蜜柑のつぶやき ~演出家の独り言~

NPO法人劇空間夢幻工房の演出家/青木由里の日々の呟き。脚本執筆・役者・ワークショップ講師も兼業する舞台人日記♪

言葉が通じないとしたら・・・

2014年04月25日 21時23分17秒 | 日記
連日、座内発表会の稽古が続いている。

準劇・研修生は基本的に週1回の稽古と
MA参加が条件となっている。

が、公演前は稽古回数は増え
時には連日になる場合もある。

週1回だと、忘れちゃうんだよね。
自宅で常に作品や演技のことを考えたり
自主稽古を出来る場所があれば良いけれど
それが可能なメンバーはいない(と思う)

今回の座内発表会は、稽古時間が不足気味。
入団してから半年程度のメンバーも多く
演技の基礎を学んでいる段階。

感情の振れ幅や、空間感覚を始め
言葉のキャッチボールやコミュニケーションなど
課題は山積みのメンバーたち。

今回の座内発表会作品「もも」は
異民族との対立が軸にある。

構成・演出のケンジ君は
「鬼」と呼ばれている民族の言語を
ジブリッシュ語にすることに決めた。

ジブリッシュ語とは、簡単に言うと
メチャクチャ言葉。
伝達するために発達した言語を排除し
感情と身体表現(ジェスチャー)だけを用い
他者に思いや考えや状況を伝えるのは至難の業。

それに挑戦しようというのだ。

言語が通じない相手でも
お互いに伝えたい、受け取りたいという欲求があれば
伝わるかもしれない…

必死で伝えようとすること
必死で受け取ろうとすること

これは、役者が演じる上で大切なこと。

この発表会の目的は、役者陣の演技力向上。
そう考えると、ぴったりかもしれない。

とは言え、お客様に足を運んでいただくのだから
楽しんでいただけないと申し訳ないものね。

そんなわけで、今週は本番前の最後の追い込みとなった。

昨日の稽古後、ケンジ君に以下のような話をした。

 自然に言葉や感情が湧き出るのを待って良いケース
 ①役者の想像力が演出の意図する世界を上回っているとき
  あるいは近いラインに至っているとき。
 ②役者がその役の置かれた状況に近しい体験
  あるいは演技(映画や舞台)の記憶を持っているとき。

記憶も想像力も不足しているとしたら
まずはそこを徹底的に追究して
獲得してもらわねばならない。

自分自身の記憶や体験なんてたかがしれているー

ということを、役者がまず認識することが肝要。

認識すれば、獲得するために必死で研究するし
良い芝居を観ようと本気で思うようになる。

想像力の喚起は、色々な物を観て、聴いて
たくさんの本を読み想像することで養われる。

想像と記憶と体験を下敷きにして
役のイメージを膨らませていく。
そのイメージに近づけるために
スキル(声・身体)が必要になる。

人間、必要に迫られなければ本気になれないんだよね。

今回の発表会を通して、準劇・研修生のみんなが
一つでも本気で「必要だ」と思うことを
発見出来るように…と、心から祈る。

ケンジ君は、演出という立場に立ったことで
舞台において役者がどれだけ大切か再認識した様子。

公演の本番は、役者とスタッフに全てを委ね
演出はただじっと見守るのみ―だもんね~


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