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『奇蹟がくれた数式』

2016年10月28日 | 映画(か行)
『奇蹟がくれた数式』(原題:The Man Who Knew Infinity)
監督:マシュー・ブラウン
出演:デヴ・パテル,ジェレミー・アイアンズ,デヴィカ・ビセ,スティーヴン・フライ,
   トビー・ジョーンズ,ジェレミー・ノーサム,ケヴィン・マクナリー他

日曜日、テアトル系列のテアトル梅田とシネ・リーブル梅田をハシゴ。
まずはテアトル梅田で気になっていた本作を。実話に基づく。

インドの天才数学者シュリニヴァーサ・ラマヌジャン。
1887年、南インド・タミルナードゥ州で極貧のバラモン階級家庭に生まれた彼は、
十分な教育を受けていないにもかかわらず、数学に特異な力を見せる。

彼の頭の中には数式が降ってくる。
それを書きとめたノートをマドラス中の大学に持ち込み、雇ってほしいと懇願するが、
みすぼらしい格好をした若者のことなど誰も相手にしてくれない。
結婚したばかりの妻ジャーナキーを養っていかなければならないのに。

仕方なく港湾事務所に職を求めたところ、インド人上司が彼のノートに目を留める。
上司はラマヌジャンに仕事を指示するかたわら、
彼の数学の才能を埋もれさせたままではいけないと、イギリス人上司に直訴。
ラマヌジャンのノートの抜萃と手紙をイギリスの著名な学者たちに送る。

ほとんどが黙殺するなか、ただひとりだけ、驚き動揺した学者がいた。
名門ケンブリッジ大学トリニティカレッジのG・H・ハーディ教授は、
同僚のジョン・リトルウッドとともにラマヌジャンをすぐさま呼び寄せることに決める。

こうして妻をインドに残し、単身渡英したラマヌジャンだったが、
植民地出で学歴のない彼のことを色眼鏡で見る人がほとんど。
しかも直感で定理や公式がひらめく彼には、証明することの必要性が理解できず、
素晴らしい公式も証明できなければ人から認められないだと解くのにハーディは一苦労。

菜食主義者のラマヌジャンは大学の食堂では口にできないものばかり。
ろくに食べられず、買い物に出れば通りかかったイギリス人に殴られ、
かといって無愛想なハーディに相談することもできない。
次第に孤独と体調不良に苛まれてゆくラマヌジャンだったが……。

主役はデヴ・パテル演じるラマヌジャンのはずなのですが、
描かれるインドは通り一遍のもので、ちと残念。
美しい妻と、嫁をいびる姑の図もあまりいただけません。

対するイギリスは生き生きと描かれていて、役者たちが本当に素晴らしい。
このところ主演作が目白押し、売れっ子のアラ古稀ジェレミー・アイアンズがハーディ役。
優しい性格の持ち主リトルウッド役にはトビー・ジョーンズ
そのほか、ジェレミー・ノーサムケヴィン・マクナリーが同僚として出演。
ここに挙げたのは、できる者はできると認める柔らかい頭の持ち主役。
どんな時代も、どれだけ差別主義がはびこっていても、良心を持つ人はきっといる。
類い希なる知性は、金持ちから出るとは限らない。

タクシーのナンバー「1729」についての逸話が楽しい。
しょうもない数字のタクシーだったと言うハーディに、
「そんなことはありません」と応じたラマヌジャン。
「2通りの2つの立方数の和で表せる最小の数です」。
こんなふうに数字のことを考えられるのはとても楽しそうだけれど、
どうにもこうにも文系アタマの私は、数学者の頭の中が信じられません。(^^;

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