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ブータン 開国と経済成長で揺れる「幸せの国」

2018-11-13 07:00:00 | 報道/ニュース

10月18日 国際報道2018


雄大なヒマラヤ山脈を望むブータン。
経済的な豊かさよりも国民が幸せと感じる度合いを重視する国づくりを目指してきた。
GNH「国民総幸福」という指標があることで世界的にも知られている。
インドと中国に挟まれたブータンは
人口80万。
農業や観光が主な産業である。
長く鎖国状態を続けていたが
2000年ごろからワンチュク前国王が開かれた国へと徐々に政策を変え近代化を進めている。
インドなどの支援を受けインフラを整備。
水力発電に力を入れ
電力を輸出して外貨を獲得し
ITや製造業など新たな産業の育成に努めている。
これにより国民の所得が上がり消費が拡大。
教育水準も向上した。
しかし開国と近代化は弊害も生んでいる。
産業が育成途上のため若者の失業率は約13%に達している。
一方 開国によって違法な薬物が海外から流入するようになった。
全人口の約4割を占める若者の中には
急激な社会の変化に戸惑い麻薬依存になる人が出てきている。

ブータン社会にはいま経済成長という大きな波が押し寄せている。
街を歩くといたるところでインフラの整備が進んでいる。
外国からの投資が増えたことで国民の所得は上昇。
インターネットや携帯電話が普及して
生活はこの20年で様変わりした。
繁栄の陰で社会に暗い影を落としているのが若者たちに広がる薬物依存である。
薬物犯罪で逮捕される若者は年間約1,000人。
この5年間で3倍に増えた。
薬物依存症の男性(21)が持っていたのはブータンで流通しているカプセル型の合成麻薬。
国境監視のゆるい隣国インドから多く密輸されている。
経済繁栄をもたらした開国により
皮肉にも合成麻薬などが大量に流入するようになっていたのである。
(薬物依存症の男性)
「簡単に手に入るから
 好奇心と出来心で手を出してしまったんです。」
14歳のときに興味本位で手を出したこの男性。
深みにはまるきっかけがあった。
高校を卒業しても仕事を見つけられなかったことである。
失業状態が続くにつれて薬物の摂取量が増えていったのである。
(薬物療法続く依存症の男性)
「ちゃんとした仕事も見つけられない。
 今では毎日 最低でも10錠は必要になってしまった。」
一昨年の若者の失業率は13,2%。
全体平均の6倍にのぼる。
経済発展にともなって高等教育を受けた若者が増えたものの
受け皿となる企業は十分でないため
失業者が増え
薬物のまん延につながったと指摘されている。
(地元紙の記者)
「学校を卒業する若者がみんな職に就けるわけではないのに
 多くの若者は肉体労働ではなくオフィスでの仕事をしたがる。
 働いていない若者が薬物に軽い気持ちで手を出す傾向がある。」
若者たちに広がる薬物依存とどう向き合うのか。
依存症からの脱却を支援する民間団体のツェワン・テンジン代表。
自らも薬物に依存した経験があり
同じ苦しみを若者たちにさせたくないと5年前に団体を起ち上げた。
(薬物依存症患者の支援団体 ツェワン・テンジン代表)
「薬物によって楽しみや健康な精神 人間関係 金銭などすべてを失ってしまうんだ。」
これまでに約400人を更生させたテンジンさん。
薬物の悩みを話し合うグループカウンセリングの場を設けて
若者たちに社会に責任を持つことの大切さを学んでもらう。
(スタッフ)
「薬物を必ず絶つという強い意志を持ちなさい。」
2か月前に入所したドゥプトォ―・ワンディーさん(20)。
15歳で薬物をおぼえ薬物の所持で半年間刑務所にも服役した。
通っていた高校に戻り
いつか社会に復帰したいと考えている。
(ドゥプトォ―・ワンディーさん)
「どうにかしてやめたい。
 苦痛から逃れたいと思ってここに来た。」
規則正しい生活で身心の健康を取り戻せば団体が仕事の世話もする。
失業こそが若者の薬物依存の根本だという考えからである。
(ドゥプトォ―・ワンディーさん)
「ここに来て僕は薬物を絶つ決心を持てた。
 いつか僕もみんながしてくれたように薬物依存症患者を助けたい。」
(ツェワン・テンジン代表)
「若者が薬物などに走る原因の1つは失業だ。
 政府は学校や地域で薬物依存を防ぐ対策を強化し国家の政策とすべきだ。
 大事なのは人々の健康と幸福だ。
 我々には国民総幸福の理念がある。」
開国と経済成長の陰で
そのひずみが社会をむしばみかねない現実。
「国民総幸福」という固有の価値観を守り切れるのか。
ブータンはその正念場に立たされている。




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