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米議員、中国の「一人っ子政策」を「大量虐殺」と非難

2011-06-03 | 日記
 中国の一人っ子政策に対して、米国から非難の声があがっているようです。



47NEWS」の「米議員、中国の一人っ子政策非難 「大量虐殺」と指摘」( 2011/06/02 09:41 )

 【ワシントン共同】中国の人権問題に対して強硬派として知られるクリス・スミス米下院議員(共和党)が1日、米議会内で記者会見し、1夫婦の子を原則1人に制限する中国の「一人っ子政策」が原因で、強制的な女児の人工中絶が多数行われていると述べ「大量虐殺だ」として、中国政府を強く非難した。

 民主化運動が武力弾圧され多数の死傷者が出た1989年の天安門事件の学生リーダー、柴玲さんも会見に同席し「天安門事件が毎日起きているようなものだ」と指摘。女児の人工中絶をやめさせるよう中国に圧力をかける必要性を強調した。




 報道では、「中国の人権問題に対して強硬派として知られるクリス・スミス米下院議員」と報じられていますが、

   「一人っ子政策」を「大量虐殺だ」というのは、
                「やや」無理がある

と思われます。要するにクリス・スミス下院議員は「反中派」なのでしょう。

 もっとも、アメリカは宗教(キリスト教)の影響が強く、人工中絶に否定的な意見も有力です。したがってただちに「反中派」と決めつけるわけにもいかないのですが、



 今後の米中関係にも影響すると思われますので、この発言は重要になってくるかもしれません。



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2011-06-03 | 日記
田中宇 『日本が「対米従属」を脱する日』 ( p.66 )

 米国の「自滅主義」は、多極主義者がホワイトハウスを握っているにもかかわらず、世論操作(マスコミのプロパガンダ)などの面で米英中心主義者(冷戦派)にかなわないので、米英中心主義者の戦略に乗らざるを得ないところに起因している。相手の戦略に乗らざるを得ないが、乗った上でやりすぎによって自滅して相手の戦略を壊すという、複雑な戦略がとられている。

(中略)

 やりすぎによる自滅戦略の結果、米国はひどい経済難に陥り、ドル崩壊が予測される事態になっている。多極化が進むと、ドルは崩壊し、世界の各地域ごとに基軸通貨が複数生まれ、国際通貨体制は多極化する。ドルが崩壊すると、米国は政治社会的にも混乱が増し、米連邦が崩壊するかもしれない。米議員のロン・ポールは最近、ドル崩壊による米連邦崩壊の懸念を指摘している。多極主義者の資本家は、自国を破綻させ、ドルという自国の富の源泉を潰してもかまわないと思っているというのだ。
 ニューヨークの大資本家は、表向きは「愛国心」を強調し、節目ごとに自社ビルに星条旗を掲げたりしている。しかし彼らの本質は、16~17世紀にアムステルダムからロンドンに本拠を移転し、19世紀にロンドンからニューヨークに移り、移動のたびに覇権国も移転するという「覇権転がし」によって儲けを維持しているユダヤ的な「世界ネットワーク」である。100年単位で戦略を考える彼らは、自分たちが米国民になって100年過ぎたからといって、米国に忠誠を尽くすようになるとは考えにくい。
 ユダヤ的ネットワークという点では、資本家だけでなく諜報機関やマスコミも同様だ。フランス革命以来の国民国家革命や社会主義革命など、人々に「国民」や「人民」の幻想を植え付けて愛国心を涵養し、国家の財政力を増大させるプロパガンダのシステムを作ったのは、まだ欧州にいた時代の彼らの祖先である。
 つまり、多極主義者と米英中心主義者は、どちらもユダヤ的ネットワークに巣くう人々であり、ユダヤ人どうしの対立である。「ユダヤの敵はユダヤ(他の勢力は、敵視が必要なほど脅威ではない)」というのは、よく言われることだ。ネットワークを、資本の回転のために使いたい人々と、帝国の維持のために使いたい人々がいて、延々と暗闘・談合しているともいえる。ユダヤ人が一枚岩だと勘違いしている分析者は談合の方ばかりに目がいくが、もし彼らが談合だけで暗闘していないのなら、世界はもっと安定する。金融危機や大きな戦争が何度も起きたりしない。
 90年代末からのイスラム敵視策を皮切りとする4回目の暗闘は、多極主義者の優勢になりつつも、まだ続いている。今は見えていないが、米英中心主義者の意外な反攻が、まだあるかもしれない。逆に反攻がなければ、このまま英国やイスラエルは破綻を強めていく。スコットランドは独立して連合王国(UK)は崩壊する。イスラエルは、中東大戦争で核兵器を使ってハルマゲドン的に破滅するかもしれない。それを防ごうと、ネタニヤフ(イスラエル首相)はもがいている。ネタニヤフは、本当は和平をやりたいのだが、国内外の右派勢力(入植者、ネオコン)に邪魔されている。
 米英中心主義者による延命策や逆流策がうまくいかなければ、ドルは崩壊し、米英中心の世界体制は崩れ、米国は通貨と財政の破綻と、もしかすると米連邦の解体まで起きる。しかし米国が破綻するのは、英国など覇権を維持したい勢力に牛耳られてきた状態をふりほどくためであり、米国は恒久的に崩壊状態になるのではなく、システムが「再起動」されるだけである。

(中略)

 最終的に米国は、西半球の国、米州大陸重視の国是で再生し、カナダ、メキシコ、中南米諸国と協調するようになる。太平洋は、米中2国で共同管理になっていくだろう。だから中国は海軍力を拡大して空母を作り、米政界は「米中G2」を構想するとともに、中国の空母建造を助けると表明したりした。


 米国では、米英中心主義者と多極主義者との暗闘・談合が続いている。どちらの勢力もユダヤ人に支配されており、ユダヤ人どうしの暗闘・談合である。最終的に米国は「北米・中南米地域の地域覇権国」になり、「アジア地域の地域覇権国」となる中国との間で、太平洋は共同管理されるようになっていくだろう、と書かれています。



 米国(または米政界)がユダヤ人に支配されている、と著者は主張していますが、それを裏づける証拠がまったく示されておらず、この部分は説得力がありません。「ユダヤの陰謀」といった話は(たまに)聞きますが、裏づけとなる根拠が示されなければ、信用するわけにはいかないと思います。



 また、著者は
 ニューヨークの大資本家は、表向きは「愛国心」を強調し、節目ごとに自社ビルに星条旗を掲げたりしている。しかし彼らの本質は、16~17世紀にアムステルダムからロンドンに本拠を移転し、19世紀にロンドンからニューヨークに移り、移動のたびに覇権国も移転するという「覇権転がし」によって儲けを維持しているユダヤ的な「世界ネットワーク」である。100年単位で戦略を考える彼らは、自分たちが米国民になって100年過ぎたからといって、米国に忠誠を尽くすようになるとは考えにくい。
と述べ、資本家による「覇権転がし」を主張しています。

 私も、資本の移動とともに、覇権も移動してきた歴史があることは認めますが、

 それは資本家の「覇権転がし」などではなく、たんに「先進国からの投資によって産業が発展し、興隆してきた新興国には、資本が蓄積される」というにすぎないのではないでしょうか? つまり、著者は「事実として観察される現象」を、「資本家の意図的な覇権転がし」と誤解しているのではないか、ということです。資本家による「覇権転がし」があったならば、ほとんどの資本家はアメリカに移住したはずですが、ヨーロッパにはいまなお、資本家がいます。



 著者は「ユダヤ」であるとか、「覇権転がし」など、やたらと「陰謀論的」ですが、そのように考える必要はないと思います。



 次に、アメリカが南北アメリカ大陸の地域覇権国になり、アジアの地域覇権国となる中国との間で、太平洋が共同管理されるようになっていくだろう、という予測についてですが、

 アメリカの力は以前に比べれば衰えたとはいえ、まだまだ圧倒的です。新聞などの報道は「変化」を報じるので、アメリカの「衰退」が強調されがちですが、アメリカの政治・経済・軍事力は、いまだ圧倒的ですし、中国などは比べ物になりません。したがって、アメリカと中国とで「太平洋は共同管理されるようになっていく」ことなどは、あり得ないとみてよいと思います。

 そもそもアメリカが中国と「太平洋の共同管理」を望んでいるなら、アメリカが米軍沖縄基地に固執するはずがありません (「宜野湾市長の主張もおかしい (普天間基地移設問題)」など参照 ) 。

 米中2国の「共同管理」がなされるとしても、それはすくなくとも、中国が民主化された後の話ではないかと思います (「ヒラリー・クリントン国務長官の外交問題評議会での講演」・「民主化が前提の「政治面での多極化・核兵器のない世界」」参照 ) 。



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