落葉松の葉もほとんどが落ちて、森の地面は日本の伝統色でいうと朽葉色(くちばいろ)*に染まっています。そのため落葉松林の中は、冬のどんよりとした寒空とは対照的に、自然林の中より明るいのです。例年になく遅くまで出続けた紫占地も終わり、きのこ狩りに訪れる人もいなくなりました。これからは狩猟シーズンで、雉撃ちや猪狩りのハンターが現れます。
しかし、実は冬に出るきのこもあるのです。先日見つけたのは、出たばかりの小さな平茸と枯葉に埋もれるように出ていた榎茸(エノキタケ)です。榎茸というとスーパーで売られている淡いクリーム色のヒョロヒョロした例のものを思い浮かべるでしょう。ところが、天然の榎茸は写真のように似ても似つかぬ風貌で、風味もまったく違います。市販品はいわば榎茸のもやしのようなものなのです。この榎茸の人工栽培の発祥の地は、ここ松代町です。旧制屋代中学(現在の屋代高等学校)の教員であった長谷川五作の指導で始められたものです。
天然の榎竹の傘はぬめりが非常に強く、軸は天鵞絨状で黒っぽい色です。とても甘い香りがして、鍋や蕎麦、うどんに入れると絶品です。写真のものはまだ小さいのでもう少し大きくなってから採ろうと思います。紫占地は、二日ほどで幼菌から10センチぐらいに成長したりすることもあるのですが、榎茸は寒くなってから出るためか成長が遅いので、暖冬とはいえ採るのは年末ぐらいかもしれません。平茸も成長が遅そうです。来週は雪が降りそうですから、さらに成長が遅くなるかもしれません。
先日からぼちぼちと山仕事を再開しています。冬場は蛇や蜂の心配もないので(今年は4回も刺されました。)、安心して藪の始末ができるのです。落葉が終わると森の見通しがよくなって(ソヨゴ、カシなどの常緑樹やヤマコウバシ、一部のカシワ、クヌギの葉は残ります。)、新たな掛かり木や倒木が発見できます。集中豪雨や強風で、今年もあちこちで折れた大木が見られます。掛かり木の処理は大変危険なので、全てを始末することはできませんが、妻女山は一応観光地なので、訪れる人に危険のないように道路脇のものは徐々に始末しないといけません。先日は、道路上に落ちそうだった20m程の落葉松の掛かり木を落としました。
森から緑が消えてもよく見ると冬芽がもう準備できています。夏グミは、新しい枝と若葉を出しています。空木も新しい枝が出ていました。夏の間は見かけることがなかった日本羚羊も度々見かけるようになりました。いつも見かけていたマダムは見なくなりましたが、その代わり成長した子供をよく見かけるようになりました。母親が子供にテリトリーを譲ったのでしょうか。日本羚羊には、そういう生態があるのか興味が湧きます。
今日は雨、来週は雪になりそうです。本来なら上旬には月の輪熊も冬眠に入るのですが、今年はひょっとするとまだ活動しているかもしれません。そんな熊たちも眠る時間が徐々に増えて長い眠りにつきます。鬼の居いぬ間の選択ならぬ、熊のいぬ間の藪山探索とでもいいましょうか、この冬は鏡台山周辺の古道を探索してみようかとも思っています。
*朽葉色:日本の代表的な伝統色で、平安時代の貴族にもてはやされた 朽ちた落ち葉の色に似た褐色の黄橙色。黄色味が強い「黄朽葉」、赤色味の強い「赤朽葉」、青みの残る落ち葉を連想させる緑味がかった「青朽葉」などがあり、「朽葉四十八色」といわれるほど種類が多い。江戸時代の朽葉色は、ラセットブラウンやバーント・アンバー、バーントシェンナーの様な枯葉色ですが、平安時代の朽葉色は、もっと鮮やかな色といわれています。今回の場合は後者で、ややスモーキーな橙色という感じです。
★ネイチャーフォトは、【MORI MORI KIDS Nature Photograph Gallery】をご覧ください。キノコ、変形菌(粘菌)、コケ、花、昆虫などのスーパーマクロ写真。滝、巨樹、森の写真、特殊な技法で作るパノラマ写真など。トレッキング・フォトルポにない写真もたくさんアップしました。
★きのこ料理は、MORI MORI RECIPE(モリモリ レシピ)をご覧ください。色々あります。