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合体が進む銀河とその中心ブラックホールはどのように進化していくのか? 高感度、高解像度なアルマ望遠鏡での観測で分かってくるようです

2020年02月05日 | 銀河と中心ブラックホールの進化
へびつかい座の方向約4億光年の彼方では2つの銀河の衝突が進んでいます。
2つの銀河それぞれの中心には超大質量のブラックホールが存在していて、こちらも衝突によって1つのブラックホールへ。
それでは、2つの銀河の衝突が進むと、銀河やブラックホールはどのように合体を進めていくのでしょうか?
高感度で高解像度のアルマ望遠鏡が大きな手掛かりを与えてくれそうです。


衝突を進める銀河と中心ブラックホール

へびつかい座の方向約4億光年の彼方に位置する“NGC 6240”は、2つの銀河の衝突が進行中の天体です。

2つの銀河それぞれの中心に超大質量ブラックホールが存在していて、衝突によって最終的には1つのより大きなブラックホールになると考えられています。

それでは、2つの銀河の衝突が進む“NGC 6240”でブラックホールはどのように成長していくのでしょうか?

これを理解するためのカギが分子ガスです。
分子ガスは星を作るのに必要な材料ですが、超大質量ブラックホールにも供給され、ブラックホールを成長させる材料にもなるからです。

この研究を進めているのはチリ・ポンティフィシア・カトリック大学のチーム。
ブラックホールを取り巻くチリやガスを詳しく調べるため、アルマ望遠鏡を用いて“NGC 6240”を観測したそうです。
2つの銀河が衝突中の天体“NGC 6240”。(左)アルマ望遠鏡とハッブル宇宙望遠鏡の画像を合成したもの。(右上)アルマ望遠鏡による画像。分子ガスは青色、2つのブラックホールは赤い点で示されている。(右下)合成画像の中心部のクローズアップ。
2つの銀河が衝突中の天体“NGC 6240”。(左)アルマ望遠鏡とハッブル宇宙望遠鏡の画像を合成したもの。(右上)アルマ望遠鏡による画像。分子ガスは青色、2つのブラックホールは赤い点で示されている。(右下)合成画像の中心部のクローズアップ。
そして分かってきたのが、分子ガスのほとんどが2つのブラックホールの間の領域に存在していることでした。

これまでの観測では、このガスが降着円盤である可能性が示されていました。
  ブラックホールの重力で集められたガスやチリは、周りを回りながらブラックホールに落ち込んでいくことになる。この時に作られる円盤構造が降着円盤と呼ばれる。
でも、今回の研究からはその証拠を見つけることはできなかったんですねー

その代わりに発見できたのが、2つのブラックホールの間の領域にある、細い糸や泡のような形になったガスの混沌とした流れでした。

ガス流の原因はまだ分かっていませんが、ガスの一部は毎秒500キロの速度で外に向かって放出されているようです。


アルマ望遠鏡によって得られる銀河の3次元構造

ガスの観測からは、“NGC 6240”のブラックホールの質量をより正確に見積もることができました。

星の運動から導き出さす以前の理論モデルから分かっていたのは、ブラックホールの質量が太陽の10億倍程度ということ。

でも、このモデルではガスの総質量が分からないんですねー
なので、これまでブラックホール本体と周囲にあるガスの合計質量を、ブラックホールの質量としていました。

今回、アメリカ・トレド大学の研究チームが用いたのは、アルマ望遠鏡による観測データ。
このデータからガスの量を精密に見積もると、ブラックホールの質量は太陽の数億倍程度だと分かってきます。

そう、ブラックホールの影響範囲内に閉じ込められているガスの質量は、非常に大きいということになります。

この結果から考えられるのは、このブラックホールに対して過去に得られた多くの質量測定値は5~90%ほど低くなる可能性があることです。

さらに明らかになったのは、分子ガスが予想していたよりもブラックホールに近い場所にあること。
このように分子ガスは非常に極端な環境にあるため、最終的にブラックホールに落ち込むか、高速で放出されると考えられています。
  ブラックホールによって集められたガスやチリは、降着円盤を形成しブラックホールに落ち込んでいく。一方、降着円盤内のガスの摩擦熱によって電離してプラズマ状態になると、電離したガスは回転することで強力な磁場が作られ、降着円盤からは荷電粒子のジェットとして噴射する。

“NGC 6240”は非常に複雑なので、これまで銀河内部で何が起こっているのかを知ることはできませんでした。

この状況を変えてくれたのが、高感度かつ高解像度のアルマ望遠鏡によって得られた詳しい電波画像です。

今回の観測では“NGC 6240”の3次元構造をよりよく把握できるようになり、合体が進む最終段階で、銀河がどのように進化するかを理解するための機会を与えてくれたんですねー

では、数億年後の“NGC 6240”はどうなっているのでしょうか?
たぶん、この銀河は完全に異なった姿になっているはずですよ。
“NGC 6240”にイメージ図。青で描かれたガスの左上と右下に、2つの超大質量ブラックホールが描かれている。
“NGC 6240”にイメージ図。青で描かれたガスの左上と右下に、2つの超大質量ブラックホールが描かれている。


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