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黛信彦の時事ブログ

浜矩子語録(134)ベルルスコーニ効果

2011年11月09日 | 浜矩子語録

 7日放送のTBSラジオ・Digは、カンニング竹山とTBSアナウンサー・外山惠理がパーソナリティ、慶應大学名誉教授・田中俊郎がスタジオゲストで、「ギリシャだけじゃなくてイタリアも?EU危機が世界に与える影響」が語られ、同志社大学教授・浜矩子は電話でゲスト出演した。

 

以下は同放送の前編で、Qは(竹山)(外山)(田中)の各氏、Aは妖艶なエコノミスト・浜矩子の語録である。

Q~・~ (外山)ギリシャの財政悪化に歯止めがかからないのはなぜ?

A~・~ いま歯止めを掛けようとしているわけですが、一つの問題は「借金を返すために借金をせざるを得ない」という状況に陥って来ているということが挙げられます。

こうなってくると歯止めはかかりません。

借金を返す期日は巡ってくる、それに対応するために新たな借金をする、こういう借金地獄的状況になってくるとどうにもなりません。

 

Q~・~ (竹山)僕、個人的に過去そういう状況になったことがありませけど、破たんしかないですよね?夜逃げしかなくなっちゃうんですよね?

A~・~ 国は夜逃げできないので、そこが辛いところなのです。

 

Q~・~ (外山)先ほど有馬(フリージャーナリスト・有馬めぐむ)さんにも伺ったのですけれども、ドイツなどは「自分たちが一番お金出している、と思っている。ちょっと、ギリシャ迷惑だな~と思っている」というような話がありましたけれども、他の国はギリシャに対してどう思っているのでしょうか?

A~・~ 「思っている」というレベルでは、「困ったな~、ちょっとかなわないよな~」という意味では正直なところでしょう。

もっと遡っていえば、そもそもユーロ圏という一つの通貨をドイツとギリシャのような経済構造が異なる国が共有するという状況を作った時に、こうなることはある意味では目に見えていたのです。

ギリシャを入れておいて今さら怒るというのはおかしい面もありますし、今ギリシャの国民の側からすれば、「こんなことになるのだったら、最初から言っといてよ!」というような感じもあると思います。

やはりこれは、ギリシャの財政運営・経済体質の問題もさることながら、単一通貨圏であるところのユーロ圏が持っている本質的問題があからさまに出てきたという感じです。

 

Q~・~ (外山)イタリアも「今度はウチもまずいな」というように、他にも「ウチもまずいんだよね」というのがどんどん出てきそうで。 他の国の事情は?

A~・~ 実をいえば、フランスも国債が3Aを保つために、更に一段と財政赤字を削減しなければいけないという状況になってきています。

ですから「ウチも実は」というか、ドイツでさえ財政収支が赤字でない訳ではなく、それぞれみんな問題を抱えている。

けれども、一番困っているところを支えるために余計に財政負担がかかる、更には、みんなが皆の問題に気がつき始めてしまうという効果をギリシャ問題は持っています。

ですから、ギリシャに注目が集まらなければ「そういえば、イタリアはどうだったんだっけ」というような感じも出てこないわけですけれども

ある意味では、これまで見て見ぬふりをされていた諸問題が、連鎖的にどんどん明るみに出てきている、冷汗をかく日々が続いているという感じです。

 

Q~・~ (竹山)自国では「本当はまずいんだよな」と、面と向かって取り組んでいなかったけれども、最近ギリシャをきっかけに他の国にいろいろ「お前、最近、いろいろ、まずいんじゃないか?」と、言われ出したということですね?

A~・~ そうでしょうね。

「そういえば」という意味では、日本だっていちばん「そういえば」な訳ですけれども、ここのところが実は怖い。

ここから先の問題としては、ヨーロッパで周辺部(ギリシャ)から中心部のフランスやドイツに向かって押し寄せている問題が「そういえば、そういえば」の連鎖で、アメリカはどうか、日本はどうか、という風な格好になってゆくことが注目されるし、冷や冷やものというところです。

 

Q~・~ (外山)視聴者のイトコさんから「ポルトガルやスペインの状況はどうなの?」という疑問が

A~・~ それぞれ事情は違いますけれども、財政赤字の規模はスペインもポルトガルも比べてみればそんなに違わない、五十歩百歩じゃないの、と思われて仕方がないところがあります。

こういうところも、「皆なユーロ圏に入った、ドイツと同じユーロという通貨で借金ができる」という事で念願の建設・開発プロジェクトをやっちゃってこういう風になったという面もあるわけです。

ユーロというものに「こっちの水は甘いよ!」と言われて入ってみたら「こんな筈じゃなかった」、

支えるほうのドイツも、甘い言葉に誘われて入った(ドイツより)南のほうの国々も一様に「こんな筈じゃなかった」という感じではないでしょうか。

Q~・~ (竹山)先生、イタリアがIMFの監視下に置かれましたが、スペインやポルトガルと同じことですか?「こんな筈じゃなかった」と「甘い水に寄せつけられた」と?ちょっと違うような気がしますけれども。

A~・~ イタリアは確信犯という形です。イタリアは最初から準加盟国ですから、ポルトガルやスペインあるいはアイルランドと全然状況が違うわけで、

イタリアの問題はもともとわかっていたことなので、今更問題にしても始まらない、最初からいる国だし、皆でなんとなく目を瞑っていたという面も、今まではあったと思います。

しかし、もはや、繋がり繋がりで考えてみると「もはや、眼をつぶることはできない」という状況になってきているし、加えて“ベルルスコーニ効果”というのがあります。

あのおっさんが「観光客がいっぱい来ている。レストランは満席だから大丈夫」などと言ってしまう人が出てくると、せっかく「知らん顔しておこうか」と思っていてもそうはいかなくなってしまうということで、元の問題にベルルスコーニ効果が加わって、今や明るみに出てしまったという感じでしょうか。

 

A~・~ (竹山)先生、イタリア制は高いというイメージ画ありますよね?

昔、高いものは売れましたけれども、こう不況になってくる売れなくなってイタリア自体もまずくなってきている?

Q~・~ そういう面もあると言えばあるけれども、そこは本質ではありません。

イタリアは「痩せても枯れても腐っても鯛」的なところがありますがそこがカバーしきれなくなった、隠ぺいし切れなくなった経済体質。(世界中の)皆が「あそこはどうなった」と目を皿のようにして見ている状況になってくると格好良いところで隠してきたことがぼろが出てきてしまったということではないでしょうか。(続く)


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