凡凡「趣味の玉手箱」

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中国疾走、五輪まで1年

2007-08-18 18:42:21 | 中国知っ得情報
読売新聞の一面トップの写真を見て驚きました。北京郊外の万里の長城に多くの観光客が押し寄せている写真なのだが、その写真の右後方に北京五輪の巨大看板がかすんで写り込んでいるのです。今日の記事は北京の大気汚染は「世界最悪」というテーマなのですが、せっかくの世界遺産が広告看板に泣かされているのです。これは景観破壊のなにものでもありません。

北京では威信をかけて「人工消雨」の実験に取り組んでいます。この目的は北京で青い空のもと開会式を成功裡に導きたいと言うことで、開会式の前に北京の空に化学物質入りのロケットを打ち上げて人工的に雨を降らせて、天気にしようという試みだそうです。
「中国の一部の都市における大気汚染は世界最悪の水準に達している」とOECDが7月に報告書で指摘した事実は中国の指導者に大きな衝撃を与えました。日本では大気汚染の問題が1970年代の前半に問題となりましたが、今北京は同じような状況にあるのです。人工消雨で天気をコントロールするのもどうかと思いますが、“北京の汚れた空”というイメージを五輪で払拭させたいという指導者の思いもあったのでしょう。

北京の大気汚染対策はまだ始まったばかり、目に見える成果はまだないようです。7月28日の東京都内で開かれた日本オリンピック委員会の会議では競技のコーチから「選手が大気汚染でやられてしまう」という声が相次いだそうです。「2,3日北京にいると咳が止まらなくなる」「北京で運動中の酸素摂取量が1割低下して胸の痛みを訴える選手もいる」「英国水泳チームは大気汚染への懸念から開幕直前まで北京入りを控えることになった」といった情報が相次いで入ったそうです。過去のオリンピックで大気汚染がこれほど問題にされたことはないのです。

北京市の南東約200kmにある河北省青県。人口約39万人のこの県の郊外に「がん村」というのがあるそうです。人口数百人の集落で7人が6年前から肺ガンを発病し、すでに5人が亡くなったそうです。原因は、集落に隣接した化粧品工場が排出する汚染物質の可能性が強いようですがまだ特定されているわけではなさそうです。周辺は夜間、特に刺激臭が立ちこめ、周囲の樹木の葉っぱが白くなったそうです。青県の例ではありませんが、企業が地元政府とつながっており、住民が被害を地元政府に訴えても殆ど聞く耳を持たないのが現状のようです。被害を訴えた住民と地方政府の間でいざこざがおき、住民は拘束され、汚染は引き続き拡大するという最悪のシナリオが各地で繰り返されているようです。

中国全体で見れば、北京はそれでもまだよい方なのだそうです。大気に拡散した亜硫酸ガスは水と反応して酸性雨として地上に降り注ぎます。まあ薄い硫酸が振ってくるものと考えればよいのですが、中国全土の3分の1の地域がこの酸性雨の影響を受け、長江以南の浙江省や江西省、湖南省、広西チワン族自治区、広東省で木が枯れたりの被害が特にひどいとのことです。そして大気汚染の影響は日本にまで及んできています。偏西風によって運ばれた汚染物質が酸性雨として日本に降っているわけです。こうなると日本も対岸の火として黙ってみているわけには行かなくて大気汚染対策が日中共同で行われているのです。

大気汚染以上に大きな被害が出ているもの、それが水質汚染です。有名な太湖などの湖でアオコが大量発生して、周辺都市では飲料水への不安が高まっています。湖や河川周辺の工場排水や生活排水など複合汚染によって水質が富栄養化状態にあるのです。農村では実際に井戸が工場排水で汚染されて飲めなくなったという深刻な状況もあるようです。そして河南省沈丘県一帯では河川の汚染により100人以上の癌患者を出したとのこと、「がん村」が20余りもあるとの衝撃的な報道もあるとのことです。
中国が持続的な発展を遂げるためには、五輪を前にした一時的な対策を講じることも重要なのだろうが、企業と地方政府の癒着の問題に鋭いメスを入れ、今起こっている悲惨な実態一つ一つを明らかにし、地道に解決してゆく必要がありそうです。

8月7日読売新聞朝刊から


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