一燈照隅

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彼らは祖国を愛しました…Ⅲ(東京裁判14)

2006年07月15日 | 東京裁判
ローガン弁護人最終弁論Ⅲ

一三六、日本が挑発されて、又事実自衛の為め昭和十六年十二月七日に行動を起したのだといふ主張を重要視するに当つては、被告等の斯る主張が後から考へた思案に依るものではないと云ふことが留意されねばなりません。是までに述べて来た事柄は、要するに昭和十三年(一九三八年)に始つた日本に対する経済封鎖並に軍事的包囲に対して、日本の責任ある代表者により、其の都度記録された抗議に関して書かれた数多くの文書の内容に帰着するのであります。枚挙し得ない程の頁数に亙る証言が多くの証人に依て数多くの閣議や連絡会議や重臣会議や枢密員会議並に軍事会議に就て為されてをります。而して此等は総て経済封鎖や軍事的脅威の及ぼしつつある結果、日本が事態を緩和すべき何等かの手段を採るに非ざれば将来も継続して生ずべき結果を中心として行はれたものであります。
しかも其の手段を日本は辛抱強く外交交渉に依て試みたのでありますが失敗に終つたのであります。輸入禁止は最初日本を憤激せしめたが、漸次苛烈さ頻発及び範囲を増大するに従て苦慮の状態に陥らしめ、遂に日本は己の頸に架けられた此の締道具を外交交渉に依ては最早断ち切れる希望が断たれたと覚り、自尊心を持つ他の如何なる国民も採るに相異なかつた行動に出でざるを得なかつた様に仕向けられたのであります。其の発生の都度記録せられ、充分に立証されてゐる此等の事実は、昭和十六年十二月八日に換発された詔勅に要約され、日本が自衛の為めに採つた行動なることが示されてゐるのであります。

一三七、日本は正当であつたか、又此等の被告又は当時責任的指導者であつた被告が、日本の国家的存立が経済封鎖や軍事的包囲の為めに危殆に陥つたと衷心から正直に信じたか、アメリカの責任ある指導者達は当時之を承知し且つ信じてゐた筈であります(a)。若し之に対し反対の結論をなすならば、それは全然事実を無視するものであります。
武力の誇示を伴つた経済封鎖が、此れ程大規模に用意周到な計画的な統一的な正確さを以て遂行され、その目的、即ち日本をして最初の一撃を行はしめんとする明白な期待と希望とを挑発する目的が首尾よく貫徹されたことは、歴史上未だ他に其の例を見ないのであります。日本を刺激して攻撃に出でしめようとする、その公言せられた目的が完成されたのでありますから、此の日本の攻撃が自衛手段でないと記録することは実に歴史に一汚点を残すものであります。
(a)法廷証二八三二-A、記録二五.三三六、二五.三四〇、二五.三四六、二五.三五〇、法廷証二八五
六、記録二五.三六〇、二五.三六三

一三八、英国内閣閣僚オリヴアー・リトルトン氏及び合衆国前大統領ハーバート・フーヴアー氏の熟慮された言説直接報道された言説は恐らく最も適切に全般的状勢を説明してをります。即ち両氏は夫々「アメリカが強ひられて日本と戦つたと云ふならば之は歴史上の笑草であらう」「若し吾々が日本人を挑発しなかつたならば決して日本人から攻撃を受ける様なことはなかつたであらう」と言つて居るのであります。

一三九、A、B、C、D諸国は完全なる軍事的及び経済的包囲を二つとも作つて居りましたので、我々は最初の打撃は真珠湾で打たれたのではないと思ひました。そして其れは久しい以前に経済戦争が発足した時に打たれたと思ふのであります。
経済戦争は頑強に不断に圧縮されました。更に又それ以上効果的に且つ躁躍的になりましたので、それは日本の存在さへも脅威致しまして、若しそれが続けられたなら日本を滅亡させたかも知れませんでした。
これらの人々は是を知り、それを信じ、それを信ずる理由を有し、そして彼等のために行動したのであります。これらの人々は日本人であります。彼等は米国人でも又は大英聯邦国民の人々でもありません。或は又和蘭人でも、露西亜人でも仏蘭西人でもないのであります。
彼等は日本国を愛しました。そして彼等の決定は祖国にとつて生きるか死ぬかの決定でありました。彼等は祖国を愛しました。そして決定をしなければならぬ地位にありました。
我々はこの裁判をされる方に、一寸彼等の立場になつて考へて下さいとお願ひします。その立場に立つたら愛国者として貴方達は他の決議をすることが出来るでせうか。その決定をすべき地位にあり、然も公正な信念及びその信念を裏付ける十分な理由があつてなされた決定が善いか悪いか、又それは犯罪者の信念であつて愛国者の信念ではない等と称されませうか。若しその決定が犯罪的意図からではなく、決定された方法が祖国を護持して行くに絶対必要であるといふ強い信念と愛国心の動機からなされたならば、我々はそれが犯罪であると法廷で裁きを行ふべきでないと申立てます。


彼らは祖国を愛しました…Ⅰ

彼らは祖国を愛しました…Ⅱ



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