むらぎものロココ

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中世イギリスの音楽

2005-01-11 00:46:27 | 音楽史
siiiSUMER IS ICUMEN IN
Medieval English Songs


Paul Hillier
The Hilliard Ensemble

1066年のノルマン・コンクェストから300年ほどの間、イギリスはフランス文化の影響を強く受けた。英語もフランス語の影響を受けて大きく変化していった。この期間、英語は文学用語としてはほとんど存在せず、もっぱらラテン語やフランス語が使われていた。音楽においても世俗歌曲は北フランスのトルヴェールから影響を受けていたし、宗教音楽もフランスの影響を受けていて、英語の歌詞を持った楽曲はほとんど残っていない。
そうしたなか、13世紀後半から14世紀初頭にかけてひとつの歌曲が突然変異的に生まれた。それがタイトル曲の「夏は来たりぬ」である。この曲は15世紀以前に書かれた6声の楽曲として最初のものであり、またカノンとしても最初のものである。この詩はラテン的な明るさが特徴で、それまでのアングロ・サクソンの北方的な暗さとは対照的なものでもある。「夏は来たりぬ」は世俗歌曲だが、ラテン語の歌詞(Perspice Christicola)もあり、宗教的な場面でも用いられていた。(contrafactum)
イギリス音楽の特徴は3度、6度の和声を用いることと、従来の旋法ではなく長音階を用いることが挙げられる。
このヒリアード・アンサンブルのアルバムには、その他にノートルダム楽派からの影響が顕著な楽曲や聖ゴドリック(貿易商で成功した後に信仰の生活を送るようになったヴィジョネールな傾向があった人)の楽曲やチョーサーの「カンタベリー物語」にある「粉屋の話」にも出てくる、当時非常にポピュラーだった「ガブリエルは天父から」などが収録されている。