蜜柑のつぶやき ~演出家の独り言~

NPO法人劇空間夢幻工房の演出家/青木由里の日々の呟き。脚本執筆・役者・ワークショップ講師も兼業する舞台人日記♪

劇空間夢幻工房 創立25周年記念公演「ISHIN version.2024」

NPO法人劇空間夢幻工房 創立25周年記念公演
タイトル 『ISHIN ~狼たちは最果てに~ version.2024』
脚本・演出 青木由里
出演 青木賢治/栗生みな/村松沙理亜/清水まなぶ/井田亜彩実/導星ゆな 他

日時 2022年9月8日(日)11:00~/15:30~
会場 飯山市文化交流館 なちゅら 大ホール
チケット予約フォーム:https://www.quartet-online.net/ticket/ishin2024

皆さまへ感謝を込めて晴れやかに開催‼
どうぞお楽しみに‼

雨を汚したのは誰?

2008年10月29日 23時48分20秒 | 日記
♪~

  あたり一面に 小雨が降りそそぐ
  その妙なる響きに 草は頭をもたげる
  ほんの少しの雨 ほんの少しの雨
  あの人たちは 雨に何をしたのか

  雨の中に立っていた 小さな男の子
  優しい雨は 何年も降り続いた
  いつか草は枯れ 男の子も消えた
  とめどない涙の様に 雨は降り続く
  あの人たちは 雨に何をしたのか

                           ~♪

昨日、千石劇場で上映中の

  『花はどこへいった』  (監督/坂田雅子)
   ~ベトナム戦争のことを知っていますか~

を観に行った。
上記は、この映画のオープニング挿入歌。
心に染み入るような音楽・・・。

始まりからカウンターパンチをくらったような衝撃だった。

坂田さんの夫グレッグ・デイビス氏は
ベトナム戦争当時、米軍兵としてベトナムに駐在。
兵役を終えてからは米国から亡命し
フォト・ジャーナリストとして東南アジア始め各地を飛び歩く。
権力を疑い、批判的な眼をもって
真実に迫ることがジャーナリストの役割であると信じて・・・

グレッグは、ベトナム戦争で枯葉剤を浴び
その影響で、54歳という若さで
肝癌によりこの世を去った。

坂田さんは愛する夫を失い

  あの人はどこへ行ったの?

と自問自答しながら
彼の死因が枯葉剤と知り
ベトナムで起きた事実を知ろうと
グレッグの足跡を辿る旅をしながら
自らの目と手と足で、この映画を完成させた。

ベトナムで彼女が目にしたのは
たくさんの数え切れないほどの
残酷な運命を背負った人々の姿。

米国が撒布した枯葉剤、中でも
特にダイオキシン濃度が高いエージェント・オレンジは
第三世代の子どもたちにまで重い障害を背負わせている。

人類が生み出した恐ろしいダイオキシンという劇毒薬。

私にとって、ベトナム戦争は原風景・・・
小学生のときニュースで見た映像が
時折、脳裏に鮮明に蘇る。

実は、数年前、この枯葉剤とマングローブの森
そしてシャム双生児が登場する一本の舞台を
作ろうと思ったことがある。

当時はまだ力量不足で、皆さんの目には触れず
お蔵入りになった作品だが
そのときに、今回の映画の中で取り上げられている
大半の事実は調べてあったため
新しい情報は少なかった。

けど、オープニングとエンディングの歌に心が揺さぶられ
坂田さんのグレッグに対する深い愛情や
ベトナムの残酷な障害を持つ子どもを
笑顔で介護する家族たちの姿を観て

  人間も捨てたモンじゃないよね・・・

と、涙が零れ落ち、静かな感動を覚えた。

その一方、何の罪もない人々が枯葉剤を浴びたがために
40年近くもたった現在においても苦しみ続けている状況に

  戦争は敵国を倒すのが第一目的だってのはわかる。
  広大な土地に散在するゲリラを倒すのと
  補給路を絶つのが目的だったって言うけど
  本当にこれしか方法がなかったの?
  自然を破壊し汚染し、罪のない人々を苦しめるような
  こんな方法しか、本当になかったの?・・・
  
・・・どうしようもない怒りと悲しみが込み上げて来た。

  製薬会社と政府が取引をしていたんじゃないの?
  日本でもあったよね、○○○○○事件・・・

人間捨てたモンじゃない、と言う声と
何て愚かなんだ、と言う声が、私の脳内で戦っている。

ホルマリン漬けの子どもたちの映像は
一際強烈だった。

  事実を知らせるには、ここまでしなければならないのか・・・

真実を知るためとは言え、正視するのを拒む自分がいる。

  目をそらしてはダメだ。
  これが現実、現実から目をそらしたら
  真実を知ることは出来ない。

そんな独り言を心で呟きながら、映像を見続ける―

  いつになれば 人は学ぶのだろう

これは、エンディングの曲の歌詞。

胸に突き刺さる歌だった―



友人からこの映画を紹介されてチケットを購入。
うちの団員たちもほぼ全員、観に行きたいとチケットを入手。

まだみんなから感想は聞いていない。
若い団員は、この映画を観てどう感じたのだろうか?

今週土曜日の稽古でこの映画について
ディスカッションをしてみよう。