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フランス 「マクロン法案」働き方は変わるか

2015-03-08 07:30:00 | 報道/ニュース

2月23日 キャッチ!


フランスのバルス首相は議会下院に当たる国民議会で
マクロン経済相がまとめたいわゆる「マクロン法案」を憲法上の規定を行使して採決を経ずに採択した。
(バルス首相)
「成果は数年後に現れますが法案を通すため政府は何でもします。
 この法案はフランスに恩恵をもたらします。」
法案を取りまとめたのは去年8月 36歳という若さで経済相に就任したエマニュエル・マクロン氏である。
彼の名前をとったこのマクロン法案は
様々な分野の規制緩和を行い景気回復を目指すというもので100を超す条文がある。
この中にはたとえば初めての試みとして
パリのシャンゼリゼ通りやニース、カンヌなど観光客が多い地域の商業圏を「国際観光エリア」として
毎日午前0時までの営業を認めるというものもある。
しかし労働環境の悪化を懸念して身内の与党社会党からも法案に反対の声が相次いだため
バルス首相は年に1回しか行使できない憲法上の規定を行使して
議会の採決を経ずに法案を採択する道を選んだ。
今回の法案の中で特に議論を呼んだ条文が80条の日曜営業の規制緩和である。
長年フランスではキリスト教の思想などから日曜日は“家族で過ごす安息の日”とされている。
労働法でも日曜日は休む日と規定され原則として営業はできないが
特例として小売店は年間5日間まで日曜日の営業が可能で
県などによっては条例などで日曜日の営業が認められている。
今回のマクロン法案では日曜営業の規制をより緩和して年間12日まで営業できる日を増やそうとしている。

労働時間と日曜営業の問題でフランスではある論争が起きている。
去年 最優秀パン職人に輝いたカズヌーブさんは毎日休みなしにパンを販売。
突然の警察の呼び出しに驚いた。
ランド県では条例によりパン屋は週1日の休業が義務付けられていたからである。
(パン職人 カズヌーブさん)
「労働監査官が調査のために来て警察からは悪党扱いを受けて訊問されました。
 『私たちはパン職人を尋問するほど暇じゃないんだ』とはっきり言われました。
 次は裁判所行きです。」
週1回休業日が出来たことにお客さんも驚いている。
(買い物客)
「びっくりしたよ。
 法律なら仕方ないね。」
「休まざるを得ない・・・。
 バカバカしい条例だね。」
一方で条例を支持する声もある。
その多くが従業員が少なく週7日の営業が不可能な小さなパン屋である。
(パン店 従業員)
「すべてのパン屋が週7日営業ができるワケではありません。
 できない店はシェアを失いそのぶんが7日営業できるパン屋の儲けになります。
 特に大型店が有利になるのです。」
カズヌーブさんは苦い思いをしている。
利益が下がり従業員を週2日休ませなくてはならなくなった。
(パン職人 カズヌーブさん)
「損失は25万ユーロ(約3,400万円)です。
 近いうちに従業員を何人か解雇しなければならないでしょう。」

フランスでは外資系企業やネット通販などの台頭で小売店の中で生き残りをかけた競争がますます激化している。
(一橋大学大学院 田中拓道准教授)
「法案の可決は社会党政権が政策転換を行ったという帰結だと思う。
 マクロン経済相はもともとサルコジ政権で自由主義的な企業寄りの政策を推進する委員会のスタッフだった。
 オランド政権は去年8月にいわば人々の購買力を強化する分配政策から
 企業寄りの自由主義的な政策に転換を図ったということになる。
 今その延長上にマクロン法案が提出されたが
 これを巡って社会党の中で分裂が起こり
 こうした手段を取らざるを得なかった。
 労働組合から見れば日曜労働の禁止というのはいわば自分たちが勝ち取った休息の権利だと考えられていた。
 休息の権利を侵害して強制的に働かされることに反対が強い。
 去年12月に行われた世論調査で
 国民の6割は日曜労働の規制緩和に賛成で
 過半数は労働の休息の権利よりも今は経済成長を優先すると考えている。
 今回の法案は一部業界の規制緩和や日曜労働が年5日間から12日間の拡大など
 まだ一握りの改革で雇用規制全般に踏み込んでいるとは必ずしも言えない。
 おそらく長期的にはフランスもフレクシキュリティ(転職などしやすい柔軟な労働市場と手厚い社会保障)に向かうと思うが
 今回の法案だけではまだ入り口に立っているだけだと思う。
 非常に大きな転換点となる可能性はあるがマクロン法案は先ほども言ったように
 ごく一握りの業界の改革で労働規制全般に踏み込んだものではない。
 この段階で憲法49条3項を使わなければ可決できないという状況にあるので
 今後さらに自由主義化が進んでいくのはかなり難しいのではないかと見ている。」

 


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