中国のことわざ-200 病膏肓に入る(やまいこうこうにいる)
広辞苑によれば、“①不治の病にかかる。また、病気が重くなって治る見込みが立たないようになる②転じて、悪癖や弊害などが手のつけられないほどになる。また、物事に熱中してどうしようもないほどの状態になる”とある。
膏は心臓の下の部分の脂肪、肓は横隔膜であわせて人体の奥深い部分である。ともかくこのようなところが病気になれば不治とされた。
話は春秋時代、中原に位置した大国晋の景公にまつわる。
ある夜、景公は大きな幽霊に追いかけられた。追いかけながら「よくもおれの子孫を殺してくれたな。今こそ天帝の許しを得てお前の命を取りに来た」と叫んでいる。景公は恐ろしさの余り目をさました。考えてみると10年前に、臣下の大臣が政敵一族を大逆罪で皆殺しにしたが、あれは無実であった。景公はそのたたりに違いないと、夢占いに占ってもらった。
すると、「公は今年取れる新麦を召し上がれる時期が来るまでに命を落とすに違いありません」とのご託宣である。ために景公は重い病についてしまった。
晋の西隣の大国秦に高緩(こうかん)という名医がいた。臣下が手を尽くした結果、高緩は景公を診察することに合意した。数日高緩が診察に来ることを心待ちにしているうち、景公は再び夢を見た。
夢には二人の童士が現れた。どうやら、病気の化身らしく会話をしている。「あの高緩というのは相当な名医だというから、来ればたちまち僕たちは痛めつけられ体の外につまみ出されるであろう。どうすればいいだろうか」と一人が言うと、もう一人が答える。
膏の上、肓の下の間の隙間に潜り込んでしまえば、名医といえどもどうしようもあるまいと言うのである。
やがて高緩が着いて景公を診ると、こう診断した。
体の奥の肓と膏の間を病んでいるのだから、手の下しようがない、お手上げだというのである。
景公はお人好しであったようで、まさに夢を見たとおりに診断されたことに感じ入り、「これぞ名医よ」と言って、何もしなかった高緩に厚く礼物を贈って帰した。
高緩が帰ると不思議なことに、快方に向かい、新麦の季節がやってきて、新麦が景公に供された。景公は短気であったようで、「嘘つきめ、わしは新麦が食べられるぞ」と言い、先の夢占い師を斬罪に処した。さて、新麦を口に食べようとしたときに、にわかに腹痛を起こした。慌てて厠に駆け込んだところ、めまいがして足を踏み外し厠の穴に落ち込み、糞にまみれて命を絶ったという。
田川さんはこれを以て糞死と呼んでいる?
出典:広辞苑、田川純三著、中国名言・故事、人生篇、日本放送出版、1990年
*病”こうもう”という人がいますがこれは間違いだそうです。”こうこう”です。
広辞苑によれば、“①不治の病にかかる。また、病気が重くなって治る見込みが立たないようになる②転じて、悪癖や弊害などが手のつけられないほどになる。また、物事に熱中してどうしようもないほどの状態になる”とある。
膏は心臓の下の部分の脂肪、肓は横隔膜であわせて人体の奥深い部分である。ともかくこのようなところが病気になれば不治とされた。
話は春秋時代、中原に位置した大国晋の景公にまつわる。
ある夜、景公は大きな幽霊に追いかけられた。追いかけながら「よくもおれの子孫を殺してくれたな。今こそ天帝の許しを得てお前の命を取りに来た」と叫んでいる。景公は恐ろしさの余り目をさました。考えてみると10年前に、臣下の大臣が政敵一族を大逆罪で皆殺しにしたが、あれは無実であった。景公はそのたたりに違いないと、夢占いに占ってもらった。
すると、「公は今年取れる新麦を召し上がれる時期が来るまでに命を落とすに違いありません」とのご託宣である。ために景公は重い病についてしまった。
晋の西隣の大国秦に高緩(こうかん)という名医がいた。臣下が手を尽くした結果、高緩は景公を診察することに合意した。数日高緩が診察に来ることを心待ちにしているうち、景公は再び夢を見た。
夢には二人の童士が現れた。どうやら、病気の化身らしく会話をしている。「あの高緩というのは相当な名医だというから、来ればたちまち僕たちは痛めつけられ体の外につまみ出されるであろう。どうすればいいだろうか」と一人が言うと、もう一人が答える。
膏の上、肓の下の間の隙間に潜り込んでしまえば、名医といえどもどうしようもあるまいと言うのである。
やがて高緩が着いて景公を診ると、こう診断した。
体の奥の肓と膏の間を病んでいるのだから、手の下しようがない、お手上げだというのである。
景公はお人好しであったようで、まさに夢を見たとおりに診断されたことに感じ入り、「これぞ名医よ」と言って、何もしなかった高緩に厚く礼物を贈って帰した。
高緩が帰ると不思議なことに、快方に向かい、新麦の季節がやってきて、新麦が景公に供された。景公は短気であったようで、「嘘つきめ、わしは新麦が食べられるぞ」と言い、先の夢占い師を斬罪に処した。さて、新麦を口に食べようとしたときに、にわかに腹痛を起こした。慌てて厠に駆け込んだところ、めまいがして足を踏み外し厠の穴に落ち込み、糞にまみれて命を絶ったという。
田川さんはこれを以て糞死と呼んでいる?
出典:広辞苑、田川純三著、中国名言・故事、人生篇、日本放送出版、1990年
*病”こうもう”という人がいますがこれは間違いだそうです。”こうこう”です。