凡凡「趣味の玉手箱」

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獲麟(かくりん)

2006-01-20 07:06:48 | 中国のことわざ
中国のことわざー95 獲麟(かくりん)

麒麟捕獲の意。麒麟は聖人の出現に伴って現れるとされた想像上の動物である。魯国の年代記である「春秋」は孔子の著書と伝えられるが、哀公14年(前481年)麒麟の記事をもって終わっていることから、絶筆あるいは物事の終わりを麒麟という。

「春秋」最後の記事は「14年、春、西に狩して麟を獲たり(えたり)」である。「春秋」の解説書の一つである、「左伝」によれば、その年の春、魯の西部で狩猟が催され、ある御者が異様な動物を捕まえ、これを不吉なものとして役人に下げ渡した。孔子はその獣を観察して「これは麒麟だ」と言った。

そして孔子は麒麟が捕らえられたのを見て「我が道窮まれり(きわまれり)」と嘆じ、「春秋」の筆を絶ったと伝えられる。聖人の出現を伴わずに麒麟だけが現れ、むざむざ殺されたのを嘆いたのである。

出展:司馬遷、史記[別巻]史記小辞典、徳間書店、1988年11月30日第二版第一刷、孔子世家


壱敗、地に塗る

2006-01-20 07:05:15 | 中国のことわざ
中国のことわざー94 壱敗、地に塗る(まみる)

見るかげもなく敗北すること。「地に塗る」とは死体からはみ出た内蔵や脳みそが泥にまみれて散らばることである。

秦の始皇帝の死後、陳勝・呉広が蜂起したのを契機に、各地で反乱の動きが出てきた。楚の沛県でも高祖劉邦の檄文に呼応した父老たちが、若者たちと共に立ち上がり、県知事を斬り、城門を開いて劉邦たちを向かい入れた。新しい知事に推された劉邦は、次のように言って、いったんこれを辞退した。

「天下が麻のごとく乱れ、各地に諸侯が蜂起した今、指導者が役立たずでは、一敗、地にまみれるのがおちだ(今、将を置くこと善からずば、“壱敗、地に塗れん”)。私ごときを知事にしたのではあなた方の将来を誤るだろう。もっとふさわしい人物を選んで欲しい」

しかし、結局、他になり手がなく、劉邦が沛県の知事、すなわち、沛公になり、その後、漢王になるまで、この名で呼ばれることになった。

出展:司馬遷、史記[別巻]史記小辞典、徳間書店、1988年11月30日第二版第一刷、高祖本紀