秋田でアクティブに活動

学習支援,無償学習塾,イベント運営,アプリ作成,趣味 … などの活動内容ブログです。

マツダ株式会社 赤色へのこだわり

2018-11-04 20:55:00 | 雑学
マツダ株式会社(以下、マツダ)では、情熱や信念を持って車づくりに取り組み、その想いを「」という力強い色で表現するのが相応しいと考え、「赤色」の開発にこだわっています。マツダでは昔から、デザインの初期段階から、生産技術、技術研究所、ボディ設計が共同で活動を進めています。彩度感と陰影感を両立した「赤色」へのこだわりも、長年に渡りデザイナーとエンジニアが共有しています。
この赤色は現在「ソウルレッド」として販売展開されていますが、この色の開発には、一般的な色開発の2倍以上にあたる5年を超える年月をかけて磨き上げています。


1.赤色への挑戦
「色も造形の一部」と捉えたときに、圧倒的な存在感を表現するために彩度感と陰影感を両立させることは必要不可欠であり、チャレンジ要素が高い課題でした。従来手法にとらわれず、そして量産車への適応を急がずに、多様な色をトライアルする実験を行いました。
一つのトライアルとして、職人が磨いた金属の上に赤いクリア層だけを塗ることを思いつき、これを試したところ、陰影感と透明感を兼ね備えた大変好評なサンプルが出来上がりました。しかし、車を製造するには錆止めや中塗り(塗料を付着させるための工程)が必要になることから、サンプルをそのまま適応することはできません。さらなる試行錯誤の末に、「下地として金属に近いシルバーを塗布して色を重ねる」というソウルレッドへのアイディアに到達しました。

2.量産化に向けて
車の製造過程を考慮すると、安定的に1ヶ月に何千台というペースで塗り上げつつ、耐久性,実用性といった商品としての品質も確保しなければなりません。このような条件下で彩度感と陰影感を表現するには、技術的なハードルがかなり高くなります。さらに、一般的な色の性質として、彩度感を上げると陰影感が下がり、陰影感を上げると彩度感が下がることから、通常の方法ではこれらを両立することができません。



これを実現するために、アルミフレークを規則正しく配置した反射層の上に、鮮やかに発色する透過層を配置する工法を開発しました。アルミフレークの並び,顔料の量や膜厚を調整しながら、彩度感と陰影感を両立させる塗膜構造となるように光学特性を用いて分析し、ソウルレッド特有の色合いを目指しました。
一般的な3コートマイカ(マイカとは「雲母」という鉱物のこと)塗装は、カラー層の上に反射層を塗り重ねますが、ソウルレッドは、この重なりを逆にしています。ソウルレッドは、最下層に高輝度のアルミフレークを規則正しく配置し、第二層に光を受けて鮮やかに発色する半透明のカラー層、表面層に透明感を際立たせるクリア層を重ねています。



最下層のアルミフレークに反射した光が二層目のカラー層を通過することにより、鮮やかな赤色を表現します(ハイライト部)。光の反射がないときには最下層と二層目の色が重なり合い、深みのある赤色を表現します(シェード部)。



また、アルミフレークを規則正しく配置することで、光を均一に反射させることができます。



見る角度や光の当たり方(時間帯)の条件により、様々な色合いを演出します。このように、わずか100ミクロン単位の世界の中に、彩度感と陰影感を両立するための技術的英知が凝縮されています。

3.塗布の難しさと新システムの開発
テストピース1枚を塗布するのは難しいことではありませんが、ボディ全体を均一に塗布するとなると別次元の難しさになるそうです。
なぜそれを実現できたのか…? その背景に、マツダが長年培ってきた塗装技術の蓄積があります。
職人が塗布する場合は、塗った結果を見て何度も微調整しながら塗り重ね、相当な時間をかけて仕上げていきます。しかし、量産化が求められるロボットでは、同じ手法で塗布することはできません。同様の出来栄えとなるように、ロボットの軌跡を何度もシミュレーションして塗布の最適化を行いました。各パーツのエッジ部分(ドアとドアの間,ボンネットの先端部分など)には塗料が集まり、膜厚が厚くなる性質があります。ここを均一に塗布することは難しいそうですが、それを実現するために、塗布する角度や順序、塗料を止めるタイミングなどを正確に行うことができる制御システムも新たに開発したのです。このように、職人が塗り上げる緻密な質感をロボットで再現した「匠塗 TAKUMINURI」という技術を確立しました。
こうして完成した「ソウルレッドプレミアムメタリック」は、一般社団法人 日本流行色協会が主催するオートカラーアワード2013(自動車のカラーデザインコンテスト)にて「オートカラーデザイナーズセレクション エクステリア部門賞」を受賞しました。

4.更なる進化へ
マツダでは新しいボディカラー「ソウルレッドクリスタルメタリック」を新開発し、2017年2月より日本で発売された「マツダ CX-5」に初採用しました。従来の「ソウルレッドプレミアムメタリック」より、彩度を約2割,深みを約5割増したことで、より瑞々しく艶やかな透明感を実現しました。
透過層には、新開発の高彩度な赤色の顔料を用いることで、赤色をよりピュアに発色させています。反射・吸収層には、極薄の高輝度アルミフレークおよび、光を吸収してシェードの濃さを強める「光吸収フレーク」を採用しています。より緻密に光の反射をコントロールできるようになり、ハイライトの鮮やかさとシェードの深みを大幅に向上させました。



5.あとがき
マツダでは、車を単なる鉄の塊ではなく、「命あるもの」だと考えています。デザインテーマ「魂動(こどう)- SOUL of MOTION」の下、これまで生命感溢れる車を開発してきました。今後も、造形美にも力を入れた製品開発に期待したいです。

出典
MAZDA デザインブランド
【ソウルレッド】カラーデザイナーが語る『赤』へのこだわり ~前編
【ソウルレッド】カラーデザイナーが語る『赤』へのこだわり ~後編
【ソウルレッド】エンジニアが語る「量産化」への挑戦 ~前編
【ソウルレッド】エンジニアが語る「量産化」への挑戦 ~後編
マツダ、魂動デザインを象徴する新しいボディカラー「ソウルレッドクリスタルメタリック」を開発
【人とくるまのテクノロジー展:その2】マツダは色にこだわり、スバルは世界共通PFを公開!
一般社団法人 日本流行色協会


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。