中国のことわざー98 児婦人の口は用うべからず
女こどもの言うことに耳を貸すなという意味である。
この言葉を吐いたのは、意外にも、高祖の未亡人の呂后であった。彼女は高祖亡き後、天下の実権を握り呂氏一族を次々と王に立てた。
しかし呂后も高祖の重臣たちの動向が気にかかった。なかんずく、丞相をつとめる陳平は知謀の士、表面では呂后のやることにいちいち賛成しているものの本心はわからない。
ある時、呂后の妹の“呂しゅ”が「陳平は丞相の地位にありながら、政治はほったらかしにして。毎日、酒と女にうつつを抜かしております」と呂后に言った。
これを人づてに聞いた陳平は“呂しゅ”の讒言通りに日夜、女遊びにふけった。この機会を利用して、呂后を安心させて、自分の身の安全を確保しようと考えたのである。呂后は密かにほくそえんだ。陳平も酒色に溺れているようでは恐れるに足りないと。
呂后は陳平を呼び出して、“呂しゅ”の密告の件を形だけ問いただした上でこう言った。
「“女こどもの言うことに耳を貸すな”と下世話にも言う。“呂しゅ”の讒言など気にすることはないのですよ」
もうこの男は放っておいても大丈夫というわけである。
こうして呂后は陳平に対してすっかり心を許し、大っぴらに呂氏一族を王に立てた。
呂后が没するや、陳平は大尉の周勃とはかって、一挙に呂氏一族を誅伐し、文帝を擁立した。
*今時、“女こどものことばに耳を傾けてはいけません”などと言ったら、世のあらゆる女性・マスコミから総スカンを食うことでしょう。
出展:司馬遷、史記[別巻]史記小辞典、徳間書店、1988年11月30日第二版第一刷、陳丞相世家
女こどもの言うことに耳を貸すなという意味である。
この言葉を吐いたのは、意外にも、高祖の未亡人の呂后であった。彼女は高祖亡き後、天下の実権を握り呂氏一族を次々と王に立てた。
しかし呂后も高祖の重臣たちの動向が気にかかった。なかんずく、丞相をつとめる陳平は知謀の士、表面では呂后のやることにいちいち賛成しているものの本心はわからない。
ある時、呂后の妹の“呂しゅ”が「陳平は丞相の地位にありながら、政治はほったらかしにして。毎日、酒と女にうつつを抜かしております」と呂后に言った。
これを人づてに聞いた陳平は“呂しゅ”の讒言通りに日夜、女遊びにふけった。この機会を利用して、呂后を安心させて、自分の身の安全を確保しようと考えたのである。呂后は密かにほくそえんだ。陳平も酒色に溺れているようでは恐れるに足りないと。
呂后は陳平を呼び出して、“呂しゅ”の密告の件を形だけ問いただした上でこう言った。
「“女こどもの言うことに耳を貸すな”と下世話にも言う。“呂しゅ”の讒言など気にすることはないのですよ」
もうこの男は放っておいても大丈夫というわけである。
こうして呂后は陳平に対してすっかり心を許し、大っぴらに呂氏一族を王に立てた。
呂后が没するや、陳平は大尉の周勃とはかって、一挙に呂氏一族を誅伐し、文帝を擁立した。
*今時、“女こどものことばに耳を傾けてはいけません”などと言ったら、世のあらゆる女性・マスコミから総スカンを食うことでしょう。
出展:司馬遷、史記[別巻]史記小辞典、徳間書店、1988年11月30日第二版第一刷、陳丞相世家