否認の病

アルコール依存症は否認の病気だといわれる。周囲が「その飲み方おかしいよ」と指摘しても、「そうじゃない、ただお酒が好きなだけ。みんなと同じだよ」と飲み続ける。そして、仕事での失敗、経済的破綻や身体的障害、家族崩壊が起こるまで、自分の飲み方が病的であることをあくまで否認し続ける。

これはギャンブル依存症、買い物依存症などの行動依存症者などにも共通してハッキリと現れる症状だ。認めたら、それによって得られる快感を手放すことになり、きっと無意識のうちに、それを手放したとき、自分には何も快感となるものが残らないこと、ぽっかりと空いた穴を埋め合わせるものが外に何もないんじゃないかと、底知れぬ恐怖感を覚える。

究極、依存症は深い孤独感と自己愛のゆがみが原因であり、そこから目をそらそうとするための遮蔽幕のようなものではないか。ビジョンを失ったとき、人は何かにしがみつきたくなり、死の本能を呼び覚ますのではないか。