凡凡「趣味の玉手箱」

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管をもって天を窺う

2006-01-21 17:52:33 | 中国のことわざ
中国のことわざー96 管(くだ)をもって天を窺(うかが)う(管を用いて天を窺う)

管の穴から天をのぞくように、狭い見識で広大なものごとをうかがっても、その真相を知り得ない。"ヨシの髄から天井をのぞく"と同じ意味で見識の狭さをたとえる。

春秋末期の医聖の扁鵲(へんじゃく)が"かく"の国に行ったときのこと、太子が死んだという噂を聞いて、宮廷の医師を訪ね、太子がどんな病状で死んだのかと聞いた後、

「いつ亡くなられたのですか」

「明け方です」

「納棺されましたか」

「いえ、まだ亡くなられてから半日も経っていませんので・・・・」

「では、私が太子を生き返らせて進ぜましょう」

「いいかげんなことはおっしゃらないでください。赤ん坊だって、そんなことは信用しませんよ」

扁鵲は医師とこんな問答を続けた後、天を仰いで嘆息して言った。

「あなたの医術など、管を通して広い天を窺い、隙間から複雑な模様を見るようなもの、とても全般を見通すことはできませんぞ。もし私の言うことが信用できぬなら、も一度太子を診てごらんなさい。その耳が鳴り、鼻がふくらむ音が聞こえるはずです」

これは余りにも図星だったため、相手は驚きのため、目がくらみ舌が動かなくなってしまった。

報告を聞いた「かく」の君主は太子の治療を扁鵲にまかせた。扁鵲が鍼(はり)を打つと
太子は蘇生し、さらに治療を重ねて20日後に全快した。

このため、死人を生き返らせることができる名医という評判が立ったが、扁鵲は「死人を生き返らせたわけではない。まだ死んでいない人を治したまでのことだ」と言った。

この話から、「管見」という言葉も生まれた。自分の知識や見解を謙遜して言う場合に用いる。

出展:広辞苑、司馬遷、史記[別巻]史記小辞典、徳間書店、1988年11月30日第二版第一刷、扁鵲・倉公列伝


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