むらぎものロココ

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ギョーム・ド・マショー

2005-01-13 02:47:59 | 音楽史
mndGuillaum de machaut 
Messe de Notre Dame
Liturgie:Messe de la Purification de la Vierge
Marcel Peres
Ensemble Organum

ギョーム・ド・マショー(1300-1377)は、フィリップ・ド・ヴィトリと並んで14世紀フランスを代表する知識人だが、両者は類似したキャリアを重ねながらも対照的に語られることが多い。作品に自分の名前を出さなかったヴィトリと個人全集のような写本を作っては献呈し、自分の作品を後世に残そうとした自己顕示欲の強いマショーというわけだ。
マショーは抒情詩において、トルヴェールの伝統を受け継ぎながらロンドーやヴィルレーなどの定型化を完成へ導いた。この定型化は詩の技法を洗練化したが、詩そのものは誰にでもわかるトポス化された常套句となっている。これは、詩が曲と一体となることで完成するため、歌詞はあまり目立たないほうがよいからだ。詩人固有の表現があらわれるのは、マショーと彼の甥であるデシャン以降、詩と音楽が分離してからのことになる。
マショーはアルス・ノヴァを代表する存在で、イソリズムを用いたモテトゥスなど、140曲ほどが残っているが、ミサで用いられる通常文のすべてを一人で作曲する「通作ミサ」として最初の作品となる「ノートルダム・ミサ」の作者として知られる。「通作ミサ」はその後ブルゴーニュ楽派からフランドル楽派などのルネサンス音楽において数多く書かれることになる。
このアンサンブル・オルガヌムの演奏はマショーの「ノートルダム・ミサ」に固有文の演奏もあわせて2月2日に行われる聖母マリアの清めの祝日(キャンドルマス)を再現している。この団体らしく野太い男声による演奏には異様な感銘を受ける。とりわけホケトゥスの部分は迫力がある。壮絶なるしゃっくり。