MELANCOLICO∠メランコリコ!

ゆめと心理と占いのはなし
Por donde, amor, he de ir?
 Rosalia de Castro

モンスター

2015-12-21 14:32:37 | PSYCHOLOGY2

彼女は以前にもまして体重を増やしていた。七分そでのワンピースから出る腕は赤ちゃんのように肘や手首、指の付け根にクビレがあった。10年ほどまえにお手伝いしていた小劇団の公演後の飲み会に参加したら、いつのころからか中心メンバーになっていた彼女が生き生きとして声も大きく、あらゆる会話の中心になっていたのには驚かされた。

ぼくがあまり行かなくなってから参加してきたのが彼女だ。地味な服装で化粧もなく声も小さく、おどおどしていたというのが第一印象だったけど、だんだんと中心メンバーと極端にべったりするようになって、逆に古株で中心メンバーでない人たちとは話しもしようとせずに、居づらくなる雰囲気を作り始めていた。彼女にとってその時期は「のし上がる」ための賭けだったのか、単に人づきあいが苦手だったからなのかわからないけど、振り返ればあの時期の彼女は一生懸命に自分の居場所を作ろうと戦っていたのかもしれない。

昨日、数年ぶりで公演に行ったら、彼女は服装も派手になって、声も大きく、観に来てくれた一見さんたちと積極的に話をしていた。ただ、ぼくはもちろん、むかしからずっと練習場を提供している男性ともまったく視線を合わせようとせず、何となく、大柄な彼女が大きな壁となって、劇団のリーダーと他のメンバー、関係者の間に立ちふさがっているような印象が残った。リーダーはその男性やぼくと絶対的な信頼関係を築いているけど、少し天然なので状況に気付いてないような、知らず知らずのうちに彼女にとりこまれているような感じだった。

公演前に、その男性と話をする時間があって、ぼく自身が「いまが岐路かな・・・」って率直に話したとき、少し沈黙があって、「岐路、岐路ね・・・」と、妙に感慨深げだったのが、公演後の飲み会で何となく理解できたような気がした。劇団が岐路にあるということと、彼と劇団の関係が岐路にあるっていうことなのかもしれない。実際、10年前の中心メンバーは、2人が病に倒れ、数人が離れてしまい、1人が他メンバーとの不和で来れなくなっていた。ぼくにとってこうした離散は耐えがたいことだったけど、彼女はその経緯を、その経緯を知らない一見さんたちに、まるで勝ち誇るかのように身振り手振りを加え話していた。


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