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ロンドンから徒然に

スペイン芸術の生々しさ

2010-01-12 | アート
 このポスターを地下鉄の駅で見た時にはちょっと驚きました。クロスした両手には荒縄が巻かれ、幾筋も血の跡が生々しくあります。最初は奴隷制度か何かを扱う博物館の企画かと思ったんです。
 ところがよく見ると SPANISH PAINTING & SCULPTURE 1600-1700と書いてあります。ということはこれは人間の写真ではなく彫刻?



 ナショナル・ギャラリーのSainsbury Wingで行われている“THE SACRED MADE REAL”という展覧会は、スペインの黄金時代と呼ばれる17世紀の宗教画及び彫刻を集めています。
 ベラスケスやスルバランといった巨匠の作品を含めた絵画も印象深かったですが、ショッキングだったのは数々の彫刻です。

 何しろリアル!
 ガラスで巧妙に作られた眼や涙、象牙の歯などを持つ等身大の彫刻が、繊細な筋肉の様子まで見事に彫り込まれ、それにまた素晴らしい彩色が施されているのです。

 ここで面白い事実。当時は彫刻の担当と彩色の担当がギルドによって分かれていたため、同一人物が最後まで作品を仕上げるのは許されていなかったのです。それで作者を見ても(無名の人たちを含む)複数の人物が記載されています。考えてみたら、昔は“アート”というより、技術屋だったんでしょうね。

 同じ宗教関連でも、日本の仏像を見て感じる心の平穏さとは全く違って、心を熱く騒がせる感覚です。さすがスペイン!

TAX

2010-01-11 | 日常
 しまった。すっかりさぼってた。
 1月末日がTax Return(納税申告)の〆切りなんですよ。さっきから数字ばかり追ってたら、何だかブログ書くようなモードじゃなくなってしまいました。今日はこちらもさぼります。すみません。

ベジタリアン

2010-01-10 | 日常
 “早いもので”という言葉をなるべく使わないで済むようにしようとは思っているんです。それにしてももう1月も上旬を過ぎようとすると、今年もこんな調子で慌ただしく過ぎるんじゃないかと、ちょっと焦ってしまいます。
 やっぱりきちんと目標を立てて、こつこつやるに越したことはないんでしょうね。

 昨日イギリス人の友人に会ったのですが、彼が“一大決心”をしたと言います。何だろう?
 すると今年からビーガンVeganになると言うのです。

 実は“菜食主義者”にも色んな段階があります。
 肉はダメだけれど魚はOKのフィッシュ・ベジタリアンや、乳製品や卵は許せるベジタリアン(通常はこちらですね)に対して、ビーガンは言わば“絶対菜食主義者”で、そういうものを一切取りません。また革靴や革のベルトなども身に付けない人が多いようです。

 ベジタリアンになる人にも色んな動機があるようで、痩せたいという単純な理由の人、動物が可愛そうだからという人、肉は身体に悪いからという人、体質的に受け付けない人、etc.
 でも近頃様相が違うのは、環境問題を考えてという人が増えていることです。

 家畜を育てるための穀物の消費量や、その栽培のための耕地開拓、また家畜の排出する二酸化炭素等、人間が肉を食べることをやめればこれらの環境問題に貢献するというわけです。
 そう言えば、ポール・マッカートニーの提唱するミート・フリー・マンデーMeat Free Monday(週に一度、月曜日は肉を食べない日にしよう)も同様の趣旨だったと思います。



 僕?健康も主義も思想も意識していないんですが、単に好みの問題で野菜と魚が中心の食生活ですねぇ。
 でもレストランで食事することになって、美味しいワインが飲みたくなると肉料理を注文してしまうことが多いかな。この誘惑に勝てそうにはなく、申し訳ないですが、やっぱりベジタリアンになるのは無理みたいです。それに僕自身はバランス良く食べるのが一番良いような気がするのですが。

神様が見ている

2010-01-09 | 日常
 大分事情は変わってきていますが、日本と違って、大抵の鉄道の駅は切符がなくてもホームまで入れます。(地下鉄は違いますよ)
 出る時も改札を通すわけではないので、極端な話、無賃乗車はたやすいんじゃないかなと思うことがあります。けっこういい加減な性格だと思うこちらの人が(失礼)それでもきちんと切符を買うのが不思議と言えば不思議でした。

 ある時、これはもしかして宗教が関連しているのかなと思い当たりました。“神様が見ている”これはけっこう大きな抑止力なので、それに反することはできないのかな、と。
 しかしそれにしては、もっと罪深いことをやっている人は多いしなぁ(笑)



 ともかく、“神様”という高みにある同じ価値観を共有できるということは、同じ民族の結びつきを助けるだろうし、自分のアイデンティティの尺度として大きな目安にもなりそうな気がします。

 そう考えると、日本人が共通に持つことのできる価値観って何なんだろう?
 日本人の宗教は何?と訊かれてとりあえず仏教と答えても、自分のことを敬虔な仏教徒と思っている人はおそらくごく少数でしょう。
 宗教は置いといても、“他人の目”という、自分の行動に対しての促進や抑制になっていた社会の力も小さくなってきているみたいだし。

 そんな中で皆一様に“個性”という言葉を振りかざして、ちょっと違う勝手な方向に突き進んでしまうのかな?“自分探し”なんていう理由のもとに現状を放棄してしまうのかな?

 あ、こんなことで悩む前に片付けてしまわなければならない仕事が溜まっているのですが、ちょっと現実逃避してしまいそうになりました(笑)

子供たちの最初の言葉

2010-01-08 | 日常
 このところTVのニュースではずっと雪の被害が取り上げられています。BBCでは特別番組が組まれるほどです。どのくらい寒いかというと、スコットランドの北部ではこれまでの記録を塗り替えるマイナス20度という予想も出ています。
 幸いロンドン市内では昨晩の雪もすぐに止んで、それほど大変ではありませんが。



 そんなニュースの映像の中でも、子供たち(と犬)は楽しそうにはしゃいでいます。彼らにとってはどんなシチュエーションもすぐに遊び場になりますもんね。
 そんな子供達に関するちょっと気になった他のニュースが。

 統計によれば、赤ちゃんが最初に言葉らしい言葉を発するのは大体生後10ヶ月から11ヶ月らしいのですが、この度の調査で一部(数字にして4パーセント)の子供が3歳になるまで一言も喋ることができないとの結果が報告されていました。

 親がTVの前に子供を置きっぱなしという家庭が例に挙げられていましたが、子供はやはり親による言葉の働きかけによって、相互に“会話”を交わすことが必要なようです。
 また、おしゃぶりは夜寝る間だけにとどめて、昼間は“音”を発し、“言葉”を形成することができるようにした方が良いとの指摘がありました。

 ちなみに最初に発する言葉で一番多かったのがDadda。続いてMamaとのことです。変わったところではbeerなんてのもありましたが、これはお父さんのせい?

 このニュースを聞いていて思ったのは英会話の習得に通じるなということ。やっぱり会話ができる相手があってコミュニケーションをはかりながら上達していくんでしょうね。
 先月日本に2週間近く帰っていてロンドンに戻ってきた時、電話に出た僕の会話は悲惨でした(笑)

ZERO

2010-01-07 | 音楽
 やっぱり雪になりました。
 今朝某所で1件仕事が入っていたのですがキャンセルになりました。その相手が風邪をひいたからなんです。それというのも、冬休みの滞在先から一昨日帰る予定が、雪のために飛行場で12時間(!)も待たされて到着が昨日になり、どうやらその時の寒さがこたえたみたいです。
 


 考えてみたら先月もスガさんのロンドン・ライヴの直前まですごく寒い日が続き、彼の帰国後(これは僕も一緒だったのですが)またロンドンは寒さがぶり返していたと聞きました。
 そう考えると、“雨男”(あ、この話題はタブーだ)どころか、彼の滞在中は良い天気だったと言えます。特にライヴの終わった翌日、スガさんがCoventryまで撮影のため往復5時間以上かけて行った日なんかは快晴でした。
 その撮影を編集した映像が日本で今日(6日)流されました。日テレ系のニュース番組ZEROの中での話です。

 素の映像はその日の夜の食事の時に見せてもらったのですが、その後どう編集されたかは知りませんでした。そこで日本の友人達に連絡して見てもらい、後で感想を聞こうとメールを彼らに送りました。映像はいずれ関係者から入手できるとは思うのですが、少しでも早く様子を知りたかったのです。
 そのうちふと名案が浮かびました。そうだ、Skypeを利用してパソコンから流してもらえばいい。結果は大成功!リアルタイムで僕も番組を見ることができました。

 今や懐かしい感じさえするICAの外観やライヴの様子に続いて、Coventry行きの車に乗り込むスガさんの映像が流れ、そして教室に入ると生徒の大歓声。
 TVをご覧になっていない方は何のことを言っているのやらでしょうが、実はこの地の語学学校で日本語の教材に長年彼の歌詞が採用されており、そのため生徒に彼のファンが多いのです。そこに勤務する先生のリクエストに応え、スガさんがロンドン公演の折にここを訪ねることが実現したというわけなんです。

 それにしても、こんなに日本から離れた地でライヴより前に既に自分の作品を受け入れてくれていた場所があったなんて感激でしょう。スガさんが、自分が長年やってきたことが間違いじゃなかった、とライヴの後から常々言っているのはこの経験にも裏付けられているんだと思います。
 ひとつひとつの行動の積み重ねが日英交流の架け橋になるとTVキャスターの方が言っていたのも、今回のライヴの企画の趣旨とも合っていて、僕も嬉しく感じました。

 さて、今年JAPAN-UK circuitの第2弾を是非ともまた実現させたいものです。すぐにでも企画に入らなきゃ!

寒いっ!

2010-01-06 | 日常
 このところ寒い日が続いています。
 寝室に暖房を入れると空気が乾燥し過ぎて鼻や喉が痛くなるので、以前買った加湿器を取り出してみたところ、音がすごくうるさくてこれじゃ眠れそうにありません。仕方なく暖房を切って寝たら、朝方あまりの寒さに目が覚めてしまいました。

 しばらく頑張ってみたものの、やっぱり眠れそうになく、諦めて起きることにしました。冷え切って動かない身体を温めるために朝風呂。これは気持ちよかった。
 そして窓から外を見ると綺麗な朝焼けです。こんな時“早起きは三文の徳”という格言が浮かんできます。



 昔から朝焼けの時は天気が悪くなる(夕焼けは逆に良くなる)という説があるのですが、これから雨が降るとなるとおそらく雪に変わるでしょう。明日は日中でも零下の気温のようです。
 ロンドンはまだしも、郊外は既にひどい状況になっていて、封鎖された道路もあるみたいです。地域によっては40cmの積雪も予想されていて、さて明日はどうなることやら。

 それにしても、暖冬言われながら、しっかりと寒い冬ですよね。
 いつまでも決定的な温暖化対策を出せない人類に対して、何だか自然が抵抗してみせているような気もします。

移動遊園地の撤去

2010-01-05 | 日常
 “風物詩”という言葉は例えば花火に似合うような気がします。日本にいるとこれは夏の風物詩ということになると思いますが、こちらでは逆に冬です。
 冬に花火が多いのは、ガイ・フォークス・ナイト(あるいはボンファイアー・ナイト)みたいな歴史的事実に由来するのかもしれませんが、穿った見方をすれば、夜10時くらいまで明るい真夏と大違いで、夕方4時には真っ暗になってしまう冬には楽しみが少ないからじゃないかなんて思ってしまいます。

 ところで狭い範囲の話ですが、ことレスター・スクェアに関しては冬の風物詩は移動遊園地じゃないでしょうか。あのギンギラギンの派手なネオンの乗り物たちが公演の中心に居座ると、あぁ年末だなと感じます。
 昨晩(3日の夜)もここを通ったのですが、いつもの派手さが心なしか寂しい色に感じました。それというのもこの日が最終日だったんです。今日(4日)はもう撤去されてしまいました。



 クリスマスの飾り付けも取られ、いよいよ正月気分にお別れです。ということで、一足早く仕事にかかっていますが、日本でもこのブログを読んでもらう頃には大抵のところで仕事始めですよね。お互い頑張りましょう!

ナショナル・ギャラリーに再現された“飾り窓”

2010-01-04 | アート
 年明け前から随分と天気予報には脅かされていたので、外出の際は多めに着込んで出たせいか、それほど寒くも感じませんでした。幸い快晴が続いているロンドンの新年です。
 今日は久し振りにナショナル・ギャラリーに行ってきました。
 
 トラファルガー広場に着くと、クリスマス・ツリーはさすがに大分みすぼらしくなってきています。そろそろ取り払われるのでしょう。
 いつもと光景が少し違うなと思ったら噴水が出ていません。さすがにお正月はお休みなのかと思ってよくみたら、何と池が凍ってしまっています。やっぱり寒いんだな。



 さて、ナショナル・ギャラリー、昨年末からちょっと変わった展示を行っています。
 The Hoerengracht(直訳すれば“紳士達の運河”とでもなるのでしょうか?)と名付けられた展覧会なのですが、実はオランダの(悪)名高いRed Light District、つまり俗に言う“飾り窓”を再現しているのです。
 ハンブルグのレーパーバーンと並んで有名なこの合法的な売春地域、既に観光地化していて実際には物見遊山の観光客が多く、女性の姿もたくさん見かけたりします。
 
 しかしこの展覧会の人形達には顔に直接ガラスの枠が嵌められ、顔や部屋のあちこちにしたたり落ちる糊状の液体が見えます。それらが単純な好奇心をぴたりと遮断して、頭の回路を別の思考に切り替えさせます。
 Ed(彼はもう亡くなっています)とNancyのKlenholz夫妻が5年かけて作り上げたというこの芸術で問いかけたかったものは何なんでしょう?

ロンドンのモーツァルト

2010-01-03 | 音楽
 Sloan Square の駅の近くのPimlico Rdを東に進んでいくと、Ebury Stとぶつかる辺りに閑静な広場が現れます。この地域にはいかにも高そうなアンティークの店が並んでいて、またジャンルの異なる美味しいレストランも何軒かあります。そんなことから某俳優等セレブもよく見かけられるらしいのですが、確かにいかにもチェルシーという感じがします。



 そこに立っている銅像。モーツァルトです。でもよく見ると子供ですよね。それもそのはず、まだ8歳のモーツァルトだと思うのです。



 いやどうしてそう思うかというと、この近くにある建物に貼られたプラークを見ると、“Woulfgang Amadeus Mozart (1756-1791) composed his first symphony here in 1764”と書かれています。
 1756年に生まれて、最初の交響曲を書いたのが1764年ということは、つまり彼が8歳の時のこの地での出来事だということになります。この時のモーツァルトがこの銅像なんでしょう。
 家族と一緒に演奏旅行中のこんな小さな子供が交響曲を書くなんて、やはり天才ですよね。



 ただ、悲しいのはもうひとつの引き算。没年の1791年から1756を引くと35。若干35歳の若さでこの世を去ったわけです。その間にあれだけバラエティに富んだ素晴らしい曲を書いているのです。
 短い人生を嵐のように駆け抜けるのは天才の宿命なんでしょうか。