さいたづままだうら若きみ吉野の霞がくれにきぎす鳴くなり(忠度集)
野べ見ればやよひの月のはつかまでまだうら若きさいたづまかな(後拾遺和歌集)
春日野にまだうら若きさいたづま妻こもるともいふ人やなき(玉葉和歌集)
野べごとにいつしげるらむさいたづま朝ふす鹿の隠(かく)らなるまで(山家五番歌合)
うらわかき弥生の野べのさいたづま春は末ばになりにけるかな(六百番歌合)
(「さいたづま」=虎杖イタドリ のこととされるが、春の若草の総称という説も。)
さいたづままだうら若きみ吉野の霞がくれにきぎす鳴くなり(忠度集)
野べ見ればやよひの月のはつかまでまだうら若きさいたづまかな(後拾遺和歌集)
春日野にまだうら若きさいたづま妻こもるともいふ人やなき(玉葉和歌集)
野べごとにいつしげるらむさいたづま朝ふす鹿の隠(かく)らなるまで(山家五番歌合)
うらわかき弥生の野べのさいたづま春は末ばになりにけるかな(六百番歌合)
(「さいたづま」=虎杖イタドリ のこととされるが、春の若草の総称という説も。)
春の野のつばなが下(した)のつぼすみれ標(しめ)さすほどになりにけるかな(堀河百首)
道とほみ入野(いるの)の原のつぼすみれ春のかたみに摘みてかへらむ(千載和歌集)
むらさきの濃染(こぞめ)の袖とまがふまですみれ摘みもてかへる里びと(現存和歌六帖)
春雨のふる野のみちのつぼすみれ摘みてもゆかむ袖はぬるとも(拾遺愚草)
すみれ草つみつつかへる春日野にたがためとなく袖ぬらしけり(後大通院殿御詠)
春くれば田居(たゐ)にまづ 咲くつぼすみれ見れども飽かぬ君にもあるかな(古今和歌六帖)
春雨のふる野の茅原(ちはら)けふ見ればつばなぬくべくなりぞしにける(新撰和歌六帖)
玉ほこのみちの芝くさ穂にいでて春のつばなも人まねくなり(新撰和歌六帖)
知る知らぬことあり顔のまとゐかなつばなぬく野にけふも暮らしつ(六百番歌合)
よそにては春のすさびと見ゆれども誰がため野べのつばなぬくらむ(現存和歌六帖)
つばな生ひし小野の芝ふの朝露をぬきちらしける玉かとぞ見る(千載和歌集)
片岡のかすみも深き木(こ)がくれに朝日まつ間のひばり鳴くなり(六百番歌合)
朝まだきあがるひばりの声の色も霞にこもる野べのはるけさ(天正五年親王家五十首)
はるばると飛火(とぶひ)が原を見わたせば霞とともにひばり立つなり(夫木抄)
ひばりあがる春の野沢のあさみどり空に色濃きむらがすみかな(夫木抄)
なにとなき草の花さく野べの春くもにひばりの声ものどけき(風雅和歌集)
春ふかき野べのかすみのした風に吹かれてあがる夕ひばりかな(六百番歌合)
うらうらに照れる春日(はるひ)にひばりあがり心かなしもひとりし思へば(万葉集)
呼子鳥なく音(ね)ぞいとどあはれなるははその森の暮れがたの空(夫木抄)
朝露にしとどにぬれて呼子どり神奈備山に鳴きわたるなり(夫木抄)
思ふこと千枝(ちえ)にやしげきよぶこ鳥しのだの杜(もり)のかたに鳴くなり(千載和歌集)
友もなき雲ゐの山におのれのみうはの空にもよぶこどりかな(夫木抄)
人もなき深山(みやま)の奥の呼子鳥いくこゑ鳴かばたれかこたへむ(風雅和歌集)
聞く人もなき奥山のよぶこどりかひなき音(ね)をぞ我もなきつる(久安百首)
山彦もこたへぬ山のよぶこどり我ひとりのみなきやわたらむ(拾遺和歌集)
つれづれと春の夕暮れながめやるをりにしも鳴く呼子どりかな(堀河百首)
夜をのこす寝覚めにたれをよぶこどり人もこたへぬしののめの空(夫木抄)
あたら夜のあはれを知るやよぶこどり月と花とのありあけの空(玉葉和歌集)
鳴けや鳴けしのぶの森のよぶこ鳥つひにとまらむ春ならずとも(新続古今和歌集)