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信州里山通信。自然写真家、郷土史研究家、男の料理、著書『信州の里山トレッキング東北信編』、村上春樹さんのブログも

キバネツノトンボ。体の構造と生態を観察する夏日の草原。複眼にダビデの星? 16都道府県でレッドリストに指定されている昆虫(妻女山里山通信)

2022-05-25 | アウトドア・ネイチャーフォト
 前回に続き、妻女山山系で希少なキバネツノトンボ(黄翅角蜻蛉)を追いました。アミメカゲロウ目ウスバカゲロウ科ツノトンボ亜科の昆虫で、16都道府県でレッドリスト(絶滅危惧種)に指定されている昆虫です。今回は二日間に渡る観察と撮影の記録です。摩訶不思議なことに遭遇しました。

 初日は夏日で湿度が低く、キバネツノトンボは10時前から群舞を始め、12時まで続きました。5枚目までは、その時撮影したあるオスの一匹です。前翅は透明で後翅より長くそのため翅を閉じると後翅の黒と黄色の模様がよく見えます。トンボはその透明な翅は、体重のたった2%しかありません。キバネツノトンボはそれよりは重そうですが、それでも甲虫よりは遥かに軽いと思います。

 オスの尾部には丸いハサミが見えます。これでメスの尾部を掴んで交尾をするのです。どの昆虫でもそうですが、すべてのオスやメスが交尾して子孫を残せるわけではないのです。人間含め哺乳類でもそうですが。

 このカットで分かるように、ハサミは別れていて開閉できます。

 よく見ると、口先の鋭い顎(あご)が出ていて何かをくわえている様にも見えます。

 普段は仕舞われている鋭い顎が出ています。赤茶色の物は捕らえた餌でしょうか。もうひとつはっきりしません。しばらく観察していましたが、咀嚼して飲み込む様子はありません。このまま飛び立っていきました。なんだったのでしょう。モヤモヤします。

 翌日。9時半ごろからオスとメスが一匹ずつ来ました。活性は低く草に止まっています。メスを追うことにしました。午後から雨の予報で湿度は高くなってきました。10時半頃に見限って陣場平に登り帰化植物の除去など保全作業を。正午には、千曲市から「ふるさと」、長野市から「子鹿のバンビ」のメロディが流れます。ハルゼミとエゾハルゼミの鳴くログハウスで昼食後に下山しました。

 動かないので頭と胸のアップ。毛むくじゃらです。トンボの背中とは構造が異なります。昆虫が翅を動かして飛ぶ構造は主に二つあり、トンボの翅は4枚が複雑な動きをしてホバリングや少しなら横移動、後退もできます。筋肉が4枚の翅の基部につながっていて、それぞれを別々に動かせます。これを直接飛翔筋型昆虫といいます。蜂のように、筋肉が翅ではなく外骨格につながっていて、筋肉を交互に収縮させて、外骨格全体を変形させて飛ぶのを間接飛翔筋型昆虫といいます。外骨格の反動を使うので1秒間に1000回以上の羽ばたきができるのです。

 複眼は二段になっていてその先のものにはダビデの星の様な模様が見えます。これはどういうことなのでしょう。画像検索しても、こういう画像はなかったので非常に不思議です。オオムラサキなどだと偽瞳孔という瞳に見える黒い点があるのですが、これはそれとも違います。これはマクロレンズで5センチぐらいまで近づいて撮影しています。ここまでアップにして初めて気づきました。なんじゃこりゃ。

 つぶさない様に気をつけて掴んで、口元を撮影しました。鋭い顎が見えます。足先の二つの鋭い爪も見えます。撮影を終えてすぐに草の茎に戻しました。危険を察知して飛び去るかなと思ったら、そのまま草にしがみついていました。以外に人に対する警戒心が薄いので驚きました。

 最後に止まったオスを撮影しました。オスはメスより一回り小さいのが特徴で、人気にはメスより敏感な様です。近づくとすぐに逃げます。午後1時ごろになると、何匹ものキバネツノトンボが現れ舞い始めました。午後から激しい雷雨になる予報なので私は帰りましたが、彼らの行動基準がよく分かりません。日向が好きで、草原でも日が当たる横20m、幅6m、縦4mぐらいの間で群舞しています。環境が変わればこのラブゾーンも変わるのでしょうけれど。
 実はずっとこの撮影をしているわけではないのです。いなくなったり、活動が活発すぎて撮影が不可能になったり。陣場平の里山保全作業もしないといけないので。そして、ほかの昆虫たちも色々出始めました。それは、次の記事でまとめて掲載します。発見すら困難なミナミヒメヒラタアブも。ゼフィルスも出始めました。里山の昆虫天国はこれからです。

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