むらぎものロココ

見たもの、聴いたもの、読んだものの記録

シトー修道会の聖歌

2005-01-06 22:17:10 | 音楽史
fontfroideCHANT CISTERCIEN
(Monodies du XⅡsiecle)

Marcel peres
Ensemble Organum

シトー派の修道会は11世紀末に設立された。修道院の原点に帰ることを理想とし、修道僧たちは戒律を厳格に守りながら自給自足の清貧な生活をした。このような原点回帰もしくは純粋化は修道院での生活だけでなく、建築や音楽にも及んだ。フォントネーにある修道院は世界遺産になった。
この修道会3番目の僧院長であったアルダンは純粋な聖歌を求めて北フランスのメッツに写字生を派遣した。9世紀頃にローマ聖歌の中心地だったメッツであれば、純粋な聖歌が失われずに残っていると思われたからだ。しかし、写字生が持ち帰った聖歌は旋法が混乱したもので、アルダンが期待した純粋な姿とはほど遠いものだった。もともと雑多な影響関係で成立した聖歌に純粋なものなどあるはずもなく、この探索は最初から無理な話だったのだ。
アルダンの死後、シトー派の修道会では純粋な聖歌を探すことをあきらめ、聖歌を自分たちの手で改良することにした。過剰に装飾的な部分を排除し、旋法の性格を明瞭なものとし、混合を避けた。こうして合理的で美しいシトー派の聖歌が誕生した。
アルダンの不合理な欲望は死後に合理的な方法による捏造によって実現されたのだった。
この聖歌はシトー派の修道院で歌われるとそのときの残響がポリフォニックな効果をもたらす。アンサンブル・オルガヌムの録音でもフォンフロワの修道院が使われ、豊かな残響がとても心地良い。