言語空間+備忘録

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当面、北朝鮮は核廃棄しない

2011-06-05 | 日記
田中宇 『日本が「対米従属」を脱する日』 ( p.85 )

 北朝鮮は、6ヵ国協議に再参加して核廃棄を進める見返りに、米国に何を求めるだろうか。
 私が見るところ、北の要求は3つある。
 1、韓国からの米軍撤退
 2、米朝国交正常化
 3、アジア太平洋地域にある米軍の核兵器の撤去
 この3点である。
 いずれも、戦後のアジア太平洋の国際政治体制の根幹を変更する話であり、日本の国是にも大きな影響を与える。従来の価値観からすると「米国がそんなことを了承するはずがない」となるが、国際政治は今、価値観の大転換期に入っている。従来の価値観は、むしろ現実を見えなくする。
 韓国からの "米軍撤退" は今どうなっているかというと、在韓米軍が持っていた有事指揮権を2012年に韓国軍に委譲する予定で、米軍はすでに出ていく方向にある。北が核廃絶し(北が核の一部を隠し持ったとしても米国は大目に見る)、在韓米軍が撤退を開始すれば、米朝は朝鮮戦争を正式に終わらせ、米朝国交を正常化できる。
 3番目の「北が核廃絶する代わりに、米国はアジア太平洋の米軍の核兵器を全撤去する」という話は、それ自体だけを見ると、とんでもなく非対称だ。だが、先に米露で交渉を開始した米露中心の世界的な核軍縮の流れの中で見ると、オバマ政権はすでに世界的に米軍の核兵器を廃絶していく方向性を打ち出していることがわかる(この点は次項「オバマの核軍縮」で詳しく分析する)。
 米国が核廃絶に向かうと、日本に対する「核の傘」が失われかねないので、日本では麻生首相らが「北が核廃棄しないなら、日本も核武装を検討せざるを得ない」という趣旨の発言をしたり、元外務次官が1960年代に核兵器搭載の米軍艦が日本に寄港できるようにする日米の秘密協定が結ばれていたと既成事実を暴露したりする展開が起きている。

(中略)

北朝鮮をめぐる外交交渉の今後の展開が注目される。


 北朝鮮が核廃棄に応じる「条件」を、著者が「推測」しています。



 上記3条件のうち、「1、韓国からの米軍撤退」はすでに既定の方針なので問題にする必要はないでしょう。また、「2、米朝国交正常化」についても、「条件」「見返り」というよりは、「必然の結果」と考えられることから、とくに問題はないでしょう。

 したがって問題は、「3、アジア太平洋地域にある米軍の核兵器の撤去」ということになります。



 しかし、この3番目の「条件」は、おそらく米国が拒否するのではないかと思います。最新ニュースを見ても、米国がこの条件に応じるとは考えられません。



47NEWS」の「米が80機超の新型爆撃機を計画 核搭載、無人化も可能」( 2011/06/04 15:55 )

 【ワシントン共同】米国防総省が核兵器搭載可能な新たな長距離爆撃機について、無人のまま遠隔操作ができる機能を持たせ、計80~100機を調達する計画をまとめていることが4日、分かった。2040年までの米軍の航空機調達計画として議会に提出した資料に盛り込まれた。

 中国が西太平洋で米軍の展開を阻止する能力を強めていることを踏まえ、米領グアムのアンダーセン空軍基地への配備が想定される。20年代の運用開始を目指しているもようだ。

 計画によると、米軍は敵地に侵入できる爆撃機を「長距離攻撃能力の中核的要素」と位置付けている。有人飛行と無人飛行が可能で、1機当たり5億5千万ドル(約440億円)を予定する。




 したがって、あり得るとすれば、「朝鮮半島の非核化」すなわち「米軍は韓国に核武装を認めず、かつ、米国の核兵器を韓国領内に持ち込まない」という条件になります。

 しかしながら、北朝鮮は中国とかならずしも親密であるとはいえず、北朝鮮は「中国の脅威」を感じているはずです。

   中国が核廃棄しないかぎり、
   「朝鮮半島の非核化」も、北朝鮮には不利に作用する

と考えられます。とすれば、北朝鮮が「3、アジア太平洋地域にある米軍の核兵器の撤去」を要求することはないと考えられます。



 北朝鮮が核廃棄するなら、そのとき北朝鮮は「米国の核の傘に入る」か「中国の核の傘に入る」かの選択を迫られます。これは北朝鮮にとっては厳しい選択で、(北朝鮮としては)できれば選択したくないでしょう。

 逆にいえば、北朝鮮としては、核廃棄などせず、「米国と中国を天秤にかける」状態が最もよいのであり、現状を維持し、「米中(および日韓)から利益を得る」戦略が最善であると考えられます。

 したがって北朝鮮の核廃棄は、当面(大きな状況変化がないかぎり)、進展しないものと予想されます。



 著者は「北朝鮮をめぐる外交交渉の今後の展開が注目される」と述べていますが、「注目したところで、大した変化は起きない」のではないかと思います。



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