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モリモリキッズ

信州里山通信。自然写真家、郷土史研究家、男の料理、著書『信州の里山トレッキング東北信編』、村上春樹さんのブログも

幻の大トチに会いに

2007-04-03 | アウトドア・ネイチャーフォト
昨秋の大菩薩峠以来の家族揃ってのトレッキングは、私の腰のリハビリもあって、わが家が何度も通う高低差の少ない「牛ノ寝通り」へ。長寿の里ゆずり原は、麓の桜が七分咲きぐらい。足元にはスイセンの花が咲き乱れていました。しかし、小菅村から139号線を松姫峠へと登り始めると、咲いているのはキブシとダンコウバイぐらい。木々の芽吹きもまだでした。

ところが当日はまれに見る暖かい日で、峠の朝7時の気温は、なんと11度。去年同じ日に長男と来たときには、マイナス2度だったのにと驚きました。歩き始めると背中に当たる朝日が暑く感じられるほど。けれども足元を見るとスミレもキジムシロも、やっと小葉をのぞかせたところ。やはりおかしな気候です。

緑ではないけれどもそよ風の抜ける森の道を歩くと、シジュウカラやコゲラがさえずりながら樹間を飛び交っています。どこからかコゲラのドラミングが聞こえます。山沢入のヌタに着くと、モミの木に長さ1mほどの月の輪熊の爪痕がくっきりと。木の皮の裏の部分を食べるのだそうです。熊棚もふたつ見つけました。春は新しい命が生まれる季節ですが、春を待たずに倒れたブナの巨樹を3本も見ました。

何にもないこの季節ですが、今回のお目当ては、一昨年の9月に長男と見つけた幻の大トチに会いに行くこと。次男と連れはまだ見ていないので、ぜひ連れて行ってあげたいと思っていました。といっても登山道から大きく外れ、急峻な谷へ下りなければならず、普通の人が気軽に行けるところではありません。帰りは、45度の急斜面を滑落しないように登らなければならない厳しいところです。

しかし、それだけの価値はある場所なのです。その谷は、日常から非日常への入口であり、普段持っている自分の物差しが役に立たないところなのです。人間は、レーゾンデートル(存在理由)なるものを探し求めたりしますが、この谷にいると生きているというだけで素晴らしいではないか、と思えてくるのです。ありのままでいいではないかと。数多の政治家や実業家などには「ひとり」でこの谷に来てもらいたい。傲慢な気持ちなど物の見事に粉砕されるはず。

芽吹く前の谷は清生としていますが、初夏を過ぎれば高さ30~40mの緑の天蓋に覆われ、日中でも陽がほとんど差さなくなります。その荘厳さと漂う緊張感には畏敬の念すら覚えるほど。なのに胎内にいるような安堵感も同時に味わえるという希有な空間なのです。

今回のトレッキングは、モリモリキッズフォトドキュメントをアップしました。ご覧ください。
コメント (3)
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