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ベトナム 時代の流れで変わるイラスト

2015-03-30 07:30:00 | 報道/ニュース

3月14日 おはよう日本


ベトナムの町中で見かける色鮮やかな看板。
フランスに勝利した“ビエンビエンフーの戦い”から60年を記念したイラストである。
こうした看板でベトナム政府は国民に政策を宣伝したり協力を呼び掛けたりしている。
ベトナムでイラストを国威発揚に使い始めたのは“独立の父 ホー・チ・ミン”と言われている。
ホー・チ・ミンは1940年代の植民地時代に民衆の団結を呼びかけた絵を描いた。
時代を映し出す作品たち。
“ニクソンよ 血で償え!”はベトナム戦争中に士気を高めるために描かれたもの。
“1975年 統一の春”は戦争終結と南北ベトナムの統一を祝ったもの。
ベトナムには各地方の政府に少なくとも1人
全国では700人以上の政府専属画家がいる。
イラストの特徴は色鮮やかな色彩とシンプルな構図。
そして簡潔な文言。
こうすることで国民にメッセージが明確に伝わると言う。
(元政府専属画家)
「こうしたイラストは新聞などと違って一目で内容がわかるのが強みです。
 政府にとってはメッセージを伝えるうえで一番効果的な手段です。」
しかし70年以上にわたり国威発揚に利用されてきた政府によるイラストは
最近は存在感が薄くなっている。
首都ハノイにあるギャラリー。
並べられているのは1950年代~80年代に政府が各地に掲示していたイラストである。
かつて国民を鼓舞したイラストは
今はノスタルジックなお土産として外国人が買い求めるものにになってしまった。
(観光客)
「シンプルだけど味があるね。
 リビングやキッチンにちょうどいいよ。」
政府のイラストに代わって最近大通りで目立つようになってきたのが企業広告である。
(市民)
「いい場所には政府の宣伝を見かけなくなりました。
 企業の広告ばかりになりましたね。」
「チラッと見るぐらいで政府のイラストには関心ありません。」
さらにインターネットの普及で
イラストは個人の意見を発表する手段になっている。
企業広告のイラストレーター ホアン・アイン・ドクさんは
経済的に豊かになるにつれ人々のモラルが低下していると感じてきた。
(イラストレーター ホアン・アイン・ドクさん)
「従来の政府の宣伝ではなく
 個人の意見を発信するイラストを描きたいと思っています。
 それは社会問題に対して自分の意見を表現するためのものです。」
ドクさんは仕事の合間に社会問題などを扱ったイラストを毎日1枚ずつ描き
インターネットに投稿を始めた。
道端に平然とゴミを捨てた女性に怒りをおぼえて描いたイラスト。
いくら着飾ってもゴミ袋のように中身が空っぽではだめだというメッセージである。
(ホアン・アイン・ドクさん)
「自分たちも同じような怒りを覚えたことがあるという反応がたくさんありました。」
去年5月 南シナ海で中国とベトナムの船が衝突し中国に対する抗議デモが広がった。
ドクさんが描いた中国をけん制する一方で必死に抑える警備隊のイラストは
特に大きな反響を呼んだ。
“国内での衝突は何も生み出さない 仕事に戻ろう”と呼びかけた。
抗議デモの対象が外国企業に飛び火していく中でいち早く自制を促したと
このメッセージに多くの人が共感した。
新聞にも大きく取り上げられ
この絵を印刷して張り出した工場もあったという。
(ホアン・アイン・ドクさん)
「投稿を見た人たちがデモや暴動に参加しないようインターネットで呼びかけてくれたんです。
 ユーモアたっぷりに描くことで
 笑いながら社会問題について考えてくれればと思います。」
政府からのメッセージを人々に伝え続けてきたイラスト。
国の統一から40年を経て
メッセージの送り手は政府から市民に移りつつある。



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