凡凡「趣味の玉手箱」

キーワードは中国です。中国以外のテーマは”趣味の玉手箱にようこそ”で扱っております。

中国「五輪のため」消えた水田

2007-08-18 18:44:56 | 中国知っ得情報
この二三日、急に北京五輪のニュースが目や耳に止まるようになってきましたね。北京五輪の開幕があと1年に迫ったからです。北京五輪は中国の「偉大な国家事業」と位置づけられているのです。そのオリンピックを成功裡に開こうと中国は国家をあげてさまざまな対策に取り組んでいます。

その一つが、昨日この書庫で取り上げた「大気汚染対策」です。
http://blogs.yahoo.co.jp/moguma1338/50283754.html
そしてもう一つの重要な課題が水不足対策でしょう。北京の水不足は深刻で、農業や工業、発電などに利用できる水(水資源)は北京では一人あたり128立方メートル(03年)、これは世界平均約7800立方メートルの60分の1しかなく、日本の約3300立方メートルにも遠く及びません。経済成長による大量消費、節水モラルの欠如などなどから「東京砂漠」ならぬ「北京砂漠」の異名さえ生まれたそうなのです。

水不足の抜本的な対策が「南水北調」ですが、手っ取り早い対策として進められたのが強制転作です。大量の水が必要な稲作をやめて、乾燥に強い作物に転作するのです。これは北京市が07年1月に断行したもので、北京市に隣接する河北省3県二百数十の村に「退稲還旱」と名づけられています。米を供給していた水田を乾燥に強いトウモロコシ畑に変えたのです。総面積にして約6667万平方メートル、東京都の新宿・港・渋谷・千代田4区の合計とほぼ同じ面積で、数万人が転作を余儀なくされたそうです。
「南水北調」の記事は↓
http://blogs.yahoo.co.jp/moguma1338/48622490.html

説得に当たった県の役人は「トウモロコシなどの野菜類は年2回収穫できるから農家の収入は増えるはず、転作は農民が勝手に決めたこと」と言っているそうです。行政は補助金を畑の面積に応じて農民に支払っていますが、2年間の「試験的措置」なので、効果がないようであれば補助金はストップされるし、その後がよく見通せないようです。農民は泣く泣く転作に応じたのがどうも実態のようでここにも中国の弱者に大きな負担を強いる構図が見え隠れするように思えてなりません。

水田の減少によって米資源は当然減少します。拙速な対策は食糧事情の悪化をもたらす危険もあるのではないかと思います。「南水北調」もそもそも南の水源は本当に良質で豊富に存在するのかという疑問にもぶつかりますし、水不足対策は食糧確保の問題とも絡んでなかなか複雑で難しい問題なんだと思いました。

8月8日毎日新聞朝刊から

中国疾走、五輪まで1年

2007-08-18 18:42:21 | 中国知っ得情報
読売新聞の一面トップの写真を見て驚きました。北京郊外の万里の長城に多くの観光客が押し寄せている写真なのだが、その写真の右後方に北京五輪の巨大看板がかすんで写り込んでいるのです。今日の記事は北京の大気汚染は「世界最悪」というテーマなのですが、せっかくの世界遺産が広告看板に泣かされているのです。これは景観破壊のなにものでもありません。

北京では威信をかけて「人工消雨」の実験に取り組んでいます。この目的は北京で青い空のもと開会式を成功裡に導きたいと言うことで、開会式の前に北京の空に化学物質入りのロケットを打ち上げて人工的に雨を降らせて、天気にしようという試みだそうです。
「中国の一部の都市における大気汚染は世界最悪の水準に達している」とOECDが7月に報告書で指摘した事実は中国の指導者に大きな衝撃を与えました。日本では大気汚染の問題が1970年代の前半に問題となりましたが、今北京は同じような状況にあるのです。人工消雨で天気をコントロールするのもどうかと思いますが、“北京の汚れた空”というイメージを五輪で払拭させたいという指導者の思いもあったのでしょう。

北京の大気汚染対策はまだ始まったばかり、目に見える成果はまだないようです。7月28日の東京都内で開かれた日本オリンピック委員会の会議では競技のコーチから「選手が大気汚染でやられてしまう」という声が相次いだそうです。「2,3日北京にいると咳が止まらなくなる」「北京で運動中の酸素摂取量が1割低下して胸の痛みを訴える選手もいる」「英国水泳チームは大気汚染への懸念から開幕直前まで北京入りを控えることになった」といった情報が相次いで入ったそうです。過去のオリンピックで大気汚染がこれほど問題にされたことはないのです。

北京市の南東約200kmにある河北省青県。人口約39万人のこの県の郊外に「がん村」というのがあるそうです。人口数百人の集落で7人が6年前から肺ガンを発病し、すでに5人が亡くなったそうです。原因は、集落に隣接した化粧品工場が排出する汚染物質の可能性が強いようですがまだ特定されているわけではなさそうです。周辺は夜間、特に刺激臭が立ちこめ、周囲の樹木の葉っぱが白くなったそうです。青県の例ではありませんが、企業が地元政府とつながっており、住民が被害を地元政府に訴えても殆ど聞く耳を持たないのが現状のようです。被害を訴えた住民と地方政府の間でいざこざがおき、住民は拘束され、汚染は引き続き拡大するという最悪のシナリオが各地で繰り返されているようです。

中国全体で見れば、北京はそれでもまだよい方なのだそうです。大気に拡散した亜硫酸ガスは水と反応して酸性雨として地上に降り注ぎます。まあ薄い硫酸が振ってくるものと考えればよいのですが、中国全土の3分の1の地域がこの酸性雨の影響を受け、長江以南の浙江省や江西省、湖南省、広西チワン族自治区、広東省で木が枯れたりの被害が特にひどいとのことです。そして大気汚染の影響は日本にまで及んできています。偏西風によって運ばれた汚染物質が酸性雨として日本に降っているわけです。こうなると日本も対岸の火として黙ってみているわけには行かなくて大気汚染対策が日中共同で行われているのです。

大気汚染以上に大きな被害が出ているもの、それが水質汚染です。有名な太湖などの湖でアオコが大量発生して、周辺都市では飲料水への不安が高まっています。湖や河川周辺の工場排水や生活排水など複合汚染によって水質が富栄養化状態にあるのです。農村では実際に井戸が工場排水で汚染されて飲めなくなったという深刻な状況もあるようです。そして河南省沈丘県一帯では河川の汚染により100人以上の癌患者を出したとのこと、「がん村」が20余りもあるとの衝撃的な報道もあるとのことです。
中国が持続的な発展を遂げるためには、五輪を前にした一時的な対策を講じることも重要なのだろうが、企業と地方政府の癒着の問題に鋭いメスを入れ、今起こっている悲惨な実態一つ一つを明らかにし、地道に解決してゆく必要がありそうです。

8月7日読売新聞朝刊から

始皇帝と徐福

2007-08-18 18:39:14 | 中国知っ得情報
8月6日毎日新聞の夕刊に、中国史に詳しい作家の陳舜臣が始皇帝と徐福という記事を書かれていましたのでそのエッセンスを記しました。

始皇帝と徐福に関する記述は司馬遷の史記に記されていました。
斉の人であった徐福が「海中に三神山があり、仙人が住んでいて、不老不死の薬を知っている」と秦の始皇帝に言って、童男童女三千、五穀の種、百工(さまざまな技術)とともにそれを求めに出かけようとしたのです。史記によれば、これが紀元前219年だったようです。それでは、徐福は本当に航海に出たのでしょうか?始皇帝は皇帝という称号をはじめて作って自らを始皇帝と名乗った大変な権力者でありましたが、一つだけ彼がどうしても手に入れることができなかったのが不老不死の薬であったわけです。始皇帝は彼が亡くなった年の紀元前210年、徐福に「不老不死の薬はまだ届かぬか」と海岸に視察にやってきたようです。徐福は「出発の準備はできておりますが、大きな鮫が出発を妨害しております」と。始皇帝は「それなら朕が退治してくれよう」と海上を巡り、鮫を見つけて殺しました。

陳舜臣氏によれば徐福は秦という絶対主義的な国を出たくて出たくてしょうがなかったと推察しています。そのために秦の始皇帝に不老不死の話を持ちかけ、資金を引き出して、どこかの国に渡ってしまったのだろうと推理しています。確かに歴史に厳格な司馬遷が“「徐福が「平原広沢を得て王になる」”と書いていることから、海外に渡ったと言うことは真実の可能性が高いのです。それではその行き先は日本だったのでしょうか?日本には徐福の伝説の土地が11ヶ所もあって、彼の墓が2ヶ所あることから日本渡来説が信じられているのです。しかしながら、「平原広沢」という地名は日本にはないことから日本への渡航説に疑問を挟む学者が多く、渡航先はアメリカだと唱える香港の学者さんもいるそうです。徐福伝説の謎は深まるばかりですね。

「徐福は神武天皇か」の記事は↓
http://blogs.yahoo.co.jp/moguma1338/25553699.html