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二つよいこと、さてないものよ

2011-12-18 13:20:14 | 編集手帳



  12月15日付 読売新聞編集手帳


  古い俗謡にある。
  〈二つよいこと、
   さてないものよ、
   月が漏るなら雨が漏る〉。
  夜、屋根のほころびから月光が差す。
  「こいつァ風流だね」。
  喜んでいると、
  何のことはない。
  雨も漏る。

  希望者全員を65歳まで再雇用することを企業に義務づける、
  という厚生労働省の方針を聞いて、
  俗謡の文句を思い浮かべた。

  厚生年金の支給開始年齢が現在の60歳から段階的に65歳まで引き上げられると、
  60歳で定年を迎えて収入はなく、
  年金ももらえない「無収入・無年金」の人がいずれ現れることになる。
  厚労省案はそれを避ける手だてだが、
  どうだろう。

  年輩層の再雇用に食われて今度は、
  若年層の就職難が深刻の度を増さないか、
  気がかりである。
  二つよいこと、
  さてないものよ。
  制度に小手先でつぎはぎの修繕をしていれば事足りる時代はもう過ぎたのかも知れない。

  第一生命保険の名物企画「サラリーマン川柳」にはかつて、
  厳しい雇用情勢を詠んでも楽しめる名作が多かった。
  〈この俺を雇わないとは目が高い〉
  〈『窓際』もいまや高嶺の激戦区〉
  〈新社員 紹介されたら父だった〉等々。
  もう心からは笑えない。

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