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海外ワクチンの特例承認について

2020-08-29 | Vaccine 概要

特例承認は、緊急事態に備え、薬事法上、承認審査の手続き(第14条)を簡素化する特例承認の規定(第14条の3)が設けられている。
要件は下記の通り

  1. 国民の生命及び健康に重大な影響を与える恐れのある疾病のまん延防止のため、緊急に使用する必要があり、他に代替措置がない
  2. 日本と同等に医薬品の品質が制度的に担保されている外国で製造販売等が認められていること(特例承認)
第十四条の三
第十四条の承認の申請者が製造販売をしようとする物が、次の各号のいずれにも該当する医薬品又は医療機器として政令で定めるものである場合には、厚生労働大臣は、同条第二項、第五項、第六項及び第八項の規定にかかわらず、薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて、その品目に係る同条の承認を与えることができる。

一  国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがある疾病のまん延その他の健康被害の拡大を防止するため緊急に使用されることが必要な医薬品又は医療機器であり、かつ、当該医薬品又は医療機器の使用以外に適当な方法がないこと。

二 
 その用途に関し、外国(医薬品又は医療機器の品質、有効性及び安全性を確保する上で本邦と同等の水準にあると認められる医薬品又は医療機器の製造販売の承認の制度又はこれに相当する制度を有している国として政令で定めるものに限る。)において、販売し、授与し、並びに販売又は授与の目的で貯蔵し、及び陳列することが認められている医薬品又は医療機器であること。

2  厚生労働大臣は、保健衛生上の危害の発生又は拡大を防止するため必要があると認めるときは、前項の規定により第十四条の承認を受けた者に対して、当該承認に係る品目について、当該品目の使用によるものと疑われる疾病、障害又は死亡の発生を厚生労働大臣に報告することその他の政令で定める措置を講ずる義務を課することができる。

特例承認の前例
新型インフルエンザ対策本部の決定に基づき、2009年の新型インフルエンザ(A/H1N1)に適用された

  • 2009年10月・11月に申請が行われ、11月に「薬事法第14条の3第1項の政令で定める医薬品等を定める政令」を制定
  • 2009年12月の薬事食品衛生審議会医薬品第二部会及び2010年1月の同審議会薬事分科会の意見を聴いた上で、特例承認が決定された
  • 同製剤のカナダ(GSK)やドイツ(ノバルティス)において販売等が認められていたこと、当時に多数の累積患者報告数、入院患者数 、死亡者数が推計されていたこと、ワクチン接種以外の代替措置が考えられなかったことなどが要因となった
特例承認された輸入ワクチンは、薬事法の第14条の製造販売の承認を受けたものであり、PMDA法に基づく医薬品副作用被害救済制度の対象とされる
2009年の新型インフルエンザ予防接種については、国が実施主体として臨時応急的に実施したものであり、医薬品副作用救済制度の対象とはならない「接種行為そのものに起因する健康被害」についても救済対象とするため、「新型インフルエンザ予防接種による健康被害の救済等に関する特別措置法」を設け、予防接種法に準じた給付が行われた。

PMDA法
第4条5・6
許可医薬品」とは、薬事法第二条第一項 に規定する医薬品であって、同法第十二条第一項 に規定する医薬品の製造販売業の許可を受けて製造販売をされたもの(同法第十四条第一項 に規定する医薬品にあっては、同条 又は同法第十九条の二 の規定による承認を受けて製造販売をされたものに限る。)をいう。ただし、次に掲げる医薬品を除く。
一  がんその他の特殊疾病に使用されることが目的とされている医薬品であって、厚生労働大臣の指定するもの
二  専ら動物のために使用されることが目的とされている医薬品その他厚生労働省令で定める医薬品

医薬品の副作用」とは、許可医薬品が適正な使用目的に従い適正に使用された場合においてもその許可医薬品により人に発現する有害な反応をいう。

第15条  
機構は、第三条の目的を達成するため、次の業務を行う。
一  医薬品の副作用による健康被害の救済に関する次に掲げる業務
イ 医薬品の副作用による疾病、障害又は死亡につき、医療費、医療手当、障害年金、障害児養育年金、遺族年金、遺族一時金及び葬祭料の給付(以下「副作用救済給付」という。)を行うこと。
ロ 次条第一項第一号及び第二号に掲げる給付の支給を受ける者並びに同項第三号に掲げる給付の支給を受ける者に養育される同号に規定する十八歳未満の者について保健福祉事業を行うこと。
ハ 拠出金を徴収すること。
ニ イからハまでに掲げる業務に附帯する業務を行うこと。

1961年に実施されたポリオ生ワクチンの緊急輸入について

  • 1950年代後半にはポリオの患者数は1000-2000人で推移していたところ、1960年には北海道での流行を契機に全国各地で大流行が生じた。
  • 1960年には5606人(317人の死亡)、1961年の春までに2436人の患者が報告されたとされる。
  • 1961年1月より「ポリオ緊急対策要領」(閣議了解)による推奨接種(不活化ポリオワクチン)が、同年春から予防接種法改正によって定期接種として開始されたが、ワクチン不足等の理由により実効性が低かった
  • 1961年7月、ポリオの大流行による世論の高まりを受け、厚生大臣の判断でソ連とカナダから開発されて間もない経口生ワクチンを薬事法に基づかない形で1300万人分緊急輸入し、乳幼児・小学生の子どもに1カ月間で一斉接種(ブランケットオペレーション)を実施した。
日本と同等に医薬品の品質が制度的に担保されている外国
2020/5/2に新型コロナウイルス感染症に係る医薬品を特例承認するため、所要の改正を行われ、アメリカ合衆国、英国、カナダ、ドイツ又はフランスと定義された。



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