国際医療について考える

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予防接種方法・効果(概論)

2008-09-30 | Vaccine 概要

 

*以下は内容を保証するものではありません*

ワクチン名:接種可能年齢/回数/2回目/3回目/抗体獲得率/効果発生時期/有効期間(追加接種の目安)

【定期接種】
DPT:生後6W/3回/3-8W/3-8W/?/3回接種後/10Y

Polio:生後すぐ/2回/6W以上/-/80%以上/2回接種後/なし

麻疹・風疹:生後6M/2回/5-7歳/-/95%以上/10-28D/-
麻疹の予防効果: 95%(90-98%) Pinkbook
風しんの予防効果: 95%(90-97%) 少なくとも1回 Pinkbook 


日本脳炎:3歳/3回/1-4W/1Y後/80-90%/2回接種後/4Y

BCG:生後すぐ/1/-/-/50%以上/2M後/なし

インフルエンザ:60歳以上/1/-/-/60-70%/1W後/毎年

【任意接種】
インフルエンザ:生後6W/2回/4W/-/?/2回目の1W後/毎年

A型肝炎:1-2歳/3回/2-4W/6-12M/ほぼ100%/2回接種後/10年以上

B型肝炎:生後すぐ/3回/4W/6-12M/70-90%/2回接種後/10年以上

流行性耳下腺炎:18ヵ月/1/-/-/90%以上/2-3週後/数年間
予防効果:95%(90-97%) 少なくとも1回接種 Pinkbook

水痘:12ヵ月/1/-/-/96%/2-3週後/10年以上
水痘の予防効果:1回接種で97%、13歳以降の2回接種で99%70-90% (重症例に対しては95-100%) Pinkbook

狂犬病:12ヵ月/3/4W(7D)/6-12M(28D)/ほぼ100%/3回接種後/5年

コレラ(注射):1歳/2/8D/-/50-60%/8日後/数ヵ月

髄膜炎菌:2歳/1/-/-/60-70%/?/3年

ワイル病:?/2/8D/-/?/2回接種後/5年

黄熱:9ヵ月/1/-/-/ほぼ100%/10日後/10年

【トラベラーズワクチン】(破傷風以外国内入手困難)
破傷風:生後6週以降/3/4W/6-12M/ほぼ100%/10日後/10年

インフルエンザ菌:生後2ヵ月/4/4W/4W/ほぼ100%/

MMR:15ヵ月/1/-/-/95%以上/2-3週後/追加として1回

腸チフス(経口):3歳/3/2D/2D/3回接取後/3年

髄膜炎菌:2歳/1/-/-/?/15日後/0-5年

ダニ媒介脳炎:18ヶ月/3/4W/1Y/ほぼ100%/?/3年

ペスト:1歳/3D/3D/?/?/6ヵ月

コレラ(内服):6歳/2/7-42D/-/85-90%/-/2年
(Killed whole-cell-recombinant B subunit vaccine; Dukoral(SBL))

Reference:
International Tavel and Health (WHO 1994)
Jay S, et al. Travel Medicine (Mosby- Year Book; June 2008)


ワクチン接種間隔:
- 不活化ワクチンと不活化ワクチン
CDC: 同時接種もしくはどの間隔でも接種可能
厚労省:不活化ワクチンを接種した日から、次の接種を行う日までの間隔は6日間以上置く。(予防接種ガイドライン等検討委員会

- 不活化と生ワクチン
CDC:不活化ワクチンはどのワクチンであっても干渉するエビデンスがないため、 同時接種もしくはどの間隔でも接種可能
厚労省:生ワクチン接種後には干渉を防止するため27日以上の間隔をあける、不活化ワクチンであれば6日以上

- 生ワクチンと生ワクチン
CDC:ワクチン同士の干渉を避けるためには少なくとも4週間 or 30日以上の間隔をあけることが望ましいが、同時接種も可能
麻疹ワクチンの後の黄熱ワクチン、腸チフス生ワクチン等の経口生ワクチンに関してはどの間隔でも接種しても問題ない
厚労省:生ワクチンを接種した日から、次の接種を行う日までの間隔は27日間以上置く。(予防接種ガイドライン等検討委員会

- その他
不活化ワクチンに免疫グロブリンとの干渉はない
生ワクチン接種後に免疫グロブリンを使用する際には2週間以上の間隔をあける
免疫グロブリンを使用後に生ワクチンを接種する際の接種間隔は使用した免疫グロブリン量により異なる

- 同時接種
一般的にワクチンの同時接種による相互干渉で免疫原性の低下は生じない Pediatr Infect Dis J. 1994
一般に使用されるワクチンの同時接種により副反応が増加したり重症化したりすることは一般にない [CDC MMWR General Recommendation of Immunization 2006]
厚労省:二種類以上の予防接種を同時に同一の接種対象者に対して行う同時接種(混合ワクチンを使用する場合を除く。)は、医師が特に必要と認めた場合に行うことができること。(一類疾病の予防接種実施要領
別のワクチンを同時に接種する場合は、局所反応が重複しないように1-2インチ(2.5-5cm)以上の距離を置いて接種する(Vaccines 6th edition)。局所反応を観察するには逆の側の四肢を利用することが望ましいと考えられる。
免疫グロブリンを含む注射薬との併用は不活化ワクチンは問題ないが生ワクチンは避ける必要がある
複数の経口の生ワクチン(例えば腸チフスとロタウイルスワクチン)を同時に接種することは特に問題なくどのタイミングでも(4週間間隔でなくても)接種できる
黄熱ワクチンとの干渉作用は非経口不活化コレラワクチンとは3週間間隔をあける必要があるが、経口不活化ワクチン(Dukoral®)との問題はなし
[Lancet. 1973 Mar 3;1(7801):457-8.]

英国では、BCG、ロタウイルス、経鼻インフルエンザ、経口腸チフス、黄熱、水痘、MMRの生ワクチンは、黄熱とMMR、水痘とMMR、ツベルクリン検査とMMRの組み合わせを除いて、接種間隔に注意せずに接種が推奨されている。(Revised recommendations for the administration of more than onelive vaccine, 2015


筋肉注射
接種部位:2歳までは大腿前外側部、2歳以降は上腕三角筋
直角に挿入する針の長さ:新生児は約15mm, 1ヵ月以降は約25mm, 体重が60-90kgがれば30mm, 90kg以上なら35mm

皮下接種
接種部位:上腕三頭筋の上
挿入角度45度

Q. 予防接種時に逆血確認のための吸引操作をする必要があるか?
A. 適切な部位に適切な針を用いて行う予防接種は筋肉注射であっても皮下注射であっても、吸引操作をする必要性はない。操作により被接種者の苦痛が増す可能性がある。

下記のreview論文では、直接比較で利益や不利益を明確に示した報告はないので、どちらかでなければならないとする結論はないとした上で、静脈注射を除く筋肉注射及び皮下注射については、必要性がないであろうことを示す根拠は十分としている。
There is ample evidence that suggests that aspiration may not be required for IM and SC injections
Aspiration in injections: should we continue or abandon the practice?

また、CDCの推奨では、適切な場所で適切な針を用いて行う予防接種では損傷する可能性のある大きな血管はなく、痛みが増強する可能性があるので、吸引の必要性はないとしている。
Aspiration before injection of vaccines or toxoids (i.e., pulling back on the syringe plunger after needle insertion but before injection) is not necessary because no large blood vessels are present at the recommended injection sites, and a process that includes aspiration might be more painful for infants.
General Best Practice Guidelines for Immunization: Best Practices Guidance of the Advisory Committee on Immunization Practices (ACIP)
上記の引用論文はPediatrics, 1997

英国のグリーンブックでも同様に予防接種で吸引は必要ないとしている。
It is not necessary to aspirate the syringe after the needle is introduced into the muscle.
Immunisation procedures


授乳
生ワクチンであっても不活化ワクチンであっても、天然痘(small pox)及び黄熱のワクチンを除いて授乳に影響はなくワクチン接種の禁忌とはならない
生ワクチン接種によりウイルスは体内で増殖するが、ほとんど母乳に分泌することはない
風疹ウイルスは母乳に分泌されることがあるが、たいてい乳児に感染を起こすことはなく、感染を起こしたとしても弱毒化されているため経過良好である

ステロイド
ステロイドの免疫抑制効果は様々であるが、PSL換算で2mg/kg以上もしくは20mg/day以上のステロイドが2週間以上使用されている場合は生ワクチンの接種は免疫不全者と同様に禁忌と考えて良い(pinkbook 2011)
上記以下のステロイド使用の場合(短期使用、低容量使用、短期作用型ステロイドの隔日使用、置換療法、目や皮膚への局所的な使用等)はステロイド使用は禁忌とならない
渡航が必要な場合には、禁忌証明を発行して蚊に刺されないように対策をしっかり説明しておく必要がある
生ワクチンを接種する場合にはステロイド治療を中止して少なくとも1ヶ月間は期間をあける必要がある
[CDC. General recommendations on immunization: recommendations of the Advisory Committee on Immunization Practices (ACIP). MMWR. In press.]

免疫グロブリン
生ワクチンに関しては、免疫グロブリンの注射などにより、既に体内に抗体がある(受動免疫)と、その注射によって獲得された免疫が反応してしまい、自分の力で抗体を産生する過程(能動免疫)が妨げられてしまうため、接種間隔をあける必要がある。免疫グロブリンを使用した後、どの程度の期間、生ワクチンの接種を控える必要があるかどうかについては、接種した免疫グロブリンの種類(半減期)や量などによっても異なる。多くの場合は3ヵ月以上、長い場合は1年近く生ワクチンの接種に影響を及ぼすこともある。
ただし、
RSウイルスに対するモノクローナル抗体(シナジス)や抗体を取り除いた洗浄赤血球の輸血による影響はないとされ、不活化ワクチンの接種についても免疫の干渉を理由に接種間隔をおく必要なし。
逆に生ワクチンを接種後に免疫グロブリンを使用する場合には、接種したワクチンによる免疫獲得の過程に干渉しないように、2週間以上の期間を置く必要がある。 
[Vaccines 6th edition] 


10mg/day未満または総量700mg未満のステロイド使用では感染のリスクは上昇しないとする報告あり
[Rev Infect Dis. 1989 Nov-Dec;11(6):954-63.]

免疫不全者と不活化ワクチン:
不活化ワクチンは禁忌とならないが、免疫を正常に獲得できるかどうかに関しては不明確
肺炎球菌ワクチン、インフルエンザワクチン、Hibワクチン、髄膜炎菌ワクチン等は免疫不全者に対して接種が推奨される
免疫機能が正常化した場合には再度ワクチンを再度接種することも考慮する

[CDC MMWR General Recommendation of Immunization Jan 2011]


痙攣
発作後2-3ヶ月の経過観察(主治医判断で短縮可能)
[予防接種に関するQ&A 2010 細菌製剤協会]

 

VPDで死亡している5歳未満の小児の推計(WHO, 2013) 予防できる感染症による死亡
 


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