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夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『ギリーは幸せになる』

2020年05月21日 | 映画(か行)
『ギリーは幸せになる』(原題:The Great Gilly Hopkins)
監督:スティーヴン・ヘレク
出演:ソフィー・ネリッセ,キャシー・ベイツ,ジュリア・スタイルズ,ビル・コッブス,
   ビリー・マグヌッセン,オクタヴィア・スペンサー,グレン・クローズ他
 
2016年のアメリカ作品。日本では劇場未公開、WOWOWにて放映されたそうな。
WOWOWの放映時邦題は『ギリー・ホプキンズの不機嫌な日常』。
とっても良くて、こんなならGW中にUPしたかったと思うほど。
 
どういうわけか母親と一緒に暮らすことが許されない少女ギリーは、
里親に引き取られるたびに問題を起こし、どこにも居付けない。
今度もしも駄目だったら、ずっと施設にいることになるだろう。
そう言われて預けられることになったのは、養母トロッターさんの家。
 
トロッターさんは、終始生意気な態度のギリーにも優しい。
そこが余計にむかつく。
もうひとりの里子、ウィリアムはおとなしくて口も利かないが、
すっかりトロッターさんに懐いていて、それも腹が立つ。
トロッターさんは毎晩隣家の盲人フランドルさんを食事に招くし、
どこまでお人好しなのか。
 
学校へ行けば、ハリス先生が鬱陶しい。
友だちなんて要らないのに、アグネスという同級生がまとわりついてくる。
ギリーの頭の中にはどうすれば実母と暮らせるということしかないのに。
 
ある日、実母の居場所を突き止めたギリーは、
あることないことでっちあげた手紙を書くことを思いつく。
一刻も早くこの環境から救い出してほしいとしたためて投函するのだが……。
 
中盤までクソ生意気なギリーを演じるのはソフィー・ネリッセ。
とても可愛い子なのですが、20歳になった今の写真を見るとイマイチかなぁ(笑)。
 
トロッターさんにはキャシー・ベイツ。さすが。
フランドルさん役のビル・コッブスも実にあったかい。
また、ハリス先生役のオクタヴィア・スペンサーもいい味。
祖母役で登場するグレン・クローズを見ると、
『危険な情事』(1987)で鍋にウサギ突っ込んでたストーカー
こんな上品なおばあちゃん役かと思うと感慨深い(?)ですねぇ。
 
実母役のジュリア・スタイルズだけがめっちゃ怖い。いや、顔と化粧が。(^^;
まぁ、あかん母親役なので合ってるっちゃ合ってますが。
 
親に愛されることのないまま里親のところを転々としていた問題児が
優しい養母に引き取られて暮らすうち、良い子になる。
とてもありがちな話ではありますが、心が洗われて涙涙。
 
ありきたりでもこういう話は落ち着きます。
きっとギリーは幸せになる。

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『ブロー・ザ・マン・ダウン 女たちの協定』

2020年05月20日 | 映画(は行)
『ブロー・ザ・マン・ダウン 女たちの協定』(原題:Blow the Man Down)
監督:ダニエル・クルーディ,ブリジット・サヴェージ・コール
出演:モーガン・セイラー,ソフィー・ロウ,マーゴ・マーティンデイル,
   ジューン・スキッブ,アネット・オトゥール,エボン・モス=バクラック他
 
2019年のアメリカ作品。
Amazonスタジオの配給作品で、日本では劇場未公開。
Amazonプライムビデオで配信中ですが、
全米での公開が今年の3月下旬だから、いわゆる「神配信」
しかも他の神配信と異なって無料です。プライム会員ならば。
 
監督はウィキペディアにまだ日本語ページのないふたり、
ダニエル・クルーディとブリジット・サヴェージ・コール。
映画好きの人なら誰しも思うことでしょう、
コーエン兄弟『ファーゴ』(1996)を思わせるスリラー作品で、
この先がめちゃくちゃ楽しみ。
メジャー作品が好きな人には薦めませんが、私は大好き。
 
アメリカ・メイン州の小さな漁師町イースター・コーヴ。
魚屋を営むコノリー家の母親が亡くなり、
長女プリシラと次女メアリー・ベスは哀しみの淵にいる。
プリシラはこの地に残って店を継ぐつもり。
自由奔放なメアリー・ベスは一刻も早くここを立ち去りたいのに、
母親の死で足止めを食らってイライラ。
 
憂さを晴らそうとひとり飲みに出かけたメアリー・ベスは、
バーで知り合った男ゴルスキーと酔っぱらって羽目を外す。
ゴルスキーの家に着いた途端、豹変した彼に恐れをなし、
逃げようとするメアリー・ベスをゴルスキーが追う。
そばにあった銛でゴルスキーの首をひと突きしたうえに、
レンガで頭を殴って殺してしまったメアリー・ベス。
 
帰宅して震えながらプリシラに相談。
正当防衛が適用されるはずだから大丈夫と通報しかけるが、
気が変わったプリシラはメアリー・ベスを連れてゴルスキー宅へ。
彼の遺体をクーラーボックスに詰め込み、海へと放り込む。
 
翌朝、警官がプリシラにボートを貸してほしいと言いに来る。
小型のボートしか近寄れない場所に遺体が打ち上げられたと言うのだ。
もう見つかってしまったと呆然とするプリシラ。
ところがその遺体はゴルスキーのものではなく、若い女性のもので……。
 
この件から少しずつ明らかになる町の黒い歴史。
町に1軒だけ存在するホテルは売春宿として昔から営業されていました。
それに自分たちの亡き母親も絡んでいたと姉妹は知ります。
また、自分たちが抹殺したあの男が宿の用心棒であったことも。
 
母親が亡くなったのを機会に、売春宿をなくしてしまおうと考えている町の女性たち。
しかし、宿の経営者であるエニッドは決して首を縦に振らない。
 
マーゴ・マーティンデイル演じるエニッドが凄い迫力なのですが、
それに負けじとエニッドに詰め寄る婆さんたちがまた怖いのなんのって。
町の汚点はなんとしてでも排除するつもりなのがありあり。
 
プリシラ役のソフィー・ロウは透明感のある美人。
はねっかえり娘のメアリー・ベス役のモーガン・セイラーと良いコンビ。
 
タイトルの“Blow the Man Down”は、冒頭で漁師たちが歌っている曲。
「そいつをぶっ飛ばせ」と。
最後は女たちが歌います。男をぶっ飛ばせ。その微笑みが怖すぎる。

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『ピザ!』

2020年05月19日 | 映画(は行)
『ピザ!』(原題:Kaaka Muttai)
監督:M・マニカンダン
出演:V・ラメーシュ,J・ヴィグネーシュ,アイシュワリヤー・ラージェーシュ他
 
2014年のインド作品。日本では劇場未公開。
こういうのを「あなたへのオススメ」でAmazonが教えてくれると、
Amazonよ、君はなんと確かな目を持っているんだと思います(笑)。
プライム会員なら無料。
 
踊らないボリウッド作品です。でもやっぱりボリウッド。
 
南インドの都市チェンナイのスラム街に暮らす幼い兄弟。
父親は何の罪でか投獄され、保釈金を要求されるが、
母親がいくら金を工面しようとも釈放してもらえない。
高齢の姑は働けず、母親の仕事だけでは生活が苦しく、
兄弟は学校に行かずに線路脇の石炭を集めて日銭を稼いでいる。
 
ある日、スラムの子どもたちの遊び場だった広場が立入禁止に。
工事の末にできたのは大規模なピザ店
有名な芸能人を招いてオープニングイベントが開かれる。
遠巻きにしか見ることを許されない子どもたちは、
初めて見るピザなる食べ物に興味津々。
 
食べてみたい。でも1枚のピザが300ルピー(約420円)。
これはスラムの1カ月の家賃よりも高い。
母親にねだったところでピザが買えるわけもなく、
兄弟はニンジンと呼んでいる顔見知りのおっちゃんに相談。
ニンジンは石炭がたんまりある場所をこっそり教えてくれて……。
 
子どもは残酷です。
特に兄ちゃんのほうときたら、もうピザのことしか考えられず、
母親が父親の保釈のために必死で働いているのに、
「パパなんかよりピザのほうがいい」と平然と言い切る。
諌める祖母には「食べて寝るしか能がないくせに黙ってろ」って。
そう言われたお婆ちゃんの悲しそうな目と言ったら。
 
なんとかピザ1枚分の金を貯めて喜び勇んで出かけたのに、
店先でガードマンから追い返される。
服装からスラムの子どもだと判断されたと思い込み、
今度はショッピングモールへ新しい服を買いに行くと決めます。
 
兄ちゃんには時折イライラさせられましたが、気持ちはわからなくもない。
そして、その兄ちゃんにただただついていく弟が可愛い。
 
スラムにピザ屋を出店して、スラムの人を排除する。
その感覚はどうなのよ。
金持ちにも貧乏人にも悪いことを考える奴はいて、
悪いことを考える奴同士で出し抜くことを考えているのもなぁ。
大地真央のCMじゃないけれど、「ここに愛はあるんか」と言いたくなる。
 
でも、愛はあります。
そもそもスラムに暮らす人びとに悲壮感はありません。
幸せか不幸せかなんて、まわりが決めることじゃない。
 
いろいろあって、最後にピザにありついた兄弟の言葉。
笑顔と共に心に残りました。
 
ちなみに、原題を英訳すると“Crow's Egg”、「カラスの卵」。
兄弟の名前は最後まで出てきません。
ふたりはカラスの卵、大きい卵は兄、小さい卵は弟。
そのまま育って。

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『チャンス! メイドの逆襲』

2020年05月18日 | 映画(た行)
『チャンス! メイドの逆襲』(原題:Chance)
監督:アブナー・ベナイム
出演:ローサ・ロレンゾ,アイーダ・モラレス,フランシスコ・ガットルノ,イザベラ・サント・ドミンゴ,
   マリア・アレハンドラ・パラシオス,マリア・クリスティーナ・パラシオス他
 
これもAmazonプライムビデオ見放題作品の中にあります。
たいして面白くはないんだろうなぁという予感に包まれつつ、
90分というほどよい長さに惹かれて鑑賞。
 
長さに惹かれただけでしたが、この国の映画は観た記憶がありません。
いずせにせよ珍しい。2009年のパナマ/コロンビア作品です。
 
コロンビア人のトーニャとパキーテが家政婦として雇われているのは、
次期パナマ大統領選に立候補した実業家フェルナンドの豪邸。
フェルナンド自身は貧しい家庭の出身ながら、
大金持ちの家庭に生まれ育った妻グロリアと出会って逆玉に乗った。
 
夫妻にはマリビとマリテという双子の高校生の娘と、
ダニエルという小学生の息子、計3人の子どもがいるが、
フェルナンドは仕事に忙しく、グロリアは自分のお手入れに忙しく、
子どもたちはトーニャとパキーテが育てたようなもの。
しかし可愛いのはダニエルだけで、
双子の娘の家政婦の扱い方はまるでグロリアと同じ。
 
夫婦と娘そろって贅沢三昧しているくせに、家政婦への給料は7週間も未払い。
仕送りをしなければ、故郷の家族が路頭に迷ってしまうと、
意を決したパキーテは夫妻に直ちに給料を払ってほしいと訴える。
これは前借りのお願いではなく、未払い分のことなのだと。
 
それでもなんだかんだと理由をつけて払おうとしない夫妻。
払わないまま一家でマイアミ旅行に発とうとするのを見て、
トーニャとパキーテは行動を開始。
家族を銃で脅して家に閉じ込めると、金を在り処を教えろと詰め寄るのだが……。
 
ないんですよね、お金なんてどこにも。
フェルナンドは金を使い込み、薄々それを感じていたグロリアもスルー。
自分の家は金持ちだと思い込んでいる娘たちは勝手し放題。
縛られて閉じ込められ、撃たれそうになってようやく判明する家族の事情。
 
縛られた手足がすぐ解けそうなのはご愛嬌。
トーニャのこともパキーテのことも大好きなダニエルだけは縛られることもなく、
これはただのゲームだからと聞かされてのんびりしています。
ダニエルを除けばとにかく腹立たしい家族だから、
トーニャとパキーテのことを思いっきり応援してしまう。
 
10年も働かせてやっているんだ、感謝しろ、家族だろ。
フェルナンドはそう言うけれど、何が家族なものか。
トーニャとパキーテのフルネームすら知らなければ、家族構成も知りません。
パナマでは家政婦の扱いってこんな具合なのかなぁと思うとつらい。
 
最終的にはいい話、というところまでは行きません。
フェルナンドは最後まで救いようのない男。
でも、パキーテと家政婦のふりをさせられたグロリアのシーンは面白く、
化粧はげはげで心情を吐露するグロリアにはちょっぴり同情も。
 
特別推すことはないですが、悪くもなし。
珍しい国の作品を観られたので良しとします。

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『ビューティフル・チャンス 優しい3つの奇跡』

2020年05月17日 | 映画(は行)
『ビューティフル・チャンス 優しい3つの奇跡』(原題:Three Doors from Paradise)
監督:ジョー・ロビアンコ
出演:ロバート・アロイ,カイリー・シルヴァースタイン,エリカ・ブーザー,
   デブラ・トスカーノ,ジョン・アナンチュア,ステイシー・ケスラー他
 
2018年のアメリカ作品。
これもAmazonプライムビデオ見放題作品のうちのひとつ。
 
日本で劇場未公開であっても、ネットでなんなと情報は拾えるものですが、
これはほぼ無し。原題を調べるのに少しだけ苦労しました。
低予算のインディペンデント系作品らしく、初めて聞く監督。
俳優も知っている人ゼロで、ときどき台詞に拙さを感じる役者もいる。
なのによくこれに字幕を付けて配信したもんだなぁと思うと同時に、
そのことに感謝します。とても温かい気持ちになれる作品です。
 
自閉症の青年ブランドンは施設で暮らしているが、
その施設が経営難に陥り、所長のステファニーと職員のジェリーは、
入居者たちを受け入れてくれる転居先探しに奮闘。
 
ぽつりぽつりと転居先が決まって行くなか、
ブランドンの場合はひとりで生活できるという判断が下り、
不安を抱えたままアパートで暮らしはじめる。
 
ブランドンは兵隊のミニチュア模型を並べることとジグソーパズルに没頭し、
食事もシリアルを食べるだけ。
隣部屋で母親と暮らす少女ローズが声をかけてくるが、返事もできない。
外に出ることもなく過ごしていたところ、
隣の隣の部屋の女性タミーリンが、壊れたドアノブを修理してほしいと言ってくる。
 
修理を済ませたブランドンにお礼の食事を届けたタミーリンは、
彼がジグソーパズル好きだと知って、近所のおもちゃ屋のことを教える。
さっそくおもちゃ屋を訪れたブランドンだったが、
お金の計算ができなくてパニック状態に。
たまたまそこを通りかかったローズが彼を落ち着かせ、支払いを手伝い……。
 
ローズの母親はヤク中の娼婦で、タミーリンの恋人はヤクの売人
ローズは本当に優しくてめちゃくちゃいい子。
そしてタミーリンも、恋人が人でなしだなんて不思議すぎる女性。
美人で優しくて、温かい心の持ち主です。
 
ブランドンがいた施設の所長のセンスがド派手すぎてワラけるのですが、
彼女のキャラもとても良い。
面倒見もよくて、入居者の幸せを心から願っているのがわかります。
 
不条理に虐げられてきた3人が立ち向かうとき。
オープニングで何があったかと思わせて、
エンディングでこういう話だったかと納得できる持って行き方も好き。
 
低予算であることはわかりすぎるほどわかる作品ですが、
ちょっとした拾い物だと思います。
優しい奇跡が起こるっていいなぁ。

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