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黛信彦の時事ブログ

浜矩子語録(135)ユーロ圏にディビジョン制を

2011年11月09日 | 浜矩子語録

7日放送のTBSラジオ・Digは、カンニング竹山とTBSアナウンサー・外山惠理がパーソナリティ、慶應大学名誉教授・田中俊郎がスタジオゲストで、「ギリシャだけじゃなくてイタリアも?EU危機が世界に与える影響」が語られ、同志社大学教授・浜矩子は電話でゲスト出演した。

 

以下は同放送の後編で、Qは(竹山)(外山)(田中)の各氏、Aは妖艶なエコノミスト・浜矩子の語録である。

Q~・~ (外山)視聴者のメールで、子沢山ママさん32歳が「アメリカは経済危機、日本は不景気。儲かっているのはどこ? 世界経済はコントロールできるの?」と質問を寄せていますが?

A~・~ 経済活動は人間の営みです。人間の思いや行動が出てしまう。

ですから逆に枠組みとか仕組みとかでコントロールできるものではありません。

「仏を作って魂を入れず」のような感じですが今、協調が重要ですけれども、協調の枠組みを如何に作っても、そこに人々の魂が入っていかなければ問題解決はできないという事だと思います。

今や、グローバル経済は一蓮托生の経済ですから、ご質問にあったように「誰かが得をしている」という状況ではない。繋がり繋がりで、皆などんどん一蓮托生で奈落の底に行ってしまうというような状況になりつつあるわけなので、それを皆なで永遠の暗闇に突入するのではなくて、新たな夜明けに向かうように助け合い、分かち合い、支え合わなければなりません。

人の足を引っ張り合うのではない体制が出来てこないと、どうにもならない具合になっている今日この頃です。

 

Q~・~ (竹山)世界的にということですね?それは

     (外山)EU27カ国は運命共同体みたいなものではないですか?

この前G20で「EUが一体となってギリシャの問題も対応していくよ」という風になっていますけれども、その中でも潤っている国なんてないですけれども、みんなで助けざるを得ない枠ですけれども、今後はどうなる?

A~・~ 助けざるを得ない、助け合うことがどうしても必要なのですが、支え合うにもやり方があって、今のようにとりあえずカネを出し合って当面の急場を凌ぐ、凌ぎしのぎで行くことばかりやっていると「ミイラとりがミイラになってしまう」ので、支えるといっても問題の本質につながる支え合いでないとだめですね。

ギリシャの問題でも、皆でとりあえずカネをかき集めて当面を凌ぐのではなくて、仮にギリシャがとりあえず国家倒産をするというのであれば、それはそれで倒産してもらって、けれどもそれが、とんでもないパニックに陥らない、国というものが倒産してもあんまりみんなが驚かないというような仕組みというか工夫をして、悪いがん細胞はサッと外科手術で切り取ることができるような体制を作ることが本当の支え合い・協調ではないかと思います。

 

Q~・~ (外山)東京都の視聴者チュンさんは、「EU危機に、その元となるギリシャを切って何とかなるものなのか?」と質問しています。それが経済危機の処方箋になるの?

仮にギリシャがEUを離脱すると、その後のギリシャはどうなるの?

A~・~ 以外に「ああ、楽だ~!」という感じになるかも知れません。

 

Q~・~ (竹山)ギリシャの国民、困っちゃいません?

A~・~ ユーロ圏から出るのとEUから出るというのでは微妙な違いがありませけれども、特にユーロ圏から出るということでは、今、ユーロという通貨で仕事をしているから故に自分の思い通りに運営できない、自国通貨があるので安くなるから輸出が伸ばせるとか、そういうところがないので辛いのです。

かつて、ユーロ圏がなかった頃にEUとして欧州通貨制度という設定を持っていたのですけれども、ここにイギリスが入って2年ほどで出ざるを得なくなったのですけれども、出てからのイギリスは楽になってしまって、輸出主導型の成長路線に入って「やっぱり、出てきてよかったな~」という感じになったこともありましたから、自分に身に合わない窮屈な、ユーロというのはお仕着せワンサイズで、洋服のサイズが一つしかないブティックみたいなもので、誰にとってもぴったりサイズなものがなくて、皆な「帯に短し襷長し」で我慢をしていなければならない、それがユーロ圏です。

そこから出て行って、自分にぴったりサイズのやり方をみつけると、非常に楽になる面もあるかも知れません。

 

Q~・~ (田中)ギリシャがユーロ圏を抜ければ、ギリシャは新ドラクママネーを採用するはずで今の借金はユーロ建てですから、ドラグマは目減りして倍にも3倍にもなるのでそれを返すのは大変ですよね?

A~・~ 大変ですけれども、そういう風になったところで改めて、どの辺まで債務の債権放棄をしてもらうか?

そこからがむしろもう一度考え直すこともあり得るでしょうし、一気にドラグマに行くのではなくてユーロ圏の中に、ユーロAディビジョン、ユーロBディビジョンというようなdivision制をとって、ユーロBの方に行く。ユーロと一緒に動くのだけれども、ユーロAよりはちょっと安いというようなやり方もあるのではないかと思います。

ユーロ圏を維持しようとするなら今までのやり方とは違う発想で新たな発想で設計をやってみる必要があるでしょう。

 

Q~・~ (竹山)ユーロの中に、一軍と二軍がある?

A~・~ 本当は皆な一軍にいるのが良いわけですが、調子が狂ってきたら二軍に行って調整をして準備が整ったら一軍に戻る。

 

Q~・~ (田中)浜先生、ユーロという制度は、金融政策はECB(欧州中央銀行)の権限に上げて、財政政策は各国に残っているわけですが、財政政策も次第にコントロールを強めていってEU経済相のようなものを作るべき、また全邦的に動かないと根本解決にならないとの見方もあるが?

A~・~ 理屈はそうなんでしょう。

ですけれども、なんとかして「それだけはやらないように統合しよう」という形を保って行こうと今日まで参りました。

そこを、思い切りよく財政統合をしてしまうのであれば、理屈の辻褄は合いますが、そうなればますますぴったりサイズを探すのが難しくなるのです。

実は「財政統合が最終的な決着だ」という発想も、それをやると求心力をなくしてしまうという面も考えておかなければなりません。

 

Q~・~ (竹山)基本的問題ですが、EU問題がうまく決着しないと日本も相当やばい?

A~・~ 影響はあります。

ユーロ圏の銀行に日本の銀行が金を貸していれば、日本の金融機関にも影響を及ぼします。

ユーロが安くなれば円レート、株式市場、債券市場も波乱万丈になるということで、世界的に金融市場が大荒れに荒れ、日本にも大きな打撃になります。

ユーロ圏で商売されている人々にもインパクトがあります。

さらにいえば「そういえば繋がり」で、「日本の財政問題はどうだ?」ということになってくれば日本国債の問題にもなってくるわけです。(了)


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