BCGワクチン接種による結核予防以外の非特異的効果の報告について
細胞代謝はBCGで感作された単球によって大きな変化が生じる。Akt-mTORシグナル伝達経路は、これらの代謝変化に不可欠である。また、グルコースおよびグルタミン代謝の誘導が、感作された免疫応答において重要である。
ブラジルで実施された研究、BCG予防接種と子供の肺炎死亡リスクの低下との間に関連を報告
Prevention of tuberculosis in macaques after intravenous BCG immunization
結核の罹患率は2015年時点で14.4(第8回結核部会資料)
Mantoux reaction(ツベルクリン反):
purified protein derivative (PPD) 5IU(0.1ml)を皮内接種後48-72時間後に硬結の長径(induration)が10mm以上で陽性と判断される
一般的に陽性は活動性の結核を示唆するが、PPDがbacille Calmette Guerin(BCG)や非結核性抗酸菌(リーシュマニア症等を含む)の抗原と交差反応を示すため偽陽性の問題がある。
感度、特異度は低く、免疫不全があれば偽陰性が増える
解釈には患者の病歴を含めて、実施方法まで解釈が必要
陽転化の定義:
2年間以上の期間でPPD反応が10mm以上変化すること
そのような場合には胸部レントゲン検査を施行
活動性の病変がなければINHとビタミンB6を6-12ヵ月内服してモニタリングする
日本での判定:
一般的には下記が用いられる
陰性(-): 発赤の長径 9mm以下
弱陽性(+): 発赤の長径10mm 以上
中等度陽性(++): 発赤の長径10mm以上で硬結を伴うもの
強陽性(+++): 発赤の長径10mm以上で硬結に二重発赤、水疱、壊死等を伴うもの
記載の仕方は下記のURLを参照
http://www.lilac.cc/~infinity/pictures/tuhanbui.gif
日本結核病学会予防委員会におけるツベルクリン反応検査の結果に基づく措置のための基準
http://www.kekkaku.gr.jp/ga/ga-34.html
interferon-γ release assays(IGRAs):
結核抗原に対して特異度が高く、潜在性結核を診断するのに有用
ただし、潜在性感染、活動性感染、既感染の鑑別はできないため、確定診断には細菌学的診断を含めた総合判断を要する
・QFT-Gold: BCGやほとんどの非結核性抗酸菌に存在しない遺伝子にコードされた、early secreted antigenic target 6kDa protein(ESAT-6)や10kDa culture filtrate protein(CFP-10)の免疫原性を利用したのがQuantiFERONⓇ-TB第二世代のこと
被験者の血液にこれらの抗原を反応させて放出されるINF-γを測定、0.35IU/mLをカットオフ値とすると、細菌学的に結核菌が検出された結核発症群に対して、感度89.0%、特異度98.1% (Mori T, Am J Respi Crit Care Med 2004)
非HIV感染者であっても免疫不全者は陽性率が低下し、末梢血のリンパ球数に左右される傾向にある(Komiya K, J Infect 2011)
近年は、ESAT-6、CFP-10にTB7.7を加えた第三世代が導入されたが、採血から検査までの検体の取扱いで陽性率が変動するため、検査結果には注意を要する
・T-SPOTⓇ: 被験者の末梢血に存在する感作T細胞から放出されるINF-γをEnzyme-linked Immunospot法(ELISpot)で測定する方法(保険適用)
Bacille Calmette-Guerin (BCG):
M. bovis に対する生ワクチンで経皮接種される
多くの国で生後すぐに接種されるが、米国では推奨されていない
リスク:
旅行者が3ヵ月以上滞在する場合は、結核罹患のリスクは現地住民の結核罹患のリスクと同程度となる
有効性:
乳児、特に1歳以下における肺外結核及び播種性結核に効果がある
英国ではハイリスク群の子供における推定有効率は80%とされる
一方で肺結核に対する予防効果はない
適応:
英国では結核の平均罹患率が1/10万以上の地域の乳児、及び同様の罹患率の地域から本人もしくは家族が移住して来た乳児に対して接種される
結核暴露リスクのある国へ行く乳児に対しての接種はWHO ガイドライン2008によって勧められている
旅行者に対してはツベルクリン反応が陰性で、結核罹患のリスクが高いとみなされる旅行者にのみ接種される
例えば、Mantoux Test 陰性でアフリカに救援活動をしに行く等の結核に罹患したヒトと密接な接触を持つヒト(旅行者における適応者は稀である)
ツ反が強陽性であればBCGは接種するべきではない
旅行者のBCG接種に関するガイドラインでは統一した見解はない
接種方法:
他のワクチンとの同時接種は問題なし(経皮接種)
ブースター接種は推奨されていない(WHO)
副反応:
局所の発赤と硬結
接種部位の組織崩壊はしばしば起こり、潰瘍はゆっくりと治癒する
時に重症化して皮膚移植が必要になることもある
重症化は稀であるが、BCGの副反応として起こりうる
BCGの接種継続の必要性に関する検討(第7回厚生科学審議会結核部会資料)
フランスではBCG接種を2006年に中止したが、それ以降も2011年までに乳児の結核性髄膜炎の増加を認めていないとの報告がある(Eurosurveillance, Volume 20, Issue 11, 19 March 2015)
Tuberculosis — United States, 2016