中国のメディア統制に関して3月12日の日本経済新聞朝刊の中外時評は要領よくまとめている。
中国では共産党の中央宣伝部が全マスメディアの報道を検閲、統制し、党の方針に反する内容の報道を封じたり、雑誌や書籍を発禁処分にするなどの権力を握ってきた。しかし、党、政府から司法界にまで拡がった幹部の腐敗は目を覆うばかりで、宣伝部への国民の批判が噴出している。
まずは、この一、二年の動きから振り返るとしよう。
05/06:北京の日刊紙「新京報」は河北省定州市の幹部が暴力団を使い、発電所建設の立ち退きに応じない農民を襲わせた事件をスクープ
05//末:突然、「新京報」の編集長ら三人が解任されたが、数百人の職員が抗議のストライキを行い、二日間で副編集長二人が復職。
06/1/11:「中国青年報」の付属週刊誌「氷点週刊」は1900年の義和団事件が実は放火、略奪、殺人などの残虐行為を重ねた罪悪を指摘、さらに日欧米の列強の行為すべての悪と糾弾し、中国側行為を何でも正当化する誤った歴史観や一元的価値観を厳しく批判。
06/1/24:共産党中央宣伝部により「氷点週刊」が報道規律に違反したとして停刊処分される
その後、「氷点週刊」の編集長は停刊処分に抗議、元人民日報社長ら十数人の改革派長老も宣伝部を非難し、氷点の復刊を求める共同声明を発表。
06/3/1:すったもんだの末、宣伝部は編集長の更迭などを条件に同紙の復刊を認めた。このように党がこれほど短期間に復刊を認めた例はない
現在、政府はインターネット通信を統制するために約8億ドルを投じ、2008年の完成を目指し、金盾工程(ゴールデン・シールド・プロジェクト)と称する強力なネットの検閲システムを構築中。公安省は五万人ともいわれる「ネット警察」を動員して内外のネット通信に目を光らせ、反体制の言論、情報を遮断し、発信者を摘発している。しかし、金盾工程にマイクロソフトやヤフー、グーグルなどの米国企業が協力してきたことを米国議会が取り上げ米国でも大きな問題となってきた。また、中国のネット封鎖網を突破するソフトウエアの開発も米国企業などで始まっている。これらを通じて、中国国内の暴動や人権弾圧の生々しい状況が世界に拡がるケースも増えてきた。
共産党政権は一党独裁、閉鎖型計画経済、思想・言論統制などを柱に体制を維持してきている。しかし市場経済がもたらした経済発展と多元化社会の波が体制を揺さぶっている。
日経論説委員の山本勲氏は新時代に必要なのは公正、公平な市場経済を確立するための情報公開、不正・腐敗のチェックそして高度知識社会を支える思想・言論の自由であろうと述べている。共産党政権がこの流れに逆らっていることが極端な所得格差や暴動の多発(05年は87,000件)を招いているとしている。そして、中国はもはや恐怖政治の昔には戻ることなく、改革に取り組むことを期待したいと結んでいる。
日本経済新聞3月12日朝刊中外時評の要約です
中国では共産党の中央宣伝部が全マスメディアの報道を検閲、統制し、党の方針に反する内容の報道を封じたり、雑誌や書籍を発禁処分にするなどの権力を握ってきた。しかし、党、政府から司法界にまで拡がった幹部の腐敗は目を覆うばかりで、宣伝部への国民の批判が噴出している。
まずは、この一、二年の動きから振り返るとしよう。
05/06:北京の日刊紙「新京報」は河北省定州市の幹部が暴力団を使い、発電所建設の立ち退きに応じない農民を襲わせた事件をスクープ
05//末:突然、「新京報」の編集長ら三人が解任されたが、数百人の職員が抗議のストライキを行い、二日間で副編集長二人が復職。
06/1/11:「中国青年報」の付属週刊誌「氷点週刊」は1900年の義和団事件が実は放火、略奪、殺人などの残虐行為を重ねた罪悪を指摘、さらに日欧米の列強の行為すべての悪と糾弾し、中国側行為を何でも正当化する誤った歴史観や一元的価値観を厳しく批判。
06/1/24:共産党中央宣伝部により「氷点週刊」が報道規律に違反したとして停刊処分される
その後、「氷点週刊」の編集長は停刊処分に抗議、元人民日報社長ら十数人の改革派長老も宣伝部を非難し、氷点の復刊を求める共同声明を発表。
06/3/1:すったもんだの末、宣伝部は編集長の更迭などを条件に同紙の復刊を認めた。このように党がこれほど短期間に復刊を認めた例はない
現在、政府はインターネット通信を統制するために約8億ドルを投じ、2008年の完成を目指し、金盾工程(ゴールデン・シールド・プロジェクト)と称する強力なネットの検閲システムを構築中。公安省は五万人ともいわれる「ネット警察」を動員して内外のネット通信に目を光らせ、反体制の言論、情報を遮断し、発信者を摘発している。しかし、金盾工程にマイクロソフトやヤフー、グーグルなどの米国企業が協力してきたことを米国議会が取り上げ米国でも大きな問題となってきた。また、中国のネット封鎖網を突破するソフトウエアの開発も米国企業などで始まっている。これらを通じて、中国国内の暴動や人権弾圧の生々しい状況が世界に拡がるケースも増えてきた。
共産党政権は一党独裁、閉鎖型計画経済、思想・言論統制などを柱に体制を維持してきている。しかし市場経済がもたらした経済発展と多元化社会の波が体制を揺さぶっている。
日経論説委員の山本勲氏は新時代に必要なのは公正、公平な市場経済を確立するための情報公開、不正・腐敗のチェックそして高度知識社会を支える思想・言論の自由であろうと述べている。共産党政権がこの流れに逆らっていることが極端な所得格差や暴動の多発(05年は87,000件)を招いているとしている。そして、中国はもはや恐怖政治の昔には戻ることなく、改革に取り組むことを期待したいと結んでいる。
日本経済新聞3月12日朝刊中外時評の要約です