発のインフラ輸出も促進したい。 原発政策は、日米同盟を軸とする防衛力にも影響を与える。 日米原子力協定によって、日本にはプルトニウムの保有が認められている。 野田政権が決定した「原発ゼロ」方針の下では、その特別な権利も、原子力の平和利用や核不拡散をめぐる米国のパートナーとしての地位も、失うことになる。 安倍政権が原発・エネルギー政策を練り直すのは、当然だ。

・米国主導で自由貿易を推進するTPPは、今年中の交渉妥結を目標としている。日本は関税撤廃・引き下げ、貿易・投資のルール作りに関与し、国益を反映させなければならない。 

こうした国力を取り戻すための政策課題を着実にこなすことで、政治への信頼も徐々に取り戻すことができるだろう。 今年を日本が足元を固め、反転攻勢をかける年にしたい。


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1 コメント

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不愉快にさせられた (シロ)
2013-01-02 07:43:22
今日の朝の政治バラエティー見てたんですが、正月にもかかわらず不機嫌そうな面で見ていて本当に不愉快な人でした。政治バラエティーとはいえ正月にはもうちょっと楽しい顔を見せてほしいものです。
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