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信州里山通信。自然写真家、郷土史研究家、男の料理、著書『信州の里山トレッキング東北信編』、村上春樹さんのブログも

万葉集にも詠われた合歓の木の花。天女の羽衣雪ノ下。山紫陽花と虫取り撫子。ミナミヒメヒラタアブ、ヤマトシジミ、ベニシジミ。(妻女山里山通信)

2023-07-04 | アウトドア・ネイチャーフォト
 梅雨の晴れ間。前日も晴れでしたがかなりの降雨だったので翌日にしました。信州の里山は葉が生い茂り鬱蒼としてきました。鞍骨山に向かうという方と邂逅。しばらくお話をしました。淡竹の筍の季節が終わったので鏡台山からツキノワグマはもう下りてきませんが、オオスズメバチやチャイロスズメバチは要注意。万一刺されたときに備えてポイズンリムーバーは必携です。イノシシのオスも油断できません。運が良ければニホンカモシカに出合えるでしょう。

 ネムノキ(合歓木、合歓の木)マメ科ネムノキ亜科の落葉高木。夜になると小葉が閉じて垂れ下がる就眠運動を行うことで眠る木。
「昼は咲き 夜は恋ひ寝(ぬ)る 合歓木(ねぶ)の花 君のみ見めや 戯奴(わけ)さへに見よ」 紀女郎(きのいらつめ) 『万葉集』巻八1461
(昼に咲いて、夜には恋しい想いを抱いて寝るという合歓の花を私だけに見させないで。君もここに来て見なさいな):紀女郎が大伴家持に贈った歌ですが、紀女郎は年上の人妻で、戯奴というのは目下の人を呼びかける言葉だそうです。人妻が若者をからかったのか、誘ったのか。背景を知ると、なんとも意味深な歌です。

 ネムノキは高さ10m以上になります。花は葉の上に咲くので、下からはよく見えません。ここは林道下の斜面に根本があるので間近で見られます。化粧の刷毛の様でもあり、線香花火の様でもあり。繊細な花です。なんとも形容し難いかすかに甘い香りがします。赤松と同様に排気ガスには弱く、我が家の山の大木は高速道路ができたら数年で枯れました。葉は合歓皮(ごうかんひ)といって漢方薬です。利尿、強壮、鎮痛、腰痛、打ち身、腫れ物、水虫、手荒れ、精神安定などに効くそうです。貝原益軒は「この木を植えると人の怒りを除き、若葉を食べると五臓を安じ、気をやわらげる」と記しています。
「象潟(きさかた)や 雨に西施(せいし)が ねぶの花」松尾芭蕉 西施は、中国の春秋時代の呉を滅ぼした傾国の美女。その越に滅ぼされた呉のエリートたちが日本に渡来して弥生時代を作ったのです。その後、越も滅ぼされ、また日本に渡来します。詳しくは下のリンク記事を。
中国正史の書を読む梅雨空の好日。『中国正史 倭人・倭国伝全釈』『中国正史の倭国九州説 扶桑国は関西にあった』『西暦535年の大噴火』(妻女山里山通信)
「合歓咲く 七つ下りの 茶菓子売り」小林一茶 江戸の八丁堀の合歓の木が咲く小腹が空く午後4時頃に、茶菓子売りの声が聞こえる様。どんな茶菓子だったのでしょう。茶饅頭か、夏だから水菓子か。

 ヤマアジサイ(山紫陽花)。別名は、サワアジサイ。周辺は装飾花で、中心部は両性花。ガクアジサイに比べると、花の色が色々あります。万葉集の二首。
「言問はぬ木すら味狭藍(紫陽花) 諸弟(もろと)らが練の村戸(むらと)にあざむかえけり」(大伴家持 巻4 773)
  (恋を語らない木ですら、紫陽花のように移ろいやすい。巧みな言葉に私は騙されてしまいました。)
「味狭藍(紫陽花)の 八重咲く如 やつ代にを いませわが背子 見つつ思はむ(しのはむ)」(橘諸兄 巻20 4448)
  (紫陽花が八重に咲くように、ますます長い年月を生きてください。紫陽花を見ながらあなたをお慕いします。)

 ミナミヒメヒラタアブがドクダミで吸蜜しようとホバリング。これは複眼がくっついているのでオスですが、体長が8-9ミリしかないので、まず見つけるのがひと仕事。小さすぎて羽音もしません。胸部と腹部の間の両側に小さなヘラ状の突起が出ています。昆虫は4枚の翅を持っていますが、ハエ目の昆虫は2枚です。これは後翅が退化して平均棍という飛翔の際にバランスをとるための器官に変化したものです。

 ユキノシタ(雪の下・虎耳草・鴨脚草・鴨足草・金糸荷)ユキノシタ科ユキノシタ属。羽衣を着た天女の様な可憐な花です。切り傷の化膿、やけど、中耳炎、扁桃腺、腫れ物、健胃、解毒、解熱、鎮咳、心臓病、腎臓病などの薬草です。葉は天ぷらで。もちもちとした歯ごたえで特に美味でもありませんが、体には良さそう。

 子供の頃はネバネバ草と呼んでいました。ムシトリナデシコ(虫取り撫子)ナデシコ科の越年草。別名は、ハエトリナデシコ、コマチソウ、ムシトリバナ。ヨーロッパ原産の帰化植物で、江戸時代に観賞用として移入されました。学名 Silene armeria Sileneのシレネは、ギリシャ神話の酒の神バッカスの養父の名にちなむもの。茎の茶色の部分が粘るのですが食虫植物ではなく、受粉することなく密だけ食べに来るアリを防ぐものといわれています。

 カタバミにヤマトシジミ(大和小灰蝶、大和蜆蝶)。幼虫の食草がカタバミなので、その周辺で見られます。陣場平へも行きましたが何もいません。そこで急遽、茶臼山自然植物園へ向かうことにしました。最近リニューアルして大人気の茶臼山動物園のゲートの横を進んで植物園の最上部にある駐車場へ。ここは穴場です。

 茶臼山自然植物園のイングリッシュガーデンの様な一角。個人的にはこういうガーデンをトップクラスのガーデナーを呼んでもっと大きく作って欲しいと思います。訪れる人も増えるでしょう。今日は、なかなか蝶や甲虫が見られません。オオムラサキもいませんでした。オオヒカゲとコミスジぐらい。たくさん咲いている白い花は、ガウラといい北アメリカ南部原産。和名は、白い蝶が飛んでいる様なことから白蝶草。

 やっと見つけたのはルリシジミ(瑠璃小灰蝶)。ヤマトシジミに似ていますが、目が真っ黒です。翅の表面は水色から明るい青紫色。瑠璃色ということでルリシジミ。春先から晩秋まで、山地から田畑、人家周辺でも見かけます。幼虫はバラ科、マメ科、ブナ科植物の蕾や花を食べます。

 フランスギク(仏蘭西菊)で吸蜜するベニシジミ(紅小灰蝶)。 幼虫の食草は、スイバ、ギシギシなど。地表近くを飛び、わりとすぐに止まるので撮影しやすい蝶です。

 メスグロヒョウモンのオスでしょうか。それともオオウラギンスジヒョウモンのオスでしょうか。ちょっとこのカットでは同定できません。ツマグロヒョウモンのメスも舞っていましたが撮影できず。

 これはまた随分と翅の色が抜けたヒョウモンチョウの仲間。コヒョウモンかしら。違いますね。同定不可。

 上の2つが吸蜜していたのがこの植物。クガイソウに似ていますが、ヒメルリトラノオ。ヨーロッパ~北アジア原産のベロニカ・スピカータの小型品種です。

 キキョウ(桔梗)キキョウ科の多年生草本植物。根を生薬で桔梗根といい、去痰、鎮咳などの薬効があります。夏から咲きますが秋の七草で、山上憶良の「七種の花」の歌「萩の花 尾花葛花 撫子の花 女郎花 また藤袴 朝顔の花」の朝顔が桔梗であるとの説があります。

 振り返ると丸太小屋の展望台(休憩所)。手前の黄色い花は、北米原産のルドベキアの一種。草丈が180センチぐらいあります。別名は松笠菊。

 展望台から見る善光寺平。左奥に根子岳と四阿山。手前に奇妙山。右奥は保基谷岳、手前は皆神山。日向は灼熱ですが、日陰は湿度が低いので快適です。手前に咲く白百合は、ニワシロユリ。バルカン半島および西アジアを原産とするユリで、バチカン市国の国花です。英名はマドンナリリー。草丈2mぐらいになります。日本のテッポウユリの仲間。

 7月8日、今年も庭にツマグロヒョウモン(褄黒豹紋)のメスがやってきました。赤と黒の鮮やかな幼虫の食草はスミレ類やパンジー、ビオラの葉。南方系の蝶で、昔はいなかったのですが、今では真夏の信州の亜高山でも見られます。

「ニラの挟みおやき」具はニラ7割、新玉葱3割をみじん切りに牛豚合いびき肉。信州糀味噌と鰹出汁と炒り粉をゴマ油で練る。皮は幻の小麦粉、伊賀筑後オレゴンにとろろ、卵、炒り粉に水入れて柔らかめに。とろろを入れると柔らかく上品な仕上がりに。冷めても固くなりません。やや多めのゴマ油と綿実油で蓋をして片面6分ずつ中弱火で焼くとできあがり。具をむきエビにして、豆板醤、甜麺醤、牡蠣油、中華出汁にすると、中華風エビニラおやきになります。

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