10月21日 経済フロントライン
大画面で繰り広げられる格闘ゲームの熱戦。
ゲームをスポーツとしてとらえる eスポーツ。
すばやい指さばき
とぎすまされた集中力。
世界最高峰のプロゲーマーたちが観客を沸かせる。
(観客)
「プロ野球を見るのと同じように
すごいプレーを見ると自分も盛り上がることができる。」
東京秋葉原には専用の競技場も作られ
多くの若者でにぎわっている。
(e-suports SQUARE AKIHABARA 店長 高橋晃平さん)
「前年から比べて2倍の来場者数。
大きなビジネスチャンスを見出している。」
こうした人気にゲーム業界以外からも続々と企業が参入。
プロゲーマーのユニフォームにはスポンサー企業のロゴがぎっしりと入っている。
(スポンサー企業の食品メーカー)
「我々が今まで取れていなかった新しい顧客の開拓ができる。」
自分でするものから見るものへ大きく変化するゲーム。
国内のゲームの市場規模(許年)は過去最高の1兆3,801億円。
さらに伸びようとしている。
その原動力の1つとして期待されているのが見て楽しむゲーム eスポーツ。
観客はプロ選手の技を楽しむ。
eスポーツは2022年のアジア大会で正式競技に採用されている。
まるで格闘技のような選手の入場。
観客を盛り上げる実況。
9月に開催された東京ゲームショーの注目イベント eスポーツの大会である。
会場には千人もの観客が詰めかけた。
優勝賞金100万円をかけ
国内だけでなくアメリカや台湾などから世界トップクラスの選手が出場した。
戦うのは人気の格闘ゲーム「ストリートファイター・ファイブ」である。
トーナメントを勝ち上がり決勝に進んだのは2人の日本人選手。
格闘ゲームのスペシャリスト ネモ選手と
東大出身のプロゲーマー ときど選手。
勝敗を分けるのは
相手に一気にダメージを与える連続技をいかに決めるかである。
ネモ選手が繰り出した攻撃は
相手にダメージを与えたあと
飛び蹴り パンチ 頭突き パンチ 頭突き パンチ タックル
相手に防御させず
7連続攻撃を決めた。
その間 わずか4秒。
こうした連続技はボタンを押すタイミングがピタリと合わないと繰り出せない。
わずか1/60秒ずれると決まらないのである。
(観客)
「本物のプレーを見に来た。」
「日々 鍛錬した力というものをぶつけ合うところがすごく熱くて。」
およそ10分の激戦を制したのはネモ選手だった。
(プロゲーマー ネモ選手)
「今日 自分の動きがいいなと感じていた。
他の選手の試合を観ているとちょっとミスが多いと思っていたので
自分に分があると思っていた。」
ネモ選手は国内に約50人いるとされるプロゲーマーの1人である。
試合に勝つため日々研究しているのが
ライバルたちの過去の試合。
攻撃や防御のくせなどを分析している。
鍛錬の結果
今年5月にはフランスで開催された大会で優勝するなど
世界的に活躍。
今年の賞金総額は400万円を超えている。
(ネモ選手)
「今年は稼いだなという感覚がある。
自分がすごいプレーをしたら観客が受け入れてすごい歓声が上がる。
この業界を盛り上げていきたい。」
eスポーツはアメリカやドイツ 韓国などで盛んで
巨額の賞金が懸けられた大会が連日のように開かれている。
ネットの普及で海外の大会の様子を視聴できるようになり
日本でも人気が出始めた。
海外の大会を何度も感染したという青木美恵さん。
4年前からアメリカやカナダ 韓国など8か国を訪れ
世界のプロゲーマーの熱戦を間近で見てきた。
国内外のeスポーツの大会を観戦したりグッズを買ったりするなど
これまで100万円以上使ってきたと言う。
(eスポーツファン 青木美恵さん)
「カッコいいんですよ 単純に。
プロゲーマーが出ている大会にはすべていけるように調整して頑張ります。」
10月7日 経済フロントライン
きょうこばぁばさん(61)。
フルタイムで介護の仕事をしながら
“彩りのある夕食”を毎日工夫しながら作っている。
新しいことが大好きで
4年前からインスタグラムを開始。
日々の記録として料理の写真を投稿してきた。
この日作っていたのは“海鮮ちらしずし”。
(きょうこばぁばさん)
「ショウガなんかクルクルッと巻いただけでできるので。
どーんと出した時の迫力は他の人に負けたくないといつも思っている。」
フルタイムで働く女性が手をかけずに作れるインスタ映えする料理。
働く女性たちの間で夕食の参考にしたいと人気を集め
フォロワー数は2万7,000人にもなっている。
(きょうこばぁばさん)
「私みたいにプロじゃないのに“いいね”“すてきね”と言われるのは励み。
インスタに出して良かったと前向きになれる。」
きょうこばあばさんのインスタグラムには企業も注目。
出版社の目にとまり
今年の夏には本になった。
さらに“インスタグラムの載せてもらえれば”と商品を送ってくる企業もあると言う。
(きょうこばあばさん)
「商品モニターというかテストというか
“これを使ってみてください”とか送ってくる企業の方もいる。」
実際にシニアのインフルエンサーにアプローチを始めている企業もある。
有機野菜などの宅配サービスを手掛ける会社である。
現在利用者の多くが40代以上。
将来シニアの市場が伸びるのではないかと考え
この日はインフルエンサーに話を聞くことにした。
奈良県に住む梅澤薫さん(68)である。
もともとはパソコンやタブレットが好きでインスタグラムを始めた。
インスタグラムで風景やペット
料理など5つのアカウントを持っていて
フォロワーは全部合わせると約8,000人。
自分のようにインスタグラムで活躍するシニアは増えていると言う。
(マイクロインフルエンサー 梅澤薫さん)
「フォロワーに同年代は多い。
素晴らしい写真を撮る方もいる。
インスタグラムはそんなに難しいものではない。
自分の趣味を生かす場所だと思う。」
この会社の担当者はシニアのインフルエンサーを活用することに大きな可能性があると感じている。
(オイシックスドット大地 広報 西田尚子さん)
「どうしても私たちも担当するものがそこまでシニアの年齢ではないので
弊社の定年が60歳だったりする。
リーチするのが60~70代であればそのの方と同年代の目線で
弊社のサービスをいいと思ってもらって
その情報を広めてもらえるのは利点。」
10月7日 経済フロントライン
インフルエンサー=世間に影響を与える人
インフルエンサーたちが活躍する場が写真共有のSNSサービス インスタグラム。
自身のアカウントを使ってネット上に無料で簡単に画像を投稿することができる。
内容を常に見ている人
いわゆるファンの人たちをフォロワーと呼ぶ。
フォロワー数が多い人ほど影響力が高いということになる。
フォロワーの人数が100万人以上というのは「トップインフルエンサー」と呼ばれ
これはひとにぎりの芸能人や著名人だが
「マイクロインフルエンサー」はフォロワー数が数千~数万人くらいという一般の人たちで
このマイクロインフルエンサーこそがこれまでの広告を変えると注目されている。
都内で開かれた化粧品メーカーのPRイベント。
新作リップを見に来たのは大学生やOLなど20代が中心。
ほとんどがフォロワー1万人前後のマイクロインフルエンサーである。
(フォロワー 7,800人)
「いろいろな人に楽しいのを伝えられればいいかな。」
(フォロワー 8,200人)
「フォロワーのみんなにも伝えられる。」
(フォロワー 1万5,000人)
「友だちに言ってる感覚。
友達に“これいいよ”みたいな感じで言ってる。」
彼女たちをイベントに呼んだ化粧品メーカーは
インフルエンサーにはテレビCM以上の効果が見込めると言う。
インフルエンサーが撮った写真を見るフォロワーは
ふだんからインフルエンサーのセンスに共感している人たちである。
テレビの視聴者などと比べると人数は少ないが
インフルエンサーからの発信は届きやすいという。
(ELGC ポピイ ブラウン事業部 コミュニケーションマネージャー 小山真紀さん)
「マイクロインフルエンサーたちをフォローしている人たちは
その人のライフスタイルや
インスタグラムの中の世界観にすごく共感してフォローしている。
共感されている
そこの中に私たちが入っていれば
そのユーザーとブランドとの共感もすごく生まれやすい。
それはやはりテレビCMではできない。」
どんな人がインフルエンサーをしているのか。
その1人
IT企業に勤める石田一帆さん(26)。
友人から勧められてインスタグラムを始めたのは4年前。
できるだけ多くの人に見てもらいたいと
おしゃれに写る撮り方を日々研究してきた。
自分のメイクを動画にしてアップ。
実用性が高くてセンスがいいと人気を集めるようになった。
今ではフォロワー数が6万4,000人を超えている。
自分の気に入った商品をインスタグラムに載せることで
企業から報酬をもらうこともあるという。
(マイクロインフルエンサー 石田一帆さん)
「私のフォロワー層ってけっこう女の子がほとんど。
中学 高校の方とか
お小遣いで頑張ってコスメを買う。
そういう方とかもファン層で多い。
実際に自分が本当に使ってみて
いいと思ったことを書くようにしている。」
企業の側ではインフルエンサーを確保しようという動きが強まっている。
東京渋谷にあるインフルエンサーを企業に紹介する事業を去年の2月にスタートした会社。
まずサイトを通じてフォロワー数1,000人以上のマイクロインフルエンサーを募集
登録してもらう。
企業は宣伝したいイベントや商品を示し
参加希望者を募る。
その中から最適だと思う人を選択。
この会社に利用料を支払う。
インフルエンサーは商品に関連する情報を投稿し
この会社から報酬がもらえる仕組みである。
報酬は1フォロワーにつき1~2円がベースで
1万人のフォロワーがいる場合1~2万円もらえる計算である。
これまでに2万人のマイクロインフルエンサーが登録していて
950を超える企業が利用。
9月の売り上げは去年に比べて12倍に伸びているという。
(リデルCEO 福田晃一さん)
「結果が出ている企業がたくさん今出てきていて
自社もやらなければという状態にある。
今いちばん盛り上がってきている。」
インフルエンサーへの関心が急速に高まるなかで
企業とインスタグラムをプロデュースする人も出てきている。
全国のホテルでスパなどの施設を運営している企業。
認知度を上げたいと企業のインスタグラムを強化することになり
マイクロインフルエンサーの春日咲さん(24)に任せることになった。
これまでスタイリッシュな写真で自分のインスタグラムのフォロワーを集めてきた春日さん。
企業の依頼であっても使うのはスマホ1つである。
(マイクロインフルエンサー 春日咲さん)
「一眼レフもいいと思うんですけど
スマホで見る率も高いので インスタって。
画面に出てくるのもスマホで撮ったサイズ感の方がイメージが出やすい。
それで私はiPhoneオンリーで撮っています。」
春日さんのプロデュースによってこの企業のインスタグラムの閲覧数は大幅に増えたと言う。
(ザ・デイ・スパ PRマネージャー 伊藤真咲さん)
「かなりフォロワーが増えたし
私たちのファンにンってくれそうなコメントもあったのですごく良い。
実際見たところ仕上がりも違うし
レイアウトも取り込んでやってくれているので
おまかせして正解だった。」
9月30日 経済フロントライン
9月
フランクフルトモーターショーを訪れた日本のビジネスマン。
大手自動車部品メーカー ケーヒン執行役員 島田育宜さんである。
食い入るような視線の先には充電器や電池。
電気自動車の部品を丹念に見て回っていた。
(ケーヒン執行役員 島田育宜さん)
「EVシフトは加速度的に感じています。
何かやらないと生きていけない。
2030年の時点で我々の会社
製品カタログがどうなっているのか
イメージしながら危機感を持ってやっています。」
この会社はホンダとの取引で業績を拡大。
生産拠点が海外を含め38か所。
従業員は2万2,000人にのぼる。
手掛けているのは主にエンジン部品。
精密な技術を売りに燃料の噴射装置などを生産してきた。
今年4月
島田さんはあるプロジェクトを任された。
電気自動車に搭載する新製品の開発と販路の開拓を始めたのである。
去年公表された金融機関のリポートによって
EV化が進むと受注が減るメーカーの1つと指摘されたことで
開発に拍車をかけたのである。
(ケーヒン社長 横田千年さん)
「やはり今までの100年間の仕事のやり方と全く変わる。
エンジン系の部品メーカーは早めに舵を切らないと間に合わない。」
長年培ってきた技術力を生かして開発してきた製品は
モーターに送る電力をち密に制御する装置である。
はたして自分たちの製品は通用するのか。
向かったのは中国上海
自動車部品メーカーの展示会である。
中国メーカーの担当者に島田さんは直接売り込めると考え
始めて出展した。
(ケーヒン担当者)
「この製品はいまは日本で生産していますが
いずれ中国で作ることも可能です。」
製品に強い関心を示したのは
新興自動車メーカーとのパイプを持つ中国企業の開発担当者。
製品をつぶさに見つめ説明を求めてきた。
ブースに招き入れ2時間にわたって技術力をアピール。
後日詳しい商談をしたいと持ちかけられた。
(中国部品メーカー担当者)
「今日は技術の面でより深く理解できました。
有力な取引先として検討しています。」
いま日本の部品メーカーの間では
EVシフトへの足がかりを築こうという動きが強まっている。
9月に東京で開かれた自動車部品の展示会。
ある経営者の講演にひときわ多くの人がつめかけた。
現れたのは中国の電気自動車メーカーBYDの幹部。
日本のメーカーに電気自動車の部品を作るよう促したのである。
(ビーワイディージャパン 劉学亮社長)
「自動車がすべて電気自動車に
ハイブリッドではありません。
電気自動車
これが1つの国が発展していく方向でもあるわけです。」
講演が終わると取引のきっかけを作ろうと名刺交換に長い列ができた。
(充電設備会社)
「ある程度は予想してましたが
これほど急に盛り上がるとは想定してませんでした。」
(変速機関連メーカー)
「本格的に動かないともう波に乗れない。
危機感しかないです。」
(ビーワイディージャパン 劉学亮社長)
「技術者 能力を持っている日本企業が
BYDの電気自動車だけじゃなくて
電気自動車の世界に多く参加していくことが
日本の産業を活性化させていく欠かせない一歩。
うちは日本のみならずすべてウェルカム。」
9月30日 経済フロントライン
世界最大の自動車市場 中国。
大気汚染対策としてEVシフトを加速させている。
いま最も人気を集めているメーカー。
(EV購入者)
「BYDの車はすばらしい。
迷うことなくこれを買いました。」
中国深圳市にある自動車メーカー BYDである。
従業員は22万人を超えている。
乗用車からバスまで豊富な車種をそろえ
電気自動車の販売台数は国内トップである。
敷地内で目を引く建物の“充電タワー”は
400台の電気自動車が1度に充電できる。
自治体などから要請があれば
BYDはどこにでも出向いてこのタワーを建てることが可能だという。
BYDは1995年に創業。
もともとは携帯電話の電池を作る社員20人のベンチャー企業だった。
わずか20年の間に中国最大のEVメーカーに躍進した背景には
中国政府による強力な後押しがあった。
その1つが公共交通機関に電気自動車を投入し
国内メーカーに生産を担わせることだった。
BYDは地元深圳市でバスの生産のほとんどを請け負い実績を積んだ。
タクシーの生産も担うようになり
知名度は大きく向上した。
さらに中国政府は電気自動車を作るメーカーに補助金を支給。
BYDは設備投資を進め電池の性能を高めた。
去年発売した電気自動車は1回の充電で走れる距離を400キロにまで伸ばしている。
(BYD 李雲飛 副総経理)
「すでに電池の技術だけでなく
電子制御を含む電気自動車を作る主要な技術を全て持っていて
全面的に設計しています。」
中国政府はこうした産業育成政策を進めることで
2025年までに国内メーカーの販売台数を大幅に増やし
いずれ日本やドイツをも超える自動車強国になることを目指している。
国の目標を定めた責任者の1人
清華大学自動車産業技術戦略研究員 趙福全院長。
構造がシンプルな電気自動車なら競争に勝つことは十分可能だと考えている。
(BYD 趙福全さん)
「従来の車では中国は日本やアメリカ ドイツなどとはまだ差があります。
しかし新エネルギー車の分野では他の国と並んでいます。
自動車産業を強くしたい。
政府と企業の決心はとても大きいのです。」
いまや乗用車市場で世界3位のEVメーカーに成長したBYD。
中国市場だけでなく世界にも目を向け始めた。
いま取り組んでいるのはブランド力の強化である。
ドイツのアウディやベンツからデザイナーや技術者を引き抜いている。
(ブランドデザイナー)
「この会社は成功すると思います。
非常に革新的なビジネスをしているからです。」
(BYD 趙福全さん)
「10年で10倍に成長した前途洋々たる中国の自動車市場柄の参入に
私たちは間に合いました。
さらに積極的に海外へ
これからも努力をしみません。」
9月30日 経済フロントライン
9月にドイツで開かれた世界最大級のモーターショー。
展示の主役は電気自動車。
各メーカーは鮮明に“EVシフト”を打ち出した。
ダイムラーは5年後までにメルセデスベンツで10車種
フォルクスワーゲンは2025年までに50車種の投入を目指すと宣言した。
(フォルクスワーゲン ディースCEO)
「我々は電気自動車を大きなマーケットととらえ
新たなスタンダードにします。」
メーカーが電気自動車に力を入れる理由は
ヨーロッパ各国が進める環境重視の政策にある。
EVシフトがいち早く進むノルウェー。
電気自動車であることを示す“E”から始まる特別なナンバーの車が並んでいる。
(EV所有者)
「とても気に入っています。
音も静かだし走りもいいです。」
ノルウェーは温暖化による海面上昇の危機感があり
2025年までにすべての自動車を電気自動車にする目標を掲げ
さまざまな優遇策を進めている。
まず購入する際には
通常100万円以上かかる税金と25%の消費税が免除される。
さらに高速道路は無料。
渋滞している時にはバスとトタクシーの専用レーンを走ることが許されている。
3年前にBMWが作る電気自動車に買い換えた女性。
当初は1回の充電で走れる距離に不安があったというが
充電スタンドが全国に1万か所以上整備されているため
遠くに出かけるときに心配はないと言う。
(購入した女性)
「電気自動車は未来の環境にもつながる車だと思っています。」
国主導の普及策の結果
今年は新車販売の2割近くを電気自動車が占めるまでになっている。
(BMW イアン・ロバートソン上級副社長)
「ノルウェーを見てください。
今後 各国政府が追従するでしょう。
EVシフトはますます加速するとみています。」
ヨーロッパの自動車メーカーがEVシフトを進めるのには1つ大きな理由がある。
(2015年9月 フォルクスワーゲン ウインターコルン前会長)
「今回の不正について心よりお詫び申し上げます。」
一昨年フォルクスワーゲンが排ガス規制を逃れるために不正を行っていたことが発覚。
主力のディーゼル車は売り上げを落とし
新たな戦略が必要となったのである。
(フォルクスワーゲングループ ウルリッヒ・アイヒホルン最高技術責任者)
「ディーゼル車のスキャンダルは当然ながら悪影響を及ぼしました。
EVシフトの計画を早めざるを得なくなったのです。」
すでに電気自動車の量産体制を整えたメーカーもある。
BMWである。
敷地内で目立つのは巨大な風車。
環境対策への取り組みをアピールするために作られた工場が量産の拠点になった。
BMWはこの工場の生産効率を大幅に改善。
電気で走る車の生産を強化し
今年は10万台を市場に送り出す計画である。
(BMW 広報担当者)
「我々は他社と比べて経験も豊富で大きく前に進んでいます。
他の工場でもEVの生産に取り組めるようにさらに投資をしていきます。」
EVシフトの加速で懸念されているのは
自動車産業を支えてきた部品メーカーへの影響である。
創業140年のドイツの部品メーカー。
エンジンの部品が主力製品だったが
去年その売り上げが落ちた。
ガソリン車やディーゼル車で必要とされていたエンジンまわりの部品の多くは下請けのメーカーが作っている。
それがモーターで動く電気自動車では不要になるため影響が避けられない。
このメーカーでは60億円をかけてバッテリーを接続する部品を開発。
新たな取引先を開拓できたが
生き残りにはさらなる開発が必要だと考えている。
(部品メーカー エルリングクリンカー シュテファン・ヴォルフCEO)
「50年後も会社が成功しているように
どういう戦略をとるか。
部品メーカーの多くはまだこの変化に備えられていないでしょう。」
環境対策
さらにディーゼルでの不正問題を背景に進むヨーロッパのEVシフト。
産業構造そのものを大きく変えようとしている。
9月23日 経済フロントライン
ラストワンマイル=最後の1マイル
商品を物流センターから客へ届ける配送の最後の区間を意味している。
秋葉原にある家電量販店。
ヨドバシカメラでは売り場と連動したネット通販を開設。
専用のアプリを使って商品のバーコードを読み取れば
通販サイトから購入でき家に届けてもらえる。
(ヨドバシカメラ マルチメディアAkiba マネージャー 勝田泰幸さん)
「インターネットであるとか店舗であるとか意識することなく
買い物を楽しんでもらいたい。」
家電製品以外にも書籍や日用品に野菜など530万点の商品を扱い
全国に配送している。
去年
川崎区に巨大な物流センターを建設。
最新のシステムを導入しコスト削減とスピードアップを進めてきた。
物流を強化してきたこの会社が特に力を入れているのがラストワンマイル。
客に商品を届ける際のリアルな接点でのサービス強化である。
そのため東京23区内では
手で持てる荷物の配送は運送会社ではなく社員自身が行っている。
(配送担当)
「売り場のときはパソコン関係の商品を売っていた。
3年くらい。」
「テレビ オーディオ売り場を担当していた。
10年以上。」
自社で配送することによって配達にかかる時間を短縮。
さらに利用者には到着予定時間を分単位でメールで通知する。
入社5年目の配送担当 川崎将広さん。
白物家電やカメラコーナーで売り場の経験を積んできた。
(配送担当 川崎将広さん)
「家電が好きで冷蔵庫が特に好きだった。
冷蔵庫を販売したいと思って家電業界に入って
楽しい毎日を送っていた。
配送は思っていたよりもハードワークだというのが素直な感想。」
客へのあいさつやお礼
荷物は両手で渡すことなどを徹底するなど
接客に力を入れている。
(客)
「対応はすごくいい。
荷物を大事に扱ってくれる感じがしていいと思う。」
この会社では
将来
社員の持つ専門知識を生かして商品の説明や修理の受付などを行うことを計画している。
(配送担当 川崎将広さん)
「とにかく元気よく明るく
気持ちよく受け取ってもらうことだけ胸に持ってやっている。
冷蔵庫も配送したい。
将来的には。
それが夢。」
(ヨドバシカメラ 副社長 藤澤和則さん)
「荷物を届けるのではなく
客が注文した商品を届ける。
これが一番大事なポイント。
できるだけ多くのエリアに客にこのサービスを届けられるように
エリアを拡大していきたい。」
9月23日 経済フロントライン
東京銀座の裏通りにあるビルの3階。
この店で売られているのは1枚8千円のTシャツや4万5千円のカーディガン。
高級な素材を使った品質の良さが売りですべて日本製である。
独特なのはその売り方である。
売場にレジはなく
顧客は端末を使ってこの店のサイトから購入。
商品は後日宅配便で自宅に届けられる。
こうした店を全国で4店舗展開するファクトリエ社長の山田敏夫さん。
山田さんの会社はかつて店舗を持たずネット販売を専門としてきた。
ホームページには作り手の顔を載せるなど工夫を重ねてきた。
しかし山田さんは
ネットだけでは製品の良さが十分に伝わっていないのではないかと考え
この店をオープンした。
(ファクトリエ社長 山田敏夫さん)
「何が素晴らしいのか伝え続ける場が必要だと思っていて
店舗は試着室であり
熱狂的なファンを作っていく場。」
店を訪れた人の間で評判が高まり
売り上げは大幅に増加。
今では購入する人の3割近くが店舗を経由しているという。
(常連客)
「ホームページが素敵だったので興味をもって
こちらの店舗に来た。
自分で見て触って買うのを決めたい。」
顧客との接点があるリアルな店舗を持つことには別の狙いもある。
(客)
「私が持っているのはしわになりやすかったから
電車に乗るときは脱いで座る。
しわになっちゃうから。
しわにならないならうれしいな。」
客の好みやニーズを具体的に聞き取ることができ
商品開発に生かすことができるのである。
こうしたニーズは社長の山田さんが自ら契約している工場をたびたび訪れ伝えている。
たとえばトレンチコート。
以前は肩に飾りがついていたが
最新作は客の声をもとに飾りを外した。
(縫製工場 社長)
「客の声は
ショルダーバッグをかけたときちょうど当たったりして違和感がある。」
さらには“もっと軽くしてほしい”という声に応え
裏地を外して軽量化して発売。
売り上げはすでに以前のコートの2,6倍に伸びている。
(ファクトリエ社長 山田敏夫さん)
「リアル店舗の強みという意味で
心と心でつながって感じてもらいやすいことが一番の強みなのではないかと思う。」
ネットに進出したものの
最近になってリアルな店舗での売り方を強化している企業もある。
フランスの高級調理器具メーカー ル・クルーゼである。
日本に進出して26年。
デパートやショッピングモールなどに出店してきたが
先行きには危機感を持っている。
(ル・クルーゼ ジャポン 社長 モニカ・ピントさん)
「あなたが最後にデパートに買い物に行ったのはいつ?
今ではデパートに行く必要はありません。
夜ベッドでネット通販で買えばいいのです。」
8年前には独自のネット通販サイトを起ち上げた。
自慢の鍋が映えるレシピの掲載など
客の取り込みを図ってきた。
さらにアマゾンや楽天といったサイトにも出店。
ところが
ちょっと良い鍋が欲しいと考えて
“高級 鍋 ブランド”と検索すると
先に出てくるのは競合他社の商品である。
この会社の商品は遅れて登場。
しかも鍋ではなく鍋敷き。
多くの製品の中で埋もれてしまう難しさを感じていた。
(ル・クルーゼ ジャポン 社長 モニカ・ピントさん)
「ネット通販の場合は自分たちのサイトを見てもらわなければなりません。
サイトがあれば成功するというわけではないのです。
サイトを見てもらえなければ悲惨なことになるんです。」
どうすればネットでも商品の価値をアピールできるのか。
新たに打ち出したのが
デパートなどよりも目立つところにリアルな店舗を出す戦略だった。
今年4月
東京六本木の人通りの多い場所にこれまでで最も規模の大きな店舗をオープン。
さらに創業以来の歴史がわかる展示もした。
この会社ではリアルな店舗でブランドをアピールすることで
ネットでも関心を持ってもらえるようにしたいと考えている。
(ル・クルーゼ ジャポン 社長 モニカ・ピントさん)
「店舗がそこにあることで足を止めて商品を見てもらうことができるんです。
お客さんにより多くの機会を作っているんです。」
9月2日 経済フロントライン
通常の青果店の数倍の1か月に約450万円を売り上げる店がある。
こだわるのは野菜の味。
産地がいくつもある中で今が一番食べごろだというものを並べ
店員はていねいに説明してくれる。
(客)
「週に2~3回は来ますね。」
「おいしい野菜を食べたいと思うときはこちらを利用します。」
野菜はすべて店員が味見し
場合によっては店に置かないことがある。
こうした青果店を10店舗運営しているベンチャー企業。
店先でチェックした野菜の味の評価はここに集められ生産者に送られる。
以前入荷したものとは味が少し変わっていたスイカ。
収穫のタイミングや運送の仕方などに問題はなかったのか生産者と話し合う。
(アグリゲート バイヤー 松根拓乃さん)
「収穫の前後で雨が降ったりすると急激に味が落ちるとか
傷みやすくなるとかよくあること。
どこを改善すればより良くなるかという話を日々やっている。」
代表取締役の左近克憲さんは福岡の出身である。
東京と福岡の野菜に大きな違いを感じた左近さんは
味の違いにこだわる青果店を始めればニーズがあるはずだと考えた。
そのねらいは的中。
売れなかった野菜も弁当の具材にして利用し売り上げを伸ばしている。
(アグリゲート 代表取締役 左近克憲さん)
「おいしい野菜や果物を食べたいニーズは都市ではものすごく高まっていると思う。
本当に野菜の味がしっかりしておいしいものを届け続けられるか
それを解決していけば商機だと思う。」
売り上げが前年同期比で4割増えたという精肉店もある。
カフェ風のスタイリッシュな内装だが和牛専門の店である。
店員はまず客の好みや作る料理を聞き出し
どの肉がいいか
40種類ほどの部位の中から提案する。
もともと外資系の証券マンだったオーナーの上野望さん。
ワインや野菜のソムリエのように
繊細な味を伝える人がいれば新たなニーズをつかめるはずだと考えた。
(TOKYO COWBOY オーナー 上野望さん)
「スーパーで陳列されている肉を見て
一般の人は目利きは出来ない。
和牛をきちんとした形で消費者にわかる仕組みで販売できれば
まだまだビジネスチャンスはある。」
肉の新しい販売方法を考え出した。
常連のお客さんがこの日利用したのは
“ミートキープ”と呼ばれるサービス。
客がブロック肉をまとめて購入。
食べる分だけをカットし
残りは店が温度や湿度を正確に管理できる冷蔵庫で保管してくれる。
真空パックで保管すれば約1か月キープが可能である。
時間の経過とともに食感や香りなど肉の微妙な変化を楽しめるという。
(常連客)
「味がわかってるじゃないですか。
1度食べた肉だから。
自分の都合で自分の肉を食べられるというのが
自分の家の冷蔵庫みたいにここを遣えるからいい。」
野菜の味に徹底的にこだわる青果店。
客の好みにとことん合わせる精肉店。
外からの視点が新たな消費者のニーズをつかみ始めている。
9月2日 経済フロントライン
香川県を中心に20店舗を展開するスーパー。
打ちっぱなしのコンクリートの売り場に色とりどりの魚が並ぶ。
発泡スチロールのケースはそのままにまるで魚市場のようである。
プロの料理人も続々と買い付けにやって来る。
魚目当てに集まった客が野菜や肉など他の商品も買っていく。
売り上げはここ10年で3倍以上に増えた。
社長の木村宏雄さん。
成功の秘訣は売り場の担当者に大きな権限を与えていることだと言う。
(新鮮市場きむら 社長 木村宏雄さん)
「もう好きなように買って
好きなように売価をつけてくれ。
それが良かったのかな。」
4月からこの売り場をまかされている鮮魚部門チームの安富圭一さん(32)。
朝3時に安富さんは自ら魚市場に仕入れに行く。
そこには同じスーパーのトラックがズラリ。
各店舗から担当者が仕入れに集まってくるのである。
通常スーパーの魚は
競りに参加した仲卸から仕入れの責任者が一括して購入し
お店に振り分けるのが一般的だという。
一方安富さんのスーパーでは各店舗の担当者がそれぞれ競りに参加。
仕入れを行う。
この朝安富さんが買い付けた魚は約50種類。
なかでも目玉商品にしたいと考えたのがさんま。
売値を決めるのも安富さん。
店によって値段や品揃えも変わってくる。
「きょうはさんま6ケースぐらいいきますね。
1匹売値で198円で売ろうかなと。
売上高の1日の目標は80万から100万円ぐらい。」
各店舗の魚の売上高は担当者の間で共有され
評価にもつながる。
競い合うことでモチベーションが上がり
魚を目利きする力も鍛えられると言う。
(鮮魚部門チーフ 安富圭一さん)
「どこよりも新鮮なものを先に手に入れて売るというところだけは絶対に負けない。」
(新鮮市場きむら 社長 木村宏雄さん)
「このやり方はたぶん大手さんはまねが出来ない。
鮮魚に関してはどこのスーパーとあたっても負けない。」
安売りはしない方針で売り上げを伸ばしているスーパーもある。
栃木県内で展開するスーパー。
無農薬で育てた野菜が安心・安全を売りにしている。
たとえばナス。
無農薬で肥料も使わずに栽培した。
1袋200円と少し割高だがすぐ売り切れる人気商品である。
(客)
「ここに来ると良いものがあって安心。
安心素材なのかな。」
「やっぱりものが安心して買えるから来る。」
実はこの店は以前は品数を増やし安さを売りにする戦略を取ってきた。
しかし近くの強豪相手に客を取られ赤字が続く。
(三舛屋 会長 沓掛健一さん)
「本当に厳しいときには前年比1割2割というレベルで落ちた。」
改善のきっかけとなってのはある経営者との出会いだった。
自らもスーパーを経営し客の心をつかむノウハウを教えている
福島屋会長の福島徹さん。
“安さではなく客にとっての価値は何かをしっかり考えて欲しい”と伝えてきた。
(福島屋会長 福島徹さん)
「その商品がお客にとってどういう風に役立つんだろうか。
自分たちでちゃんと考えよう。
そんな企業風土を少しずつつけていこう。」
この店では福島産の教えをもとに
安全・安心を大切にしたい店づくりを目指すことにした。
品揃えを変えるとともに
地域の農家との提携。
田んぼ1枚分の米をすべて買い取る契約をし
農薬や肥料を使わずに栽培してもらっている。
(三舛屋 開帳 沓掛健一さん)
「これ美味しいんですよとお伝えして
売り場でおすすめできるようになった。
本当に自信をもってというのが一番変わったところ。」
8月26日 経済フロントライン
クラウドファンディングをマーケティングに活用し
開発された製品がある。
ソニーが開発したスマートウォッチ。
バンド部分にスマートフォンの着信通知や電子マネーの機能を入れ
ヒット商品となった。
この製品は入社間もない若手社員がチームのリーダーとなって開発を進めた。
(ソニー 新規事業創出部 Wena事業室 統括課長)
「腕時計として長年培ってきた完成された価値と
スマートウォッチの便利さと両方兼ね備えた商品を作りたいと思って。」
会社ではこうした製品が実際に市場で受け入れられるのかを確認するために
自社でクラウドファンディングの仕組みを作り活用している。
社員の提案の中から有望なものをクラウドファンディングに掲載。
目標金額が集まればニーズがあると判断し製品化に乗り出す。
一方で目標を達成しなければ製品化は行わない。
これにより製品開発を効率よく進めていこうというのである。
スマートウォッチは目標の10倍もの金額を集め開発が決まった。
(ソニー 新規事業創出部 Wena事業室 統括課長)
「クラウドファンディングをやると
お金を払った人のデータを得ることができる。
それがないとこういう商品を事業化するのはなかなか難しい。」
クラウドファンディングを通じてマーケティングを行うことで
これまで5つの製品の開発に成功した。
(ソニー 新規事業創出部 First Fiight プロジェクトマネージャー)
「お客様が欲しいと言っているような商品を常に作りたいと思っているので
実際に共感してくれたお客様の声を大事にして
次の商品を開発していきたい。」
クラウドファンディングには大きな宣伝効果があるとして活用する動きも出ている。
8月に福井市内のキャンプ場を福井銀行とクラウドファンディングの運営会社の担当者が訪れた。
キャンプ場を運営する地元企業は温泉施設を作りたいと考えている。
そこで銀行がクラウドファンディングを運営する会社を紹介し
資金調達を促そうというのである。
(福井銀行 大野支店長 角井康夫さん)
「海岸に近いので雪の量が少ないので冬も使えるのが1つの強み。」
本来は融資をするはずの銀行がなぜクラウドファンディングを勧めるのか。
実はネットを通じて投資を募れば全国にこのキャンプ場の魅力を発信でき
銀行が融資しただけでは得られない集客が見込めるという。
(クラウドファンディング運営会社 READYFOR マネージャー 田島沙也加さん)
「みんなの力で作った所だというような場所になれば
長く続いて皆さんが愛してくれる場所になるので
クラウドファンディング成功させましょう。」
(福井銀行 大野支店長 角井康夫さん)
「福井県の中小企業の方は非常にいいコンセプトを持っていても
それをどう宣伝していくか
苦手な企業が多いのではないか。
全国からお金を集められる
加えて全国に宣伝も一緒にできることが魅力というか大事なところ。」
これまでにこの銀行がクラウドファンディングを紹介した企業は14社。
事業が拡大すれば銀行からも融資をしていきたいと考えている。
(福井銀行 ちゃえる戦略チーム チームリーダー 宮越啓さん)
「1つの成功が必ず次につながっていくでので
今度は大規模な資金調達とかプロジェクトに変質していくことになる。
そこは銀行の役割だと思っているので。」
(クラウドファンディング運営会社 READYFOR CEO 樋浦直樹さん)
「今年に入って加速していて40を超える金融機関と提携しています。
今も話をしているところが2桁ぐらいあるので
これからも増えていく形になる。」
8月26日 経済フロントライン
8月
クラウドファンディングの運営会社がイベントを開催した。
この1年でもっともお金を集め表彰されたのは“折り畳める電動バイク”。
受賞したのは和歌山のベンチャー企業。
1,100人余から1億2500万円超を調達した。
開発した“折り畳める電動バイク”は持ち運びが可能である。
見た目は自転車のようだがモーターで走る。
バッテリーが切れたときはペダルをこいで自転車のように乗ることもできる。
この会社の従業員は30人。
自動車やバイクなどの部品を製造しインターネットで販売している。
社長の鳴海禎造さん(36)。
2年前から開発を始めたが量産化には大きな課題があった。
部品の購入資金や工場に生産を委託する資金を調達するのが難しかったのである。
(ファイントレーディングジャパン社長 鳴海禎造さん)
「アクセル全開にできない踏み切れない。
いろんな議論をテーブルに上げてやっていた中で
クラウドファンディングが一番量産に近いことができる。」
サイトに掲載された電動バイク。
出資者は製品化されればいち早く手に入れることができる。
その結果わずか3時間で目標金額の300万円が集まった。
都内に住む樋口健夫さん。
学生のころからバイクや自転車が大好きだった樋口さん。
サイトで見つけすぐに出資を決めたという。
(電動バイクに出資した樋口健夫さん)
「一発で決めました。
自分で乗る気で一番高いやつにしました。」
樋口さんは12万7500円を出資。
製品を手に入れる権利を得た。
(樋口健夫さん)
「このバイクと青春18きっぷがあれば最高の旅行ができる。」
この電動バイクは現時点で目標の40倍以上1億2500万円が集まっている。
1,000台が生産される予定である。
(ファイントレーディングジャパン社長 鳴海禎造さん)
「クラウドファンディングがなければ
ここまで多くの人に知ってもらえることや話題にしてもらうことはなかった。
出資してくれた多くの人がいて
そういう人たちに後押ししてもらった。」
クラウドファンディングの会社が開催したイベント。
ベンチャー企業の経営者など500人以上が集まり
開発に成功した製品や資金調達中のプロジェクトが披露された。
ビールの原料 ホップを詰めたティーバッグはすでに90万円を集めている。
「これをグラスに中に入れて発泡酒やビールを入れると
クラフトビールに近づく商品。」
極薄ながらも丈夫な名刺入れは220万円以上を集め製品化が決まっている。
(サイバーエージェント・クラウドファンディング社長 中山亮太郎さん)
「僕らもどのくらい大きくなるか読み切れないほど大きな仕組みになる。
クラウドファンディングと言われないくらい当たり前のインフラになっていく。」
8月5日 経済フロントライン
駄菓子の定番「ベビースターラーメン」。
発売開始から58年になるロングセラー商品である。
製造しているのは三重県津市にある社員380人の会社。
チキン味のオリジナル商品以外にも次々と種類を増やすことで売り上げを伸ばしてきた。
カルボナーラ味
宇治抹茶ロールケーキ味など
さまざまな味。
丸く固めたものなど
これまで開発した商品は約4,000種類にのぼる。
(おやつカンパニー 開発本部 開発課 安澤元博さん)
「やはりお菓子なので楽しいとか遊べるとか
そういった意味でも商品の展開を広げていった。」
この会社が多くの種類を出すようになったのは約30年前のこと。
販売の中心はかつての駄菓子屋からコンビニへと変わっていた。
競争の激しいコンビニで定番の商品にいかにして注目してもらうか。
そこで考えたのが定番商品のすぐ横に話題性のある新商品を出すことだった。
飽きられないようにと
今では1か月に1回のハイペースで入れ替えている。
新商品に注目が集まることで定番の売れ行きも好調だという。
この戦略を実現させるために開発担当者は1つでも多くのアイデアを求められてきた。
10月の発売に向けていま開発を進めているのは
“甘辛しょうゆだれチキン味”の商品である。
(おやつカンパニー 開発本部 開発課 安澤元博さん)
「スーパーやコンビニに行ったときに客の会話をちょっと聞いたりして
“こういう商品あったらいいよね”とか
“お父さんに買っていこうね”とか
そういった会話がヒントになったりする。」
そして試食会の日。
「あと少し甘味を調整してもらえればいいかな。」
ブランドを守るために短いサイクルで新商品を投入する。
開発者たちの努力が続く。
(おやつカンパニー 開発・マーケティング本部 本部長 稲垣庄平さん)
「バリエーション化については走りながら考える。
今の時流
流れというのを考えながらリアルタイムにやっていかないと
タイムリーに商品が市場に出ていくということができない。」
1つのポイントに徹底的にこだわることでロングセラー商品になっているものもある。
16年連続で売り上げを伸ばし続けている「チョコモナカジャンボ」である。
こだわってきたのはモナカの皮のパリパリ感である。
専門の研究員が毎日表面を削り取って測るのは皮の水分量である。
最適なパリパリ感が実現できているか厳しくチェックする。
パリパリ感を左右するのは裏側に塗られたチョコレート。
チョコレートが幕となりアイスの水分が皮に伝わるのを防いでいる。
重要なのはチョコレートの粘り気。
粘り気が弱いとチョコレートの幕が薄くなりアイスの水分が伝わってしまう。
粘り気が強いとムラができやはり隙間から水分が伝わってしまう。
ベストの粘り気を模索する必要があるのである。
さらにこのメーカーではアイス業界で初めてというある概念を取り入れた。
鮮度である。
日にちが経つと皮が水分を吸収するため
製造から原則5日以内で出荷するよう決めたのである。
さらに店が在庫を抱えることでパリパリ感が失われないようにと
営業では過剰な納品はしないと定めている。
(森永製菓 マーケティング本部 冷菓マーケティング部 山田美希さん)
「ブランドの一番の価値は何かをとらえて進化させていく。
お客様は気づいていないけどどんどん良くなっているというのがポイント。」
8月5日 経済フロントライン
昭和43年に誕生した「カール」は
独特のキャラクター“カールおじさん”とともに愛されてきた。
明治の菓子部門の責任者 井田覚さん。
軽い食感をイメージした「カール」という名前。
形もカールさせようとしたが当初は難しかったという。
(明治 菓子商品開発部長 井田覚さん)
「カールというコンセプトなのに曲がらない。
それをどうやって曲げるのかということでまた現場でわいわいやった。
曲げる方法が出来たときに初めてカールが出来た。
大変苦労したという話は聞いたことがある。」
苦労の末に生み出された「カール」。
発売当初からヒット商品となった。
ピーク時には190億円を売り上げ
工場はフル稼働した。
これだけの人気を集めた「カール」がなぜ売れなくなったのか。
2000年代に入りポテトチップスなどのライバルが増えるなかで売り上げが落ちる。
また粉が手や歯につくのが嫌だと若い人から敬遠され始める。
さらにもうひとつ大きな理由があった。
売れる商品を優先して販売するコンビニ。
一度売り上げが落ちるとなかなか置いてもらえないようになったのである。
(客)
「コンビニとかで買うことが多かったので
そこで見かけなくなると買わない。」
原料をトウモロコシから米に変えた商品を販売するなど種類を増やしたが
売り上げは回復しなかった。
昨年度の売り上げはピーク時の3分の1に落ち込み
生産が縮小されることになった。
菓子部門の責任者の井田さんは
「カール」の味には自信があったが時代の流れについて行けなかったと考えている。
(明治 菓子商品開発部長 井田覚さん)
「今までだったら“おいしいね”でよかったものが
おやつというものが質的に変わってきたリ
親が子どもに健康的なものを与えるようになるとか
どんどん変化してきている。
時代とともに価値が低下していってしまった。」
「カール」のように味に自信があっても思うように売れない時代。
メーカーは新たな取り組みを始めた。
カカオ豆の産地にこだわり香りの豊かさを売りにしたチョコレート。
定番商品の2倍の価格だが
1年足らずで3,000万枚を売り上げる大ヒット商品となっている。
(客)
「何度か買っている。」
実はこのチョコレート
3年前に発売した当初は期待したほど売り上げが伸びなかった。
味には自信があったがなかなか手に取ってもらえなかったのである。
そこでこのメーカーではターゲットとなる若い女性にどうしたら関心を持ってもらえるか考えた。
ヒアリングを重ね
去年の9月に商品のデザインを一新する。
カカオのイメージを中央に置いただけのシンプルな構図。
スマートフォンで写真を撮りたくなるようなおしゃれさを出した。
チョコレートの味も大事にしたいと形状に工夫を加えた。
1枚の中に様々な形や模様をつくり
異なる香りや食感を味わえるようにしたという。
味以外の要素でひきつけて
最終的には味で勝負!
この作戦がヒットにつながったのである。
(明治 菓子商品開発部長 井田覚さん)
「新しい価値を提供しようとすると
まず理解してもらうことが難しい。
どういう風にして共感を得ていくかということはすごく難しい。
それを粘り強くやれるかどうかがポイントかなと思う。」
7月29日 経済フロントライン
大阪中央卸売市場。
朝8時に一番乗りで仕事場にやってきた武藤北斗さん。
武藤さんは天然のエビをムキエビやエビフライに加工・販売する会社の工場長である。
この日は9時に3人のパート従業員が出勤してきた。
しかしあと何人来るのか武藤さんにはまったく分からないという。
(パパニューギニア海産 武藤北斗さん)
「今日なんか少ないと思ったら
昨日今日と学校の終業式みたいで
それで休んでいる人が多いみたい。
たぶん今日は増えなんじゃないかな。
と言いながら分からない。
僕らの予想は当たらない。」
じつはこれは「フリースケジュール」と呼んでいる働き方。
パートの従業員は15人いるが
いつ働くか
何時間働くかは
すべて従業員が決めている。
どんな仕事をするかは出勤した人数に合わせて武藤さんが支持する。
人数が少ないこの日は手間のかからないムキエビの加工をすることにした。
冷凍して出荷するために手間のかかるものは人数が多いときに作って保存し
取引先の注文に柔軟に対応している。
武藤さんは以前は宮城県石巻市で同じ仕事をしていたが
東日本大震災で被災。
大阪に拠点を移した。
しかし採用した従業員が短期間で辞めることが多く
悩んでいたときに思い付いたのが「フリースケジュール」だった。
従業員を定着させるため
“働き方は会社ではなく本人が決める”と発想を転換したのである。
「工場としては成り立たないよと多くの人に言われました。
僕の中では会社の都合よりも大切なのはみんなが自主性を出す働き方。
働きやすい会社になることが一番重要だと。」
変えたのは働く時間だけではない。
「うちでは“好き嫌い表”と言っている。
好きなものを優先してやっていって
嫌いなことはやらないルール作りをしている。」
パン粉つけや掃除など約30種類ある作業について好きか嫌いか聞き取り
好きな仕事で力を発揮してもらおうというのである。
全員が嫌いという仕事は公平に分担する。
(従業員)
「嫌いな作業をやらなくていい分
他の仕事を一生懸命やりたいと思う。」
その結果辞める人が減り
従業員のスキル
さらにチームワークも向上。
生産性が上がり
売り上げが5%増えた月もあった。
(パプアニューギニア海産 武藤北斗さん)
「自分たちが心地良く働くためにはどうしたらいいか
考えるのを続ける。
大切というかやっていくべきかなと思う。」